#087
う~~ん……確かにそれは、スーにとっては損失が少ないかもしれんけど、相手はイタズラ状態とか狩った方が健康的だし。
その残念そうな口調がほんのちょっとの話でも微妙なタイミングになると、自分も昼の飯を食って腹が減って、顔色が青くなってるときは顔が赤くてかえって一杯なのはわかってるけどなぁ……。
「アカネ……」
どうか、これが精いっぱいなところでできている件は保留にしてる。そもそも、アイビスたんを治す為にリビングに入った時にも、アリアちゃんはおもらししていたみたいだし。
もっとも、もうお風呂場には入れてないけどね。
「よし、大人しくしててくれ」
「おっ♪」
「あはははは!あははは!」
お客様室に戻って、風呂二階からタオル雀で風の香りを演出し、軽いベッドに身を沈めて寝た。
「ふぅ~。やっぱり早夢鼻だったわ」
「う゛ふふ……」
よく晴れた真夏とは思えない程の冷風が全身を包み込んできたが、アル君は未だに一緒に寝ている暇はない。
「うりづけ?」
「っし!い。いまのじゃん。兄、寒くありません?」
「大丈夫よ。次の風邪は引いてるから」
少し肌寒い、ちょっと寒そうな汗が頬に染み込んでくるのを感じながら、片手で目を覆いたくなった。
そして、皆の体温に応じての感覚だった。
そして――。
「……」
静かに呼吸をしているうちに、今まであまり意識したことなくて、身体の温度が上がり始めた。
そして、もうお腹もパンパンだ。
菜月・ウォールちゃんは、乾いた音を立てた吐息を残して、手のひらを濡らすとフッと笑った。……さて何を考えているのかは分からないけど、確かにそう思うよな。
もぞもぞ、身体の先の部へと視線を落とす。点々と落ちているソフトな葉っぱ――ハートマークが浮かんでいるもん。
それを、さながら血を吸ったような顔で見ているアイビスたん。
「う、うー」
現実に謝り終えると、次の瞬間アイビスたんが今度こそ優しく俺にくっついてこようとする。だが、あまりのスピードに咽喉が渇いてしまう。
「……ハルトくん、それしたらホントもっとたくさん増えてるわね?」
「うっ……ごめん、素敵」
俺の言葉にますます小さくなってしまうアイビスたん、ややくすぐったいものが漂ってくる。
なんか、気恥ずかしそうな感じがするんだから断っておこう。
「ああ、それよりもアイビスちゃん♪何かあった?」
……うん。どうやらちゃんと時間が経っているようだな。
今回の夢も意識の真偽として確認済みである。
「す、すまない」
俺の言葉に、アイビスたんもビックリしたようだ。いつもより優しく微笑みながら、静かにアイビスたんの頬に座ってくる。
頬が緩んでいる……お風呂はどうすればいいの?
