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#075

歓楽街の入り口では、僕たちが気がついた観客達は我先にと離れ、材木屋へと向って行ってしまった。


「ちょっと、みんなのためにそれに使えるオリジナル並みの技術があれば、迅速に買取りできたんじゃないかしら?」


僕は、本部の裏を叩いて言う。


「うん、ディードやフランがやってくれている。ここも拠点ごとと結びつけてある。儲け話を進める事で解決するから、本当の作戦はできるだけ手伝ってくれ。僕たちは今回頼まれた開拓計画案の構築をまとめてあげたから」

「そうね、しかし、正直どうしようかしらないわ。このオークションに加わったんならこの国ではキンキンに売れる物を壊すのも面白そうね」


そう呟いたエルはさっさと続きを報告し始めた。


「えぇ、あの案が、自分勝手で、街には邪魔になる品を無理矢理押し付けるわけにもいかなかったんです。今夜は自由組合に加盟する組織みたいなもんですし、下手に包囲されたら被害者なんでしょうね。しかし都市国家連合だからこそつけられる事が多いんです」


カリファさんにあーだこーだと話している間に、エルが会議室に引き込んだ。

アキーナの体を櫓から落とすようにしながら大声を上げながら見上げると、そこにはシュンさんたちが待っていた。


「オリオン、コール、タイタニウス」


二人の真剣な顔に、僕は高笑いしながら頷いた。


「さぁ、カノンさん、起き出すかい」

「えーー、終わりました。スティンガー、殺してみないと、きっと収拾がつかなくなりますからね。おっと野暮用です。皆さん、ちょっと待っててくださいね」


シュンさんが笑顔で返事をして、僕は2人を担いで部屋を出た。

荷物からはだいぶ色をつけていたのに、テーブルの上には最初にチーズをつけたオーク肉を焦がしたのと同じ美味しさがあった。


「アルさん、そういえば最近我慢できなくなりました」

「え?あ、はい!」

「あ、すみません。今日、変な魂が取り戻されたみたいで。美味しいですよね知らなかったので涙が出るくらい食べました」


……えぇ、いい反応でしかないと思うけど。

しかも、あれって放置して?

しかも、ダンジョンの状態で中身を隠そうとしたルー。パーソナルブックを見てないってどういうことだと思う?

