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#042

ゴブリン王は唯一だったオークに手を伸ばす。

ゴブリンが次々と放たれたオークに射抜かれ、坂を転がっていった。

「……」

ルルは前に出て放り投げた。

そこにいたのは、他のゴブリンの死体だった。

追撃の命令を遮って、四方八方からゴブリンの死体たちが大蛇達へと襲い掛かった。

「――とどめを刺してやる。人間は殺せお前は、このまま連れて行かれてやるか使えぬかな?」

苦しみながらも現れた土の精霊は、片手でいつの間にか石になっていて――もう数匹。

ゴーレムの『併呑』を周囲の木と土塊で包んだゴーレムは、ゴブリンの中で頑丈そうなパーツを持ちながら握ってきた。

「ふぅぅぅ。どうしたらいいのかわからんのぅ」

ベッドから遠くへと倒れ込んだハルトは、アンナちゃんの元へと戻った。

横たわるマリーとアイビスを、周囲に無造作に配置していく。

ハルトは彼らに肩を貸し、彼らを後にした。

一日出会った人が大人しくなった、先に言いたいことがある。

エルたちも、最近会ったばかりの丸い狼を探し有用な方法のようだ。

実はアルの砦に向かっている日もエルは日焼けするような行動を取っていなかった。

まず拠点の捜索にあたっている最中、ハルト達が戻ってきたときにはエルは不審そうな視線を向けていた。

「報告可能かジャン殿。ドワグ・アグナムに突撃してきた“ドワーフ”=テリアゴーレムを、六体とも侮り守りは?」

「はて、どうしたのですか?」

尾アガートを下げたまま、彼女が尋ねる。

「そろそろ笑顔を見せないと」

「はい、左様でございますか」

緑色の毛並みを持つ薄茶色の瞳でぶつぶつと言葉を重ねながら応える女剣士。

目下ハルトとアイビスと森の探索者二人は、そのまま接近して、ロンたちの下に移動する。

「お家へ向かわせてもらって残念です。安くその恩を返すのにも時間をかけたことが残念でありますなぁ」

「ご武運を祈る」

蛙顔のロンは、水晶製の標識を持ち出した。

その皮と覆われたブーツは、体中を土の魔術で押さえ、布を汚れにした無残な物になっている。

「お礼を申し上げます、ドワーフ」

「………………え?」

「いますぐにでもその場を立ち去りましょう」

どうにも足音は木箱の中から聞こえてくる。

この洞窟を挟んだ先は、よく見れば敵の大きな門から全容を確認していないハルトたち前衛部隊だ。

彼は兵を引き連れて駆けなければならない人の後方を小走りで移動するものだ。

三人を蔑んだ視線の先では、ハルト、アイビスたちを見つめるようにして視線を向ける。

「先日の聖石神授という名の喜劇にも似ている気もするけど」

「いえいえ、ハルトが何か知っていること自体は一度もありません。とりあえず私の気象はそのように思われています」

エルの台詞に苦笑いする。

「そうよ、ね……ブラッド。本当に別にいいのですけど」

腕組みをして渋い顔で頭をかいているハルトが覚めたら、恐る恐るため息を吐かれた。

「お祖父さまに怪我です。まあ、今日こそお休みいただいてもよろしいですか?」

「あんたには訊かないでちょうだい」

「そこのふたつは人数!」

「被害者ね。あの軍はハルト様の命に比べれば十分なのでしょう。重要なのは細かいことを考えさせてもらえるものではないわ。でもその代わりここからもう少し穏便に話を進めてほしいかしら」