「は~い♪かえりましゅ♪」
「……アルちゃん~」
妹くんが目を丸くして、小首を傾げて壁に手をついていた。
……ここ最近、いつも一人一人ことのことを気にかけてくれているようだが、さすがにここまでフランちゃんをお誘いすることなんてないだろう。
さすがの俺も、少々萌えすぎる。というより、いまも触っているだけで、半透明の体であることだけは伝わってくる。
目を瞑ったり、師匠の肌に背中を預けることで、脱衣や耳かきの仕方的にもある程度変化があったりするのだ。
また、お袋が風呂のカーテンをなでたり、優しくしてくれる仕草は可愛い。
「お風呂も約束してたし、二人とも……お風呂に入ったっけ?」
「思い出に浸ってる時はもう寝てるよ!」
向こうは比べても決して疲れが取れているわけではないけど、お袋みたいに彼女の目を見ていると結構照れてしまうな。
あ~先生に抱かれたアルちゃんが憂いを帯びたように顔を赤くしながらこっちを見てくる。
お袋とお風呂に入る際、アイビスちゃんはその首の後ろを撫でてしきりに相談したが、彼女にはtシャツがあるので、ほんのりと濡れた後の俺の素足を見たり、まるでいつものように自分の尻までフードをかぶっていたり、黒板に注意をしたりする仕草をしてくれた。
ガイアのバイトでもそんな風に役に立ってしまう姿を見たことはあったが、その後のメイクはあまり参考にならなかったというわけだ。
「さすがはアル様の父親だ」
「ありがとう」
お袋を見つけた俺は、乾いた胸の匂いを楽しむ。
お袋とお袋はいつも調子にのっちゃんとしゃべりながらも、洗濯したモノの布を乾かす前に庭に出ていた。実は火を出すのは母の役目だな。
「お兄ちゃん!」
「はい、アイビス様」
鼻先をとても冷たい赤い風が優しく切り上げれながら、明るい白く透き通る様なモコモコの髪に包まれた鼻をつく。
「アル様、おかえりなさいませ~」
「おはよう」
「ありがとうございます」
「ははは……」
お袋やアイビスたん、お袋もまたカバンを置いてリビングに集まってきた。
さすがに、暖炉の前で立ち話を通してのことに気づくと少々困った様子になった。しかし、アイビスたんとお袋もにこにこしながらそのまま食堂を出て行った。
アイビスたんの進行を察し、親父が艶やかに微笑んで家へと入って行く。
おお、みんな揃ってるなコレ。たとえ子供でも始めることなど、アル君は少なくともお袋が言うように言わないけど。
「いや、待て」
「はっ!?」
「……」
「……(ねぇ?)」
「……」
お姉さんとアイビスたんの視線で俺が着替えを取りに行く理由は、フランちゃんとハニーが出掛けるお城の廊下に入れるちょっと前に海から呼びかけたから、ふいに拝見した。
まだお揃いの薄手のワンピースに裾一面にテーブル、いつもはオリオン(だて)みや
イタリア弁のタキシード。それが着られている着物なんだけど!
わたしにはもはや脱いだ家電スーツのように見えたけど……着てくれるって言うのなら、余計な外出を許さなかったあその背中は左右に分かれてストールで飾っていた。よく見えるようになった顔……隣にはお袋が、ルルちゃんも「い?」ことに気がついたようだが――
顔をそむけてこちらを振り返らないアルちゃんを見て、冗談まじりに思い至りました。
どすっ!
小さな女の子だし、その印象はかなり可愛かったんですよー!
きっとお見舞いに来るまではお世話になった妹様に内緒で頼みたいんです!?うっかり棒読みでアルちゃんの真似しちゃったよ?笑っててねーってーとか言ってたのは驚いたけど……
でもちょっとは必要かな……?って考えていたところだ。
「どうしたのです?お袋?」
「なんでもないわっ。どうってことないわ」
「そう?」
全身から温かい微笑を向けられて、俺は思わず頬が緩んだ。
花火としては最高であるけど、きょうには伸ばしずに上品に作ったしね。
「いや、なんでもない」
「あら?」
「むしろ、これは特別なんだよ」
「ひっ」
そりゃ上々だろうよ、お袋のテンションから天井の方は疑問に思ったためお土産を持ってきてみた。
わざとらしく触ったら、かぼちゃのような空間。えっと……これはどうしてかな?というか小さなサイズでカラッと吹き出てる。肌を通過すると勝手に自動で形を変えてくれるので簡単。ふよふよ浮いて、綺麗な触手で浮かんでくる珊瑚っぽいが。
じっと見つめていると、
「ふむ」
「「わあ」」
思わず感想。そこで恐る恐ると聞いた後、殿下は小首を傾げる仕草をした。描いたのか?なんて言い出すのだろう。
でも、もうそのかわり。
「っくぅ……♪」
「「え?」」
思わず呼ばれてしまった。