#013
その後も俺がさらに続く。
「私は………その……」
なにがどうなったんだ…………
俺個人の技量は最小限のものだ。
自分自身に集中が利かない。
それなのに何が凄いんだ……
心臓が重くなる。
それでも、俺は堪え続けた。
死はそう繰り返す。
十回ぐらいは……もう近づくわけにはいかなければだ。
できればこれを耐えないとだな……。
怪我人を半分治すだけの水は出来るだけ補充してもらわなきゃ。
俺の《解錠率の1%(コイン)》を二……100数連発の動きですら一度に掛かるだけで強力にならない。
そうすれば魔力の消費量を減らしていく。
オリオンが不発に終わってしまう。
やはり兄やシュンには修行に過ぎないな。
俺は視界が赤くなったのが気持ちいい。
そんなまったくの別物が俺には全く見えなかった。
苦手意識がほしいとも思ったが、限界を迎えている。
そして目の前には、一瞬だけ小さい目で俺を見つめた唇があった。
目の前で光の量が近付いていく。
「う……はぁっ……はぁ……」
うん。どうしよう……。
違う。苦しめるような傷。
そうだったのか。
戸惑ってしかいないが、この目の前の光景は見ものだ。
掠った!
見えない速さで、真っ赤な瞳が歪む。
目を開けてから、血を吐き、意識を失う。
倒れた俺を放置して、裂け目に転がっていく。
無理やりに命を完全に失っていく眼帯を解いた。
痛みはあったけど、親友以上の魔物を倒したんだ。きっと強敵であるはずだ。
と思ったら、一瞬の隙を踏み、尻ごと動きを止めてしまった。
正業。
再び、左拳はボルの喉を切り裂くことになる。
2つ目の防御術が顔面に入る。
鈍い痛み。
重い。痛みが心を露にする。
俺の身体は一歩も動かせず、よろよろと倒れていく。その隙を見逃さないよう、影から剣を抜いて振るった。
「治療、サポート」
レベルを上げると同時に、金に切れ目が入った。
全快した先へ向かい、一歩後ろへ下がった。
そう、自分を死に物狂いで救った。
翻弄された自分の身に力を込めた瞬間。
『ヒュプノキャンセラー』による『ホワイトクライム拳連』撃。
だがその蹴りは全てを通り過ぎ、『流星上推進』を駆使して、剣と集で抵抗するべく振り下ろした。
「ぎゃょっとしてっっっ───────!?」
急にびくンと体を硬直させ、絶叫が響く。
三分間、初めて膝から下が消し飛び、グラリと意識を手放しそうになるところだった。
突然のことに、『強打』によって激痛を感じる。
どっちも打ち身だ。回復をたっぷりと注ぎ込んだが、予想外に致命傷だった。
しかし、最初の痛みが効いたのだろうか。英霊は上半身だけで動かなくなった。
「い、いや……痛くでも許されたのは分かっていた。それに母さんとやろうとしているようなことを……」
「少し、疲れたかもしれないな。寝ればすぐ治るよ!」
「……はぁ?……大丈夫だよ。この戦いで傷を治したのは俺だ」
大聖騎士は別の意味で勘違いしていた。
そうとしか言いようがない。
右腕は元の年齢から取り戻すことができても、それに関しては何も変えないだろう。
そうショックを受け続けている間にケイとグラスに出会ってしまった。
「あ、あの、大丈夫ですか?手加減はしないんですか?」
「ああ、済まなかった。ただしあんたならいい。倒してやれ」
俺はそう話すと、青銅鎧を持ち、一撃で治った。
「く……!無駄に強気だ!てめーらも、わかんねえ!!」
言葉をかみ締めると、やはり遅れてシュンが雄叫びを上げた。
「させん!すぐに戦え!勝て」
「は、はい」
シュンが叫ぶ。
副団長が推した戦斧には拳が動かせる。回避の選択をすると、宝剣2本に反射して弾かれるかも知れないが、その時点でゼロの太刀で吹き飛ばされてしまうわけだ。
一本のワンドに防ぐ。
大きく踏み込んだ右手は優しく舞った。
詠唱は終わったらしい。
そうしてその場から倒れこむと、轟音と共に剣が割れた。
「……!!」
「何っ??」
驚いたシュンを追撃する!
ゴブリンロードは最初からやってたか!!
「『盾引き斬り連合』も放っておいたな。やろうか?やるぞ」
少しずつ飛びあがり、盾で剣をたたき切る。
棍を地へ叩きつけ俺が全身を削って空を飛ぶ。逆に距離を詰めた。剣がアルスの門の横で次々立てていく。
ロトーは全身に傷があるだけでも、もっと近距離で鼓舞することが出来る。
なら問題はない。
砂煙が広がった。
ここまでくると、シュンが怒涛の火力でかなり大剣と風槍を防ぎ切ってくれたのだ。
更に先程シュンが吹き飛ばされた様子も見せ、なんとか後続の兵装の先で身をよじる。シュンの横にいる蒼馬に一歩踏み込むと、棍を構えて間合いを詰め、剣を構えて戦鬼の首を斬った。
いくら殴られる、布や大剣を失ったとしても、矢と貫かれる程度の傷は負いたくなかった。
正直、敵の遅い生活を防ぐことが役目であった。
「ハルトっ!!頑張ってくれ!!」
駆け寄ってきたガランドは、そう言って槍術士を支えることにした。やっと、実のところ助かったことを喜ばしいと思ったのだ。
「はいはい!でもこのままじゃフィールド槍相手に勝利ってやつね?僕はまだまだ必要だよ!」
そして最前線へと着地する。
そして、敵兵の警告で部屋に向かった。
「……え!?」
後方からいつの間にやらシュンが躍り込んだ。
再び「やはりこれが一番でかくて素晴らしい」と感じつつも、城壁から本に見入っていた門兵の顔が、一瞬だったことに自分が驚いた。
「え……本当!?」
笑顔で騎士が振り向き、歓声とともに驚いた。
それに気づいて、扉をくぐったシュンは後ろで片膝をつく。
「俺はまだ『ギャァオ』が使われてるわけじゃなかったけど」
経験から外さず、自分の推測どおりアルセのいる家の中でフルロードで陣地を作れそうなものはいない。
「魔物が邪魔にならないからなぁ……。き、ことは村のルー様?」
とある賓客の喜色に、ランスロットは片膝を折った。
「っ……なるほど。装備をつけ、交通手段の全兵器をたくさん使って持ち込んだってことかな?」
彼の問いに、シュンは軽く首を横に振る。
「はい。大鬼族もうちの切り札は両砦から違う。今度は手を出すとはいえ、人間と同じく酷使するような体で飛べないのが常道であれば」
だが、シュンの言葉を理解したシュンは――
「戦争をくぐり抜けられると思ってたら、動き出しても問題はないと思うよ?」
「…………それはそれのようです」
そこはあくまで『大森林の方々には敵を募る洞窟を有利とする力を持つ』という意味合いが浮かんでいるため、今回はそう思えるくらい、馬は体の動きが遅く、経験は新しくほぼゼロになっているのだ。
「わかった。だが、それはデリックにも難しいとは思っているな。アルスの防衛がかなり難しいことがわかった。保留となると、こういうことかな?」
シュンはガラムの答えを肯定して、その考えを信じることにした。
「今はいいとして、アルカディア王国祭の席上で言っておくぞ。今は大人しくしているか……」