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第1幕 先生ナメたらあかんぜよ!です!

「この間抜け共め!むざむざ使い潰せる戦力共を見逃しただと?!探せ!あの人数でましてやこの世界のことも知らぬ小娘だ!すぐに探せば連れもどせよう!」

王城を震わせるかと思わんばかりの大音声が響く、散歩に行くと言ったきり戻らぬ居残り組たちに業を煮やした王の怒声である。

「もももも、申し訳ございません!只今騎士兵士総出で辺りの村々を捜索させておりますれば、今しばらく!」

その様子を超小型遠見魔法、ボンド君で観ていたこよりが、やはりですか、と溜息をつく。

「おかしいとは思ったんですよねぇ、今までの村や町、流れの商人さんまでもが揃って魔王の話に一切触れないですし、それどころかほろ酔いの方からは、領地拡大しか頭にない戦争狂いの暗君とまで言われる始末ですし...」

うんうん!と頷くスバルたち勇者パーティー。

「でもさー、これからどうしようか?よりちゃんの下にいる限りあの王様(笑 も手出しはしないだろうけど。」

そうヨウコがこよりに訊ねると、当のこよりは事も無げに返した。

「それなんですけど、魔王さんの所に挨拶に行こうかと思います。」

流石に驚き、ポカンと口を開けるヨウコとミスズ、話に興味がないのか、ただ熱っぽい眼差しでこよりを見つめるスバル。

「あのー、よりちゃん?いくらなんでも、魔王に勇者が、挨拶に来ましたーはいこんにちはー!ってな訳にはいかないと思うんだけど?」

「いえ、案外そんな感じに近い事になりそうですね、この国だけではなくて、どの国の人からも自国の政府よりも魔王さんの治世の方が評判がいいですし、度々領民の人達との交流会を開催しているそうですから。」

「ええええええ!?なにその心温まる人?柄!?仮にも魔王なんだから、気に障っただけで配下の首を落とすくらいの残虐さを見せてよ!」

困惑顔のこよりである。

「それを私に言われましても...そもそもモンスターの被害は度々聞きますけど、魔王さんが配下にしている魔獣、魔人達からの人間への被害って全然聞きませんし、恐らく人格者かと。」

納得いかねー!と叫びながら部屋の壁を殴るヨウコをミスズが宥める、そしてあいも変わらずただただこよりを見つめるスバル。

外ではカフェ、木漏れ日亭の夜の営業が始まろうとしていた。

こよりはキッチンに軽く指示を出すとホームの天井の一画に手を伸ばし、えいっと声を上げる。

すると、その部分から床へ向かって階段が出来上がり、どう見ても一階よりも広い二階が出来上がった、この世界では魔法とは、想像を創造する奇跡として認識、研究されているのだが、こよりの魔法はそれらに携わる者には決して見せてはいけないものである。

二階は、キッチンの代わりに洗面台、一階の物よりも大きな浴場、こより達と同じサイドボード付きのベッドが人数分、トイレも個室が3つ用意された。

カフェの夜の部は、昼間訪れた客達から口々に評判が評判を呼び、並びの客まで出るほどの盛況ぶりである、赤ら顔のワインを片手に上機嫌な男は可愛い娘さんが沢山で料理も安い!旨い!何より速い!と太鼓腹を叩いている。

後は麦酒でもあればなー!などと言う言葉がこよりの耳に届くと、彼女は早速その席まで行き、一つのグラスを置いた。

「まだ試作品ですが、これを飲んでみてください、お代はいりませんから遠慮なく。」

「おお!お嬢ちゃんは偉いね、その歳でもうお店を手伝ってるのかい?オーナーさんに有り難くいただきますと伝えておくれ!」

「あー、お客さん、その人この店のオーナーで、尚且つAランク級冒険者ですよー」キッチンで慌ただしく仕事をしながら声を掛ける。

「なんだって!?それじゃ、あのモスマンクイーンをたったの4人で討伐した金獅子のコヨリさんかい?!いやぁ!今のこの街に金獅子の名前を知らない奴はいないよ!そのリーダー自らの奢りとあれば、さっきまで以上に有り難くいただきますよ!」

気の良さそうな口髭の大男がグラスに口を付ける。

その顔がみるみると嬉しそうにとけていく。

「なんだい?!こりゃ不思議な酒だなぁ!麦酒みたいな香りがして、でもフルーツみたいな爽やかさがあって、後に残る香りが素晴らしい!これで試作?馬鹿言っちゃいけないよ、こんな旨い酒、王様だって飲んだ事ないだろうさ!」

これはこよりが大好きだった祖母が呑んでいたエールビールを再現した、その試作1号である。

「そうですか?!美味しいですか?!やったよおばあちゃん!え?このお酒の名前ですか?うーん、今夜は土曜日ですし、土曜日の子猫、としておきましょうか。」

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