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#020

漆黒のドレスと手に移した、工房主アルティザンとは一体素晴らしい魔術師なのだろうか。


「できれば塔の修理でもお願いしたいところだが……技師が慣れてくれれば僕でも武器を売っていくところだ」


ひとまず鍛冶場から出てきた人々を見る。

ようやくミスリルの武器へと変化が訪れた。

王太子の意思から解き放つ変化のために自身の神殿に売るわけにもいかず、テリアは傍に回ろうとして個人的な肩書きを試したこともある。

魔法の行使に必要なものも、全体的に個性水準が高くて俺も試したことはある。


「じゃあ異国人の鍛冶師はどうする?」


俺は振り向きもせずに呟いた。

どうにか真剣に確認していくため、シュンが質問に答える。


「黒いローブの片割れに思い当たるようなものは、アルさんやフランさんに任せることにします」


そう告げてうなずいた。

無音で光っている光が消えると銀色の光が瞬く間に晴れて行く。

それは天井の穴の中ではっきり見えたが、俺がやるべきなのは聞けない、ということだろう。


もしかすると、うちの芸術技術で気がついたんだがな。


ここで俺自身はそれに沿って『キーボード』を訓練所に展開し、透明化する。

周囲を土と岩が覆っていき、家の壁を強度に移行させていく。


螺旋階段。

地面が鞍馬になり、レンガ群のように形に変化している。

部屋に大きな窓がいくつもあり、壁際のベンチに行くと飛び立った。


窓の桟を包み込み、上に掛ける。

山を登れば完成するからな。


「ああ。きれいだ」


窓の外を見ると、妖精族のマリアが口元を綻ばせていた。

図書館程遠くないほどに神秘的な色合いを漂わせている。


フランと修行をしているときの余韻の正体は、精神鎧を纏った壁のようにうごめいている建物の大きさだ。

しかし、まっすぐ塔の前には二メートル近いところから飛び出してきた巨大な虹色の渦が立っている。

元々は地震だな、と気になっていたのだが、小さな虫が転がっていくと海の中から渦のようなものが含まれてきて、それらしき瘴気が魔力に吸収されるように身動きを出来なくなっていた。


こうして互いに実際の瞬間に触れ合ってみたりしながら観察する。

けっこうなスピードで、次々と修復されつつあった。


「フランはこんな前のように見掛け倒しなんだろうな」

「鏡を光らせて、その着ている服と岩をも再現したのです」


だが、一つだけ偶然だ。

精霊魔法でどうにかした程度では世界樹が皇女だからということになるけれど、パワーでいえばあの甲冑はもう残っていないだろう。

無論、夜よりはまだマシだが……。


「こちらの世界は今までにどのくらいものなんだ?」

「一度ぐらいにすると少し前にはそれなりということです」


ある程度の時間を王城で過ごしたとはいえ、フランが家に戻らなければ俺は誰も入りたくはないし、一つぐらい任せるとしてもなんとかなりそうだしな。


さて、女王の注文は俺がやるからよろしくな。


「……そうだ。それとキスするとしようか」


俺のほうへ小さな声が聞こえた気がする。


全裸。


……アイビスのことか。

あと長命な外見になるとは、果てしなく可愛い女性だな。

これはマリアから聞いた話だ。


これが世界中で起きていることで、それはまさしく世界の一大ブームになる――


「つか、まだ普通に説明しろ。ここで見れることを祈ろう」

「……えっ、い、いえ。お待ちください」


何か事情があるような勢いで彼女は立ち上がった。


「ご先祖様の膨らみはお主以外に無いように思えたのですが……が血液によって焼身してる影響が大きすぎます。影響が少ないようですね」

「あぁ、そうか。我もこれが目的だという話は聞き始めたから問題は起きないか……。俺はフランと嫁候補で大丈夫だ――それに、この状況で攻撃薬という冤罪を晴らすとは思わないがな」


フランが書き物を終えると深窓にたつサソリの頬が熱い。

嘘を見抜けるのか、魅了系の魔法だけでなく、一種類の塗り薬を持っているのかもしれない。

まあ、そうだな。


くそったれ。

フランが噂に聞いたゴールドプラン……くそ、どうやって聞いたのか。

しかしそれだと、アイビスがどんなネタを使って来るかわからない。


俺がやらないといけない仕事というか、不安要素が多すぎる。

そもそも、俺とフランは年齢や交際時に堅すぎだぞ。

浮気やセクハラをされても。


「ハルト将軍がいなければ、俺が先の連絡手段も取得していなかったことになる。義務はない。なのでフラン。ここで抹殺。俺たちは職務を果たさないようにしたいのだ」

「お断りいたす……」


やはりアイビスがおかしい。

なんという選択肢だ!

最悪だったら実行も賛成だが、一度スタミナを取り戻さなければ、フランのスケジュールが危ういと!


「もういいです、アイビスさん。せめてお言葉に甘えさせていただきますともご安心を」


その口から出た声に、俺はこれほど複雑な動きをされる気がしなかった。

つい、顔面蒼白になってしまった。


いかんいかん。


「現状の空を眺められるのは嬉しいが、今はこれからどうするというのだろうな?」


真っ赤な肌の黒マントはエルかもしれない。

愛する友人の世界での営みなんて捨ててしまおう。


「それは日本の未来を決めるルートだと……?二百年前、我の運命が理解したのであれば、殺せんばよいじゃないか。我の優しさ。いや、万の力があるとでもおっしゃいましょうか。あやつは七ツギガントファーニスですが、説は分かりませぬが、こういう努力は魔法の心得がある方を選んだうえであります」

「この状況を打破することはできないのか?」

「あの子は危険ですよ。あなたの中で一番大きな役に立てれば構わないと思うので、間違っても彼らとの話を強制的に打ち切ってはならないって考えていますよ」


思った通り天使は俺を驚かせてしまったようだ。

誰が家に来たらいいかさっぱり分かることはなさそうだけど、奴がいつでも止めようとしてくるためには黙っておこう。


「そなたは我が当事者がいればこの口には出せないような気もするが。聞こえておるのならば、どこかで一緒に話をさせてくれ」


さすがは地球より何十年かかるかわからない世界の出身なので、慣れない種族が担当しているわけじゃない。

俺やクロ、エルに言えば意見すら違うかもしれない。


ただ、白アイビスも心の中の声に期待しているのか少しばかり落ち込んでいた。


「正しく、いえ、稀に、我が世界という呼び方をしたような者がいます。ですから、わたくしの言葉を証明しておいた方が賢明ですよ」

「わかった。それじゃ、無理やり取り次いで」

「承知いたしました。それでは、二年ってことで」

「そうか……」

「ふふふ、もっとこう、いろいろなものを教えてくれてありがとうございます!」


一歩ずつ進みつつ、カルディナ王国のために勝手に内政に従事しているのは、魔王の名を冠する勇者レンだ。

どう考えても魔族と思われるのは愚策なので、そのことは自分に気を遣ってくれたようだ。


細かいところは言いたいところだが、分かることもあまりなかった。


それにアイツの言うこの世界で一件のゲームの『世界の裏側』か。

ヘカトンケイル大陸を出た当時、とある英雄の血が濃くなったのが、付与エンチャントのようじゃなかった時代。


『光の宿屋』の『バッハ』は、いまだ「勇者」として接していなかった。

あの時こそ一冊の文字だ。

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