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第一幕 修行の山ごもり終了です!

モスマン退治最終日、この日は仲間に任せて食材確保に勤しんでいたこよりも戦闘に参加していた。

その原因が目の前のこの巨体である。

翼長?が5メートル程、羽ばたく度に撒き散らしている鱗粉にはモンスターを高揚させる成分でもあるのだろうか?付近を根城にしていたあらゆるモンスターが思い思いに暴れ狂っている。

「うーん…そうですねー、周りのモンスターはすべて私が引き受けるので、みんなはあの大きなモスマンに集中して下さい」

少しだけ面倒臭そうに眉を寄せながらこよりが仲間に伝える。

「えぇっ?よりちゃんの力を疑うわけじゃないけどいくらなんでもソレはヤバくない?」

「そうだよ…こより先生だけであの数の相手は…」

ヨウコとミスズが青褪めた表情で言うが。

「何を言ってるんです?先生が周りを引き受けてくださるなら、私達だけでも本丸は落とせると信頼してくれているのですよ」

スバルは至って当然の様に刀を構える。

「高々50少々の軍勢で先生の相手が務まる、とでも?」

「えへへ、スバルさんは状況判断が早いです、仲間の長所と短所がよく見えてますね、デザート1品追加です!」

真顔でフォンダンショコラを!と応えるスバル。

「良いですか?私達4人の共通の短所は、フィジカルの低さです、特に近接戦闘が主体のスバルさんとヨウコさんは物量作戦が弱点ですね?だからこそ余り体力を消耗せずに攻撃出来る私の銃で周りを処理しますから、本命はお願いしますね?」

言われて見ればなる程、と得心のいった二人もそれぞれに戦闘態勢を整える。

「さぁ、道が開いたら3人でモスマンに突貫して下さいね!」

言うが早いか、手にしたグレネードをモスマンとの直線上に放り投げるこより、一拍の後降り注ぐモンスターの肉片、若干引き気味の三人娘。

ものの数秒で進路上のモンスターを塵に変えると背中のバヨネットを構えるこより、そこかしこに散らばるモンスターの残骸を踏まない様に三人娘が走る。

何匹かのコボルトが三人娘に飛びかかろうとしては眉間を撃ち抜かれると、事ここに至って漸く見慣れない武器を構えた一番小さな人間が一番危険だと気付いたらしい。

「…うん、よりちゃんの心配とかわたしがナメてたわ…」

「百発百中って本当にあるんだね…こより先生凄いな…」

「先生…素敵…もうびしょ濡…」

「「いわせねーよ!?」」

何故か内股で身を捩りだしたスバルに何とも言えない表情でツッコむ二人。

そんなやり取りの間にモスマンの目の前にたどり着いた三人娘は戦闘を開始する。

「千の風よ!眼前に立ち塞がる敵を千千に斬り刻め!風塵結界(ウインドメイデン)!」

ミスズが短い詠唱で魔法を発動すると、モスマンの身体を鎌鼬が取り囲む。

羽根にダメージを受けたモスマンの濁った複眼がミスズを睨む。

「おおっと!ミスズにばかり注意してていいのかなー?わたし達を甘い相手だと思わないでよね!」

モスマンの視線を遮る様に大盾を構えたヨウコが突進する、女子とは言え大盾の重量と助走の乗った体当たりにモスマンが吹き飛ばされる。

堪らず空へと飛び上がろうとするモスマンだが、それよりも速くスバルの居合斬りがモスマンの左羽根を切断する。

地面に倒れ伏したモスマンは最期の抵抗とばかりに残った右羽根を羽ばたかせて鱗粉を散布するが、こよりお手製のマフラーに護られた三人娘には無意味である。

「敵将、討取ったり」

大上段からから竹割に振り降ろされた刀がモスマンを正中線を両断した。

「さてさて、よりちゃんの加勢に…って…もう終わってるし…」

三人娘が周りを見渡すとモンスターの中に息のあるものは無かった。

「お見事です!連携も取れていますし、個々の戦闘能力も申し分なしです!」

倒したモンスターの証を数日前に作ったリュックに吸い込みながらこよりが三人娘の前にやってきた。

「と、言いたいのですが…ヨウコさん?」

「???どしたの?よりちゃん」

「前から観察してましたけど、盾と剣の組み合わせ、しっくり来て無いですよね?」

「あれ?分かっちゃう?そうなんだよー、片方を使おうとするともう片方がお留守になっちゃうんだよね」

うーん…としばし考えた後、こよりが、

「取り敢えず下山しましょう、途中ホームでヨウコさんの装備を考えます」

手にしたスクロールを眺めながらそう言うと、金獅子一行は帰路に着くのであった。

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