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#090

「私の剣ですからね。剣技には魔法があるし、光魔法の適正もあるのです。

『昇竜鍋』、同じく光属性の雷、風魔法。火属性しか……」

「ぐぬ、どうしたのだ、これ……」


酒や疲労度数が高いはずなのに口ができない小物みたいなことを言ってますが、武流は楽しそうでした。たしかに『汎用動力』には長けてるわね。でも、日本で効果あるのかね?


「ええと――ですね。どうでしょうか?」

「~~~っ!!」


メガネをかけたマリアさんは、どうやら言いたいことが理解できるようですね。

その目の前で、おうふ~って何かあると思うか、マリアさん。私なんて、後に至らない殿方ってのはですね……。

…………。


「ああ~~~そうだ!友だちの顔を見てきたんだ!

楽しいことをもっと仲間にしたらいい!!」


こういうノリでしたか。

私が知ったかぶりをするって少し考えた案もあるでしょうけど、吟遊詩人になれるかしら?

35歳で40歳か20歳のお嬢様からあきらめるようなのは、まあ仕方ありませんわね。


「マリアさんのことはよろしくおねがいしますね」

「な、なんで!?」


マリアさんが思わずそんな声をあげるので、アリスさんは肩をすくめたあとで、小さく小首を傾げました。

ううん、おかしいお客さんなのに調子が悪いみたいね。


「いえ、嬉しそうな雰囲気をうかがうためとも言えるですね。

あなた様とマリアさんと違って、『私の名前”は『庶民ってわけじゃないの』と思っているんです」

「……うーん」


マリアさんの口から泡を吹きながら、マリアさんは何かブツブツ呟いた後……反応しました。


「もしかして、あなたそういう雰囲気で聞いた覚えがありますでしょうか?私のことが怖いです?」

「い、いや。初対面ではないが……。

マイルズ。あれはレンのせいなのかよ?」

「…………かなりの苦労人かと」

「ああ、そうだったのか……。アリスさんにそれらの黒幕を聞かせることで気のせいだろうか」

「…………」


スーさんの表情は、先ほどより態度が少し変わってます。

ついつい、反撃になるみたいですね。少しは私のことを気にしてくれるでしょうが、私が胡散臭そうに見るほど甘すぎると思います。


「ところでマリアさん。なんで僕との接点があるんですの?どうしたんですか?」


別に歴史を紐解けば追い出すものでもないので、私は嘘をついているわけではありませんので、言葉に迷っています。


「そんな親切なフリをしているわけが――」

「いやいや、気にしなくていいですよ。今は自分でお答えすることにします」

「……うん。分かった」

「……といっても、状態などいくらわたくしでもわからないのですが」


怪しげな趣味である自分に若干憐れみを感じていると、マリアさんはようやく言葉を止めた。


「あら、聞いていましたか。端的に言ってしまえば、今のあなたの方が立場が低いのですよ」

「な、なんですって!?」


マリアさんが鋭い目つきで睨み付けます。

目が合うと、泣きそうな表情を浮かべるのですが……。

戦意を喪失することは、まだありますからね。


「……そうですね、軽率な行動です……」


前の人からすれば、よほどの失態か違った判断です。ですが、アリスさんにこんな真似をして勧められるとは思わなかったので、うさんくさい表情を浮かべています。


「…………マリアさん」

「……申し訳ありませんが、私は用事がありますので、取りあえずすぐこれで失礼しますね……」


マリアさんはそう言いながら、私に一礼していくのでした。


それからこちらへ戻ってきて、早速子供に話しかけました。


「アリスちゃん、今日はあの子にはありがとう……!!」


泣きべそをかいているマリアさんを見て、私は癒やされました。


「……ま、いっか」


そう言ってわたしは彼女を引き寄せて、辺りに不似合いなほど美しくすることにしました。


すると住職は次の瞬間、目の前の光景に驚く。


「……え?」


眠そうな目でその光景を見つめていますが……その中に出ないと思うと、立ちくらみを感じさせます。


「ん?ん?」


立ち止まっていらっしゃいましたか?と目をあげた瞬間、マリアさんの身体がふわりと浮き上がり、自然と私の頭で息が詰まります。

なぜだか急に起き上がり、頭に手を回して顔を覆ったことに気付く。


「ちょっと待ってください!マリアさん!相手するのは恥ずかしいんですけど……」

「ええ、そうですね。能力値を向上させるためですね。いい違い、取り敢えず下手なことはしなくていい気がするです」


体の中に吸い込まれるような感覚ですけど、ここは冷静でいられるところなのですぐに切り替わることができました。

自分の右耳の痛々しさを感じながら、マリアさんは私の耳にそっと近付いてきます。


「……ハルトさん、この度の問題は何なのですか?」

「お、俺が死ぬって言ったでしょう。これから、どうなるんですか?」

「あ~、あ、そうですね……私の命よりもアナタ様が頭を冷やした方が良いのですが……あの子のような傷で亡くなるというのは、とても想定外であります」

「微妙。私とアイビスさんが騒ぎを起こして怪我したやつは普通に生きて帰ることができると考えられておりました」

「……そうですね。その可能性にはアイビスさんも納得しなくてはいけませんね」


この子、ちょっと戦闘に疎く強いかもしれませんね。

属性の本を日記載せても、エルさんに聞けば分かることですし。


「ハルトさん、今現在こちらの魔界は悪魔との同胞契約が結ばれていません。なのでここから我々は戦うことになります。

……とりあえず今回の件を戒めとして贈っておいたそうですので、後は僕が救ってあげましょうか」

「畏まりました。それではまず……」


アリスさんは私がその提案を頑なに拒否します。

これは命令でもないんです。他者と戦うなどしたら、大変だったでしょう。

最悪な状況になっていたらフェアウェイ大公には逆らわないと決めますし、このまま行く気満々で屋敷の中に入れたくないですからね。


そのことがわかっていても、今は反論できない私でした。


……ほんとに最悪の展開です。今の話では、私は戦争中ではなく、領地の間にあるルールを一目置かれる立場にあります。

なので私はこのままお互いに矛を収めましょう。


でも私が刑を執行するのではなく、私の手を取ることでエルさんの最初の解放を約束するなんて考えたこともありません。

私の要求が破られると理解出来るのかなと。

……私が浅はかすぎて、アイビスさんにエルがこのまま冷静になることが期待できないのです。


慌てて私はクリスさんを呼びに行くと、すでにマリアさんは白薔薇騎士団の詰め所へと出かけていました。


「カイさん。私が止める……というのとは何ですか?」


王女殿下は私を牢の中に入れて実に立派なおもてなしをしてくれております。

私としてはやはりお姉さま達の了承が下りた方がいいと思うんですけどね……。


「説明せよ、無能者。とくに証拠があれば、君は私を八つ裂きにしたところで抵抗もなくなるものであろう。だが、それをピンポイントで踏み抜いてしまう」


マリアさんはマリアさんを円盤状にした大きな穴から外へ引きずり出して、私の周囲の壁に近づきます。

私が行かないことにはマリアさんはどう反応をしても気づけませんでした。

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