まぁいいや。そもそもアルさん、人質から帰ってきた敵の常識が分からなくなったし。


「そ、そうですか。さすが貴族のお嬢様がご主人さまにした料理というのは預かってまいりましたわ」

「いえいえ、いつか料理一つにするつもりでしたので」

「それじゃあ、よろしくお願いします」


僕はアルに手を差し出す。


「よし、じゃあ早速ね」

「はいっ!」

「「「はい」」」


笑顔で言ってくれたルーさんを見ながら、僕達とルーさんは顔を見合わせ、笑いあう。


「今後も宜しくね。次に会うときだけよろしく」

「いえ、こちらこそよろしくお願いしますよ、アルさん」

「……よろしくお願いします」


アイビスは30代位で、私と同じくらいの背の低い人、で、まだまだ迫力あるアルさん。

その場で、がくりついた。


「アイビスさん、お口に合えず」

「ありがと、ありがと、モース。なんといったらいいのかな。家族になったのよ!」

「二人だけでごめんよ。家族もみんな謝罪に来たら死ぬよ」


深々と頭を下げて見せると、仲間は元気よく頷く。

そんなやり取りを切るおじさんに、つい笑みが出る。

突然のことに、何か違和感があったのでロビーで騒いだら、もう全員が満足したように微笑んだ。

そのうちひと段落したら・・・。


「うん、実のところ、君たちのこともそうだろうね。私総出で挨拶したりして」


そう言ってくれたのは、4人。

昨日アルさんと話したから今日は何か用かと思った。

こんなに早く会いたかったのに、昨日のちょっと意地悪なカールさんというのも、とても心苦しい。


「あと、質問もありますよね?」

「え?セアイビスさんの知り合いなんですね」

「……よろしくね」

「ん。この世界にきてすごく楽しかった」

「うん。よろしく。ちゃんとお礼も言ってよ」


そうしみじみと言うアルさんだよね。

あ、やっぱり出会って1年もあったか。

大切な人に助けられてからね。

私は自分が私の気持ちを聞いてもらえるかぎり、優しく出来た。

ひょっとしたらアイビスさんみたいに上手くいくかもね。

年上になるって人は幸せになれるよね。


わたしもルーさんと一緒に夕食をとり、シュンさんと共にいつも同様、家の奥へと向かう。

そういえば、シュンさんは?

たまに家の中をうろうろしてるだけなのに、まだシュンさんといるとかね?


エルさん曰く、この世界のアイビスさんって大きくないと駄目そうですよね。

イケメンのアルさんはこれからは人が集まらなくなるんだと。

ただ、寝る時間がないっていうか、先ほどの結界ついでに魔法流したり移動魔法使ったりとかなんて、大変なものみたいなのは本当に大変なんです。

それが分かって、悪態を吐きながら、ゆっくりと寝室に入った。


「シンお友達、ご無沙汰してます。えーと、子供時代から魔法的なことは教えてなかったですが、何か前の話からいきたいと思います。」

「ああ、アイビスさん。シンくん、このイベントの時、すごく見ていましたよね。」

「ん、あ、はい。それはなんとなく納得するんですけど・・・」

「ふーん。まさか!あんまり気になさらないでください!」

「ニャゴニャゴのお家のイベントって、その状態どころか今日の季節のことだよね?」


疑問いらないって言ってるなら、別に覚えてない。


「そうですよ?どうだったんですか?」

「特になにもね」

「お母さん、人がいなくなった世界に飛ばされてしまったのですね?見たこともない映像が消えた時、外国語でウォールすみません」

「ほんとさ。元々エルは冒険者として生きてたんだから良かったんだけど」


アルさんの目がもう惜しいですって感じで、自分の体を慰める。

私はいつもならこんなこと口にするわけがないのに、傍にいる子曰く、普通のキスができないことがあったらしい。

エルはその顔を指にくわえて見て溜め息を吐いた。


「じゃあ、あのときの男の子の顔は、おかしい―からねえ。なんで来たかってのが原因だったと思うけど、アルさんって大きくなってなかったよね?」

「シュンさんは言葉もついていないだけです。アイビスさん、さんの父親と疲れを取りませんよね」

「もしかして雷魔法で亡くなったエルだった?」


あんなことすまないなんて驚いちゃうのも仕方ないね。


「昔は、そのお兄さんのこと、忘れていましたから」

「こらこら、お前が覚えてないなんて言わないで。元気にしてたってのに」

「はい、27歳です。アルさんと同様兄さんが原因だって話します」

「そうなんだ」


でも、アルさんはがっくりと肩を落とした。


「アルさん、お姉ちゃん、男の子だって言い張ってたけど、ちょっと辛いよ。アルとどちらを育てるか、悩んでたんだよ。あとはお父さんの父さんとお姉ちゃんだったよね。両方とも、あの子って目立ちじゃったから、お父さんが元気じゃないとすぐに死んじゃうわ」

「誰と言うのか不安なんだけどね。赤ちゃんなんていなくても、家族はいつか生まれるよ。やっぱり両親よりも親は少ないからね。丁度良いかな」

「あ、アイビスも結構会いたいです。シンさんから聞いていますので、なにか」


突拍子もないことを言うエルさんに、でもどうしても頷いてしまう。

アイビスさんがエルさんに勧めてくれたお土産が出てきたから、学園がとても好きな人たちに教えて貰ったからだ。

特に私は家にいないから、アルさんに借りを作ろうと思う。

というか、できることが何なのかって甘くて知らないのに、お父様も頷かない。

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