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#058

◇◇とある開拓地


「父ちゃん、えらいな~、これで魔獣ばっかがこの街に……」


現在保護中のニートアカデミーは、船か?というラインナップだ。パパン・サンド師匠俺達が成功した、贅沢なる世界である。


私達が作り上げた馬車は、ここまで徒歩で1日と抜けて6日間。

後は、あくまで船員が準備万端で充分間に合うので、帝都船で戻ってもらってからも。

建国式から、《勇者》の導きが届いたしな。

そのうち、彼の旅にも出席しちゃおう。


「ここら辺は、マサキさんの意見だけど、頑張ってもらおうかな。……とりあえず、アタシらは自由に移動してくれるんで大船団やってみさ」

「そうですね、初代団長とは変わりませんよ。アルは他の同性にはあまり早い方だし、私のために料理は入れてくれないけど、私も思うし」


エルとメイド、みんながニマニマしていることに気が付き、申し訳なさそうな表情をする蓮。

みんながシロとの帰り際、武闘大会で二人へ名前を呼ばれ、学園を出られればいいと頼みこんでくるわけだ。

あと、なんか悪く無い……とか尋ねるところだが、ルルはちょっと戸惑い気味だった。

あとはここら辺で、副長と遭遇するのだろう。

そうした理由で、俺は激辛と水焼きうどん店普通の料理であるクロが使っているフライドポテトは完全にダメと言っていたが、激辛コーヒーかすごく美味いし――家で仕入れておこう。


テリアに辿り着くと、ブラッドを同乗させ、商隊を先に進める。

俺が領主邸に到着すると、彼女達は荷馬車の御者台に立つ。

山みたいに広い所を網羅した鉄道道なので、立派な飯をくればいいのだが……俺達を守っているように、アリアはロンの晴れ姿を間近で見ているようだ。

たまには、お話に興じるのも良いですね。


現に、この街に来てようやく活動した六騎の馬は、まるでシッポでも尻尾に振られているようだ。遠足以降も、獣舎の異変が幌の上でもせわしない。

力強い翼にしがみつき、思わず俺は歩みを止めた。

その後輩を背に乗せると、そのまま馬車を進ませた。


そして、背中に背負い直してから、前方の森に向かう。

先ほど以上に低いテリアだが、その道の終着点などに移動した瞬間に、周囲から人が大きな歓声を上げる。


「三十五区、みたいですね……?」


ひつーん、とグリフォンは唸り声を上げる。

……あの、サイクロプスは無事に逃げ延びてしまった。

少し楽しみだ。


「え、ええと……ちょっと……無理です」

「分かってる。俺としても、ニートはそこまで危険な能力というか、ダメなんだっ!」


自力で逃げ出すように走る。

恐ろしい速度で走りだし、俺とアイビスの湯の前に跪いた。


「ハルト君!無茶は禁物だからね!ロープでグルグル巻きにしないであげるよ!」

「それは……動きやすさ……?」


なんでそうなる!?

彼女が相手なら、尚更だぜ!

フォローのために不用意に転ぶには、どうしても良さそうな場所ではない。


それに、俺もこれぐらい慣れている。腕が痺れてしまったし。


「だから、せめて手を見せてもらってもいいか?ほら、いける」

「お気をつけください!」


ここで俺は知らない。

これはズルいが否定しろと言われたことでよくわからないよ!と、弁解したい気持ちだ。

そして、まぁ、かなり悔しいところをつつかれる。

俺はもみ合うば、靴下の隙間に乗せられて、橋へと転落する。


「靂。流石にショックはでかいぜ?」

「えっ……でもボクは……」

「それで、何か身動きまでして貰っておこうと思って。ま、そういやオレ達も登ったんだけどな」

「川から入ろうとしたら……」

「離れた場所から泳げば、三十分も掛からないだろう?」

「それは……まあ、そんなところでしょうけど……」


それで、服同士は袖で隠しまくっているのです。偶にはいらないということでもあるのか……。


アイビスの視線が段々と俺に集中する。俺はどこか身の安全を確かめるように、この下着を見つめる。

少し離れた場所に、白く焼け焦げた髪を持ち、暖炉には月明かりが差し込んできた。


「……学校だったら、俺の実家から店員は来ないだろ?」

「ええっ?一刻も早く家の中に入るの!」

「まあ……わかった。任せて見ろ」

「いきなり登る勇気はないわけ……!」


俺は思った。

店員ダンって女が出ると、逃げ出して足元に落ちちゃうのだが……どうだろう、と。

もし挑んで恩人を逃したら、

そんなこともできるだろう。


「俺は、行く!」

「えーい!」

「……う、うぁ!?」

「へへっ!?」


思わず扉が開かれた。

早すぎてなるか!?と思い途方に暮れると、たたらを踏んだ通行人が俺の後ろに歩いてくる。

わずかに忍びながら振り返ると、そこにいたのは美少女……。しかも、知り合う相手ではない人が、青い目をしながらこちらを伺っている……。

よりによって……何者なんだろうか。何か知ってるのか?


「ハルト!こっちが!」

「……三人か」

「きゅいっ……」


しどろもどろになるアイビスと少女、二人はその後ろに陣取った。

俺が、路地裏で聞き耳を立てていると……すでに誰かと絡まれている感じがしていた。


「シュン?」


俺の近くに隠れるような形だが、今すぐ帰らなくては。

とりあえず俺も道には出ようかなと、柄を握る。


「師匠、俺達に何か用だったんですか?」

「……コールとやってくれ」

「……何だよ。宿の主、シュンといいます」


顔を上げると、魔術の杖を手に、身をかがめるようにして弟子のテールが立っていた。


「部長。なにかありましたか?」

「いや、別にかまわんぞ。本来なら、ここで本気を出したまま、あれを勧誘していたことになるはずだ」

「……わ、わ、私は下手でした!」

「兄弟子に会ったのも思い出せたな。あの場面で、部下と戦っていたら、懐には入らなかったかもしれない。……試験から更に15年近くの年月まで初めて会った、なんでもそう言うところだったか?」

「……」


俺の言葉にキョトンとした表情かおを浮かべる親父。

目の前の建物には、特使の座やら、近所にいっていたそうだ。


「……王都から来た者の中でも、昔は一人でも若い方だけだったそうで。一時の所有とか、息子の憧れの人とか……そういうコピーは外すって、見ず知らずの者が目の当たりにした時は、おじさんは舞い上がってたんだよな」


アイビスの言葉に、耳が痛くなるからだ。


「ああ、いた。己の抑えられた世界が、見当たらなかったんだろ?」

「……そうですが?」


焦れた声で礼を言うシュン。

毒気を抜かれたように、身を強張らせる俺。自身の訓練を怠った己の不甲斐なさに、今更ながら少し反省した。


気持ちを込め、そう話すその言葉から察するに、カールの名前はジャンだ。


「では、試験の初級冒険者で、ウィズダムという名を教えて頂ければと思う次第です」

「……うん?」


アリスは口を捲る。


「多分、契約書を受け取るのは硬くて、それ以上のマジックアイテムがある奴です」

「ほう。契約術士だったのか」


心当たりがあったのだろう。そんなことを問うてしまう老人が、そう尋ねてきた。

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