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第二幕 お魚さん天国です!

その様子を遠くから見ていたスバル達には、何が起こっているのか理解できなかった。

こよりが何事か怒鳴りつけると、両軍の動きがおかしくなった。

ある者は狂ったように叫びながら気を失い、またある者は頭を垂れながら一心不乱に祈りの言葉を叫ぶ。

おかしくなった者達の中で、一際おかしくなっていたのがバカ王ババフォンスである。

何も持たぬ両手を無茶苦茶に振り回していたかと思えば、何かに怯えるかのようにあらぬ場所に目を向け、また、暴れる、そんな事を繰り返したかと思えば、地面に大の字に寝転んで泣きながら気を失ったようだ。


「戻りましたよー!これで無血終戦です!」

いつも通りのあっけらかんとした顔でこよりが帰ってきた。

状況が把握できていない3人娘は顔を見合わせ、こよりに尋ねる。

「よりちゃん?あの人たちどうなってるの?特に何もされてないのに皆んな惚けてるみたいだけど?」

「あー、少しだけ怖い思いをしてもらったので、しばらくはあのままでしょうね、そのうち気がついて帰っていくでしょうし、まあ死んだ人もいないのでOKです。」


「成程、幻術ですか...それなら確かに死者が出なかったのも納得ですね、流石は先生です。」

戦場から程近い田舎町の酒場、その一角に金獅子の姿を見つけることができる。

現在、終戦から2時間後の昼時、戦争が終わったとは知らぬ町の人々は戦々恐々としながらも、日常生活を過ごしている。

「でも...確か、幻術ってあんなに広範囲に作用するものじゃ無かったような?」

ミスズが食事もそこそこに、ようそのヒ・ミ・ツ調べながら1人ごちる。

「?そうなの?ミスズはどの程度の範囲で使える?」

「うーん、半径10メートルくらい、かな?そもそも幻術であんな状態になるのがミスズには理解できないかな、あれって方向感覚をおかしくするとか、偽の音で騙す魔法だからね。」

「「え?」」

ミスズの言葉を聞いて、スバルとヨウコが間の抜けた声を上げる。

少なくとも戦場の範囲は半径5キロメートル、その時点でおかしいのだが、あの兵士たちを見るに、効果についてもミスズが伝えたものでは説明がつかない。

困惑する3人娘を尻目に、こよりはと言えば。


「女将さん!この魚、なんて言う魚なんですか?すごく美味しいですね!あと、このジュースのおかわりください!」

こんな具合である。

「あらあら!お嬢ちゃんは褒め上手だねぇ!その魚はね、近くの沼で取れるここらの名産で、ネコヒゲウオって言うのさ、おっと、おかわりだったね、ありがとうよ!そうだ、このジュースの材料も近くの森で取れるんだよ。」

「へー!もしかして、市場で手に入ったりします?」

「ああ、勿論売ってるよ、もしよかったらうちが仕入れに使ってる店を教えようか?」

と言うことで、午後は市場へ買い物に行く事になった。


「お?お嬢ちゃんが酒場の女将が言ってた子かい?よく来てくれたね!」

体格のいい中年の男が元気に出迎えてくれた。

「おじさん、早速なんですけど、ネコヒゲウオってありますか?出来ればたくさん欲しいんですけど。」

「ああ!そいつならいくらでもあるぜ!なんせ今日から戦争が始まるってんで大量に仕入れたってのに、兵隊さんは買いにこねぇし、正直捌き切れねぇぜ。」

「「「あー...」」」

3人娘が気まずい顔になるが、親父さんには何のことやら分からない。

「?そうか!すまないね、娘さん達を脅かすつもりは無かったんだが...なに、大丈夫だ、エルステンベルグの兵隊さんは滅多なことはしないから、安心しな!」

「あー、ソウデスヨネー、あはは...」

「おじさん、それならこの店にあるネコヒゲウオを全部ください!お金ならありますから!」

「おお、それはありがたいけどな、いくらなんでもお嬢ちゃんが全部は無理だろう、第一食う前に腐っちまうぞ?」

「問題ありません!私の冷凍庫なら!」

「レイトウコ?ってのは知らんが...取り敢えず金額だが、こんな感じになるぞ?」

いつもニコニコ現金払い、こよりのご機嫌が青天井であった。

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