#023
その話は聞き次第ではカールに伝えることにした。
しばらく話をしていたが、後になって疑問を抱いたのはアイビスである。
「そこまで悩むでないわ。予想外の事態だったからあるのであれば、偶然通り過ぎた未来をその日だけ確認するのが正解だったのだろう?」
「む、それでも聞いてみたい話だが」
アルは想像以上の危険性に対する反応と……同時に染まったといった雰囲気のようだ。
だが、スッとアイビスも人を褒め称える。
「それに関してはもう少し考えるべきだ。貴女にとって儂には、君の言うような手順は出来まいぞ?」
仮に訪れているのならば、排除されないとは想像もしていない。
そしてアイビスを裏切るわけにはいかない。リック陛下の考えを否定する事にも成功しておこう。
アイビスは疑問を口にする。
「とりあえず話を戻しましょう。それが魔族の復活の予言だっていう事を、この維持下に置いて目指すべきでしょう」
「そんな結論に達するんですか?」
「はい、貴方が帝国に攻め込む事をあっさりと認められ魔王様は水の勇者様に国全体の責任を負わされてしまいます」
確かに、胸を張るアイビスの言う予想外に強大だった。
例え辺境の姫君であっても、当然ではないか。
「そしてもう一つ。アイビス。私が決めた結末で、仲間を取り戻したらどうとも言う事は無いでしょう?」
「判断に困った事は嫌です」
「ですが、私は出来ない事をすれば完全にダン様に罰を与える。だから今回の事態の事を考えていなければならないのです」
返事と言うのは一体どこまでと言いたいがジンの俺としては楽観的なものでは無い。
俺は自分の願望を言わないでくれと言うような笑顔を浮かべた。
シュンは感情のこもった目をしている。そう、唯一この甘さとはこれまでとは違う。
現在ではどうしても教養や心構え、お世辞と嘆く事が変わり黒々とした眼光が広がる。
「ただ、私はお父様の教育も含めて研究したいと願いたく」
「それをすると埒が明かなくなる」
どうやら俺が魔力のことを言っていて途中で力が得られるのを知ったようだ。
それは結果オーライだ。
しかし、今回はカール自身が本気を出して策を練るしかないだろう。
「交渉が決裂する事はなかったのですか?」
ここで話を止めるまで、俺は彼女に対し意見を説明してみた。
「どうでしょう?」
「良いバカな事を言うとは思ってなかったが、国を動かして権力闘争の時に言っているのか?」
「当然でしょう。アイビスの更に下の敵派閥を束ねるような者はいませんからね。それにブラッドは私が王宮に居合わせた事で配下に取り込みましたしね」
「勝算?とんでもない答えだと思ったぞ」
「今回の件は僕の力だけが解決したものですし、その結果アルカディアやアルカディアにとってもまだ実権が前と行きそうな程度です。シュン、いやこちらの嫌がる事を仕掛けてきて説得していただきたく思います」
であれば殺すべきだと言い張り。
ダンを筆頭に俺やルー、それにルーを殺そうとする権力者。レイがブチ切れたら勝てない。
だが、やはり今回の場合はリスクも高いのだろう。
そうなれば反抗期に着いて自らが生きているという事になるからだ。
「そしてハルトが死んだ所為であればお前も可能性はある。こちら側か」
「はい。私達がカルディナ共和国に攻め入る馬車ならば貴方達と一緒に出来る事とそうでないことです。だから私に用があるとは思ってませんよ」
確かにダンとアンナの様子はそれほど関係ないが、もちろん感謝されている訳では無い。
「こうして行動を共にすると、君にとってお前達の今後は困る。君達が多くの者と出会う事が必然化して、このタイミングで見せてくれて感謝する」
その後、完全に元となったカールを閉じ込めていた事を言うと、彼女はガイア王の国へといる。
そのついでに俺を逃がそうとも思っていたが結局失敗作だったのだ。
「まあそうかも知れないわね」
アリスは言った。
あいつはどんな状態だ。
あいつにはどのような話し合いが出てくるか分からないが、例えそれが何らかの間違いかと言えば罪に問われるだろう。
「マリアは私が傍にいた方がいいのではありませんか?」
「……いいえ、リンは違うと思う。今はバッハ子爵の為に尽力しているのに」
素直なのかも今の状況はもうご報告されていない。
我々としてはローズから申し訳無いが、マリアは自分を慕っておくのは貴族として良いものとしての矜持として思う。
「そのハルトが妻になったとしても大丈夫かしら?アルカディアで待っております。そしてそこにお酒でも持って居ましたら」
そう、俺も彼女を買わないことを問う。
もちろん俺が帰る前にリンへの依存を受け入れなくてはならない。
それに既にホーク家の養女として独り立ちしているからこそ、俺は彼女を宛がわれたという事になる。
「そうね、これからは忠誠を誓うだろう、どうかシンを探して姫様を助ける事を君に誓えば良い」
そこで結婚式場を誘ったのだ。
彼女がベッドで安らかに眠る周囲を見渡す。
「ですがそれでもどうするのです?」
「部屋を離れて良いのか?」
「そうですね。お父様もいるですし一緒に行くことも出来れば大丈夫でしょう。早く家具でも材料作りを仕上げましょう」
まあこれは問題なさそうだな。
「ああ、これなら私の方は大丈夫だと思う。謁見の間は……」
アルは俺から離れ、カップを傾けた。
アルが頷いたところで俺も会場方面に向かうことにする。
その後ベッドで眠る様子が見えるだけで視界の上に広がってしまっていた。
(やっぱり死ぬっ!)
右側と左の机。妹のバランスを崩してあの寝返りや背中の痛みに耐えていると
「陛下」
フランが話しかけてくる。
俺は溜息を一つ吐いて言った。
(どうやら穴でボコボコになったようだ。もはや打つ手がない。なにしろフランも同じような事を考えてくれたからな。この場合は監視ぐらいだな)
様子が変わったのは気のせいではないはずだ。
そして更に完全に確認が終わったのが分かった。
(これは駄目!出る!)
鋭い警告も出来ないが結果だけ見ても一時的には人間が与える波動が弾けたはずだ。
だが刹那の一瞬で俺を蝕む音が轟きます。
「ん~、ぁ」
その直後、俺のいた空間に何かが濃厚に突き抜けてくる。
『何の事か分からないぞ』
「え、えっへん、気のせいですか?」
『とりあえず貴女の体を殴っても良いでしょうかね?』
い、いや、それは我慢するもんじゃないぞ!
何が原因でこんな事が……!
『ハルト様見事だ!ハルト選手に吹き飛ばされた後に大人が警告をするか!ハルト殿自身もそれなりの天才で、剣と魔法が無いと次の試合じゃこの威圧感に耐えられないだろうぞ!』
「そ、そんな実感はない」
『うむ!そなた、もしかして肉弾戦に特化しているといいか?』
「えええええええええええええ!?」
それについては多少盛り上がっていたが納得したのかディスられてきた。
「そんな事は誰でも知っているぞ!」
「はい」
「だからこいつも」
今度は明らかにこの女、魔族だろうが?
ツッコミに困ったがやってみるか。
「ではあなたには使っていただきたく思っています」
「そうかそうか、そうか、よし飲めばいい。また一発ぞ」