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第一幕 世知辛いです…

 王都城下町の武具店に一行の姿が見える。


 陽子の一声でこより達は気がついたのである、そう、私達装備無いよ…

「お嬢ちゃん達、流石に銅貨100枚じゃあ木剣1本が良いところだよ?」

 店主の言葉にうなだれる一行、形から入るこよりのおかげで既に金銭的には詰んでいるのである。


 そもそもこの世界の経済状況が分かっていなかったとはいえ手痛いミスである。

「…とりあえず、お金稼ぐしかないね、よりちゃん」

「そうですねー!店主さんが教えてくれた冒険者ギルドに行ってみましょう!」


 店主が世間知らずのお嬢様達なのだろうと思い懇切丁寧に教えてくれた所によると、銀貨100枚と言うのは素泊まりの宿で3日もすれば飛んでしまうそうだ。


 銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚、この世界の平民が月に金貨30枚の稼ぎで、日本に例えるなら金貨1枚が1万円と言った所であった。


「店主さんの話だと、薬草採取とか戦闘しなくても稼げるお仕事があるみたいだし、美鈴達でも出来るよね…?」


 城下町の中心部である商人区画から歩いて15分程の宿場通りに冒険者ギルドの建物はある、外門へもほど近く、往来の多い通りであった。


「ここですか、先生は私の後ろに、離れないでください」

 こよりがうなずくのを確認し、昴が扉を開いた。


 カランカラン…冒険者達が入り口に視線を向け、好色そうな視線に一行が身構えると、カウンターの受付嬢が怒鳴る。


「アンタ達!お客になんて顔してるの!さっさと仕事行きなさいよ!」

 どうやらこの女性職員に頭が上がらない様だ。


「いらっしゃい、護衛の依頼かしら?」

「いいえ、冒険者登録をしにきました」


 職員が怪訝な顔をする、それはそうだろう、女子だけのパーティーで全員が年若い、荒事ができるようには思えない。


「うーん、お嬢ちゃん達の出来そうな仕事はうちには無いよ」

「薬草採取とかの危険のない仕事があると聞いたのですが?」


 その言葉に職員は面倒臭そうに応える。

「あのねー…幾ら危険がないって言っても、自衛も出来ない小娘3人に仕事受けさせる訳には行かないのよ」

「はい!3人じゃないですよ?私もパーティーメンバーですよ!」


 職員の顔があからさまに困り顔になる。

「お嬢ちゃん幾つ?ママのお手伝いしたらお小遣いくらいくれるんじゃない?」

 優しく微笑みながら諭すように話しかける。

「むむー!いくら10歳でも私は教師ですよ!ちゃんとお仕事してるんです!」


 そうなのだ、この小さな勇者はまだ10歳、誰が見てもこの場に似つかわしくない、そもそもこんなにも可愛らしい子供が少女3人の護衛で歩き回ること自体が心配である。


 肩にかかる金糸のような髪、クリクリとした輝く碧眼、透き通るような真っ白な肌、鈴がなるような声。

 まさしく西洋人形の如き幼女である。


 それを見ていた粗野な感じの冒険者パーティーが嘲るように声を掛ける。

「まぁまぁ、お嬢ちゃんはともかく、そっちの姉ちゃん達は客が取れるだろうよ、手っ取り早く稼ぎたけりゃ俺達が一晩買ってやってもいいぜ?」

 そこかしこで下品な笑いが起こる。


 次の瞬間、男が空中で3回転半する。

「私の生徒になんてことを言うのですか!怒りますよ?!」

 言葉よりも早く既に怒っているこよりが男の頬に平手打ちしたのだ。

 そのあり得ざる光景に笑いが収まる、男はこの中でも屈強な大男であった。

「先生、とても嬉しいですが流石にやり過ぎです」


 倒れ伏した男はピクピクと痙攣している。

「あの…先生って事は、彼女たちに武術を教えてるの?」

 職員が恐る恐る訪ねた。

「?いいえ、私は保健の先生ですけど?」

…………嘘だ!!!

 その場のほぼ全員が叫んだ。


「あー…とりあえず、いくら素手でもアイツを一発でのせるなら薬草採取くらいなら頼めるわ…」


 職員、マルセラがこめかみをおさえながらそう告げる。

「とりあえずこの書類にあなた達の名前と、クラスを書いて」

「わかりました!ところで、漢字読めます?」

「?漢字?ってどの国の文字かしら?」


 マルセラがそう答えるとパーティーはひそひそと相談する。

「まずいですね、私達この世界の文字かけませんね」

 昴がそう言うと皆が一様に頷く、しかしそこはチート勇者である。

「勇者魔法!自動翻訳筆記!」

 スラスラとこよりが書いた文字が光を放ち自動的に世界標準文字に変わる。

「はいはい、スバルが東方の剣士、ヨウコが騎士見習い、ミスズが魔法使い…コヨリは…メシア?って何かしら?」

 やはりチートスペックなのであった。 

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