序幕 流石は私の生徒です!
程なくして、剣道部+教師の姿は王宮の一室にあった。
メイドさん!さすがファンタジー!アキバの似非メイドとはレヴェルが違う!
若干鼻息の荒い教師の視線は洗練された所作で給仕をするメイドの姿に釘付けであった。
「あのー…お聞き頂いてます?賢者様?」
そう言われて気が付くほど教師は自分を上には置いていない。
「先生、騎士団長殿が先生にお話です」
昴にそう呼ばれ、ようやく教師は賢者=自分と気が付いた。
「あ…私は賢者なんて立派な者では…一教師ですから!」
騎士団長は再度この後の予定を語る、それによるとこうである、しばらくの後王との謁見、その後は適正判別の為騎士団の訓練場へ行き、それが終われば諸侯との会食である。
「あのぅ…適正って、どうやって調べるんですか…?」
美鈴が恐る恐る質問する、彼女は他の部員たちと違い運動が苦手である、実技などで調べるのではないかと心配なのであろう。
騎士団長は微笑んで告げる、皆は預かり知らぬ事ではあるが彼には美鈴に雰囲気の似た孫娘がいた。
「心配いらんよ、魔力の篭められたスクロールを渡すだけだ」
ホッとした顔で礼を言う美鈴、それなら美鈴でもできるよね、そう言いながら紅茶に口をつける。
その単語を聞いた教師の頭の中では数種類の想像が浮かんだ、多分職業だけじゃなくてステータスも表示されるんだろうなぁ…ステータス表示は数値?それともアルファベット? 等である。
期待に胸踊らす教師と騎士団長、期待の方向性はかなり異なるが。
暫く紅茶や焼き菓子を楽しんだあと、王との謁見の準備が整ったと言われ客室を後にする。
謁見の間に着くと騎士団長が扉を開き、自身はその場でひざまずいて中へと促す。
ここはやはり勇者過ぎる少女、昴が代表だろうと教師は考えた。
「八雲さん、代表して王様へご挨拶を!」
何故私なの?と不思議そうな顔ではあったが先生の言う事なら、と進み出る。
「おお!話には聞いていたが美しい!そなたが自ら進んで戦うと名乗り出た者か?」
恭しく一礼し昴は応えた。
「はい、八雲昴と申します、魔王に悩まされるこの世界のため、微力ながら力の限り」
キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!mj勇者!この子が勇者に決まってる!
興奮が隠しきれていない教師はぷるぷると震えながら頭を垂れていた。
「…の…のぅ…その…一人何かぷるぷるしておるのだが…」
若干引き気味の国王であった。
無事?に謁見を終えた一行は再び騎士団長に連れられ訓練場へとやってきた。
20人程の騎士が整列し、一糸乱れぬ動きで礼をする、流石は王国最強の騎士達である。
騎士団長が手を上げ頭を上げさせる、副長!あれを!そう告げると、騎士の一人が進み出る、手には人数分のスクロールが握られている。
「では、一人づつこちらへ来てくれ!」
密かにワクワクしていた生徒たちはその言葉に、待ってました!と行儀よく一列に並ぶ。
「このスクロールを持ち、誓約の言葉を、名前と戦士の覚悟をここに、と」
何それカッコイイーーーーーーーーーー!!!
悶絶する教師であった。
一人目が進み出る。
「田中明美、戦士の覚悟をここに!」
一年生の明美がトップバッターであった、手にしたスクロールが淡い光を放つ。
【クラス 戦士 筋力C敏捷B頑強B魔力E幸運D】
おお…!騎士達から感嘆の声が漏れる。
明美がやや不満そうに尋ねる。
「あの、騎士の皆さんの平均値って?」
副長が答えた。
「我等でも高い能力でBがあれば良いほうだろう、ましてや戦士でありながら魔力があるだけでも破格の能力だ!」
団長がうなずき、自分のスクロールを見せる。
【クラス 騎士 筋力B敏捷C頑強C魔力-幸運C】
明美が目を見開く、それはそうだろう平均能力だけで言えば騎士の長よりも高いのだ。
それを見て他の部員達が色めき立つ、明美がこの能力なら私達だって!と。
「宍戸かな恵、戦士の覚悟をここに!」
【クラス 狂戦士 筋力A敏捷C頑強B魔力-幸運E】
「杉崎敦子、戦士の覚悟をここに!」
【クラス 魔法戦士 筋力B敏B捷頑C強魔力B幸運B】
「叶優里、戦士の覚悟をここに!」
【クラス 槍術師 筋力A敏捷C頑強A魔力D幸運C】
「八代美波、戦士の覚悟をここに!」
【クラス 騎兵 筋力C敏捷A頑強C魔力C幸運A】
最早騎士たちの顔が蒼白である。
「じゃ…じゃあ…美鈴も…」
「崎守美鈴、戦士の覚悟をここに…!」
【クラス 賢者 筋力C敏捷C頑強D魔力S幸運A】
「…ははは…S…あり得ん…ドラゴンと同等の魔力など…」
団長の目が死んでる…騎士達が何か諦めた顔である。
「じゃっ!あたし! 掛川陽子、戦士の覚悟をここに!!」
【クラス 聖騎士 筋力S敏捷A頑強S魔力B幸運A】
完全に余剰戦力である。