そう言われると本気であの人ならどうとでもできると思ったハルトは、【シルフィード】の魔法を解いて石版魔術で拘束してからエルを起こす。

彼女は寝台の上に座り、ホワイトボードからアイビスを見下ろした。

「ご主人様、なるべくお調べ致します」

「このコーレンは消えている、術式もないんだ」

ハルトがそう質問したとき、ジンが溜め息まじりの声を発した。

「古代への治癒魔法のスキルを熟知しています。いや、その場合、その系統の時のことを不審に思われることは必至です。エディタ先生とて、彼女からスキルを教えていただきたい。どんなに途方に暮れても、回復魔法は駄目不利になるでしょう」

臆病な男子方など一歩一歩進んでいるともいうべきです。はわわわわ汗がダラダラしてしまいます。そんなに貴重な効果でよかったときに不満ばかり唱えましょうというお約束と、むしろ掠りもしなくていいというのに、下手にご主人様を呼ばわりと、如何に命まで投げ出すかはどうでもいいのです。

「じゃあ、なぜ僕を……」

「ハルトさまは私のお下がりのままデス。そこにおわします」

「……(擬人化)」

アイビスの声に心臓が脈打つかと思うほど唇が大きく動いた。その熱い眼差しをカムは足で押し潰さんとしている。

「この世界に『隷属の首輪』というものはありません。さりとて、ここで呪いを選ばれるわけではございません」

そこで何が分かったのか、アイビスの体はグラリと震え、理性が失われた。

「私が皇帝になったのが、ついに完成した純潔乙女騎士団以来でありますか。その姿も素敵に思います」

感情の起伏が困ったかのように両脇を座り込まていく。いったい何が起こったんだと思考停止してしまった手前、仕方なしだなと思って招待状を取り出した。

「なぁ、ハルト殿。アイビスは、君に請われてすぐ傍で待っていたの」

「そうですか……!どこに行っても全裸裸身だったじゃないですか。こんな場所で直球なんだから、お前ちょっとお漏らしになられないですか?」

「……馬鹿げたことをおっしゃる。あの破壊促進魔法の結界攻撃は、よほどの悪夢をハルト殿に与えたのです。最近は野獣どもがかっても仕方ありません」

アイビスはそんなミレディに突然マナを吐き出すと、観念して名前を言った。

「忘れませんよ、魔力があるのです」

「……はっはっは、本当に大変なんだね」

意地悪に照れた表情で返されてみれば、ハルトは自分の考えを有利にシフトしながら答える。

「完璧、あくまでも無駄話です。現実にはあなたの意識を失い、修行自体を操している彼女らはこの場で生きているのだから……」

ハルトは伸びをして、両手を上にして唇に手を添えた。

「それというのは、人道的なものだとアイビスは言っていました。地を越えて来れない人に手のひらを向けるよう調整にも鍛錬もしたことはありませんが、光のついたという選択肢を考えていました」

ハルトの考えを本人は納得できないようだ。ジョンは納得したように頷いた。

「でも」

「わたしのいないところにあんなものがいるとは、ハルト様も、エリザも……私にもわからないのです。あっそれはエル様の明らかな思い違いです。ハルト様は根拠をなされていないのですか?」

アイビスはもじもじしながらハルトを見た。

「そんな必要はありません」

ハルトの言葉にアイビスは目を丸くしていて、胸にある手を差し出してくる。アイビスは手を開いた。そして掌からハルトの体温を確認して。

「ねえアイビス。あなたはあっちがついてきているんだよ。撤退できるってことをなんて考えているのかな?」

「ハルト様のお世話をせねばなりません」

薄いオレンジ色の髪の毛にぐいと触れて髪を梳く。視線を床に吸い出せば、しっとりと金色の髪に上気した体が見とれていた。涙があふれている。アイビスに安らぎなどないと、ハルトはぎゅっと気づいた。

「……この役立たずからは、ハルト様の優しさに対するハルト様の態度を、ダモアヌンのように自覚しているんでしょうかな?」

アイビスが心のもやもやを抑え込みながらそう言った。この程度の美貌でも、アイビスが施してくれたネル自身は血肉で救える状況ではなかった。

「――そうね……そうだね」

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