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黒翼のカナエル  作者: 氷花
プロト・ゼウス編
239/240

友の元へ

 エルメは玉を一つ取り出す。

「それは何ですの?」

「これは、ミーニからもらった、望んだ場所に行ける玉だよ。これでセクテのいる場所まで行く。早速使うけど、準備はいいね?」

 エルメは皆が頷いたのを確認し、その玉を両手で祈るように握り締める。

(セクテのいる場所へ・・・大切な友達のいる場所へ導いて!)

 そしてその玉を砕く。


 気が付くと、不思議な空間にいた。

 そこには地面も何も無く、空間の大きさを測ることのできる物体は何も無い。

「この空間の何処かにセクテがいるってことか・・・」

「まさか、怖気づいたんですの?情けないですわね」

「んな訳ないって。さて・・・セクテーーーーー!!」

 とりあえず叫んでみる。エルメの声は反響することなく空間を突き進み、溶けていく。

 ・・・・・・反応はない。皆で同様に名を呼ぶが、やはり何の反応も変化も見受けられない。

「どうしましょう?捜し歩きますか?」

「いや、待とう。セクテだって、僕たちがきたことには気が付いているだろう」

「気が付いていて出てこないってことですの?」

「何故でしょうか・・・?」

「何か、出てこられない事情があるのでしょうか?」

「・・・そういう奴なんだよ。さてと!模擬戦でもするか!」

「いきなり何を言い出しますの!?」

「いいじゃん。別にやることもないし。で、誰か戦いたい人はいる?」

 皆が顔を見合わせる。すると、すぐに一人が手を挙げた。

「私がやらせて頂きますわ!」

「滅茶苦茶やる気じゃないか・・・。まあいいや、それで、誰と戦いたいんだい?」

「貴女ですわ!」

 そう力強く指差したのは、エミエルだった。エミエルは突然の宣戦布告に困惑している。

「エミエルさん、と、言いましたわね。先の戦いではよくも一方的にボコして下さいましたわね。その時の借り、きっちりと返させて頂きますわ!!」

 そうは言われてもと、エミエルは複雑そうな表情を浮かべる。

「仲間と・・・戦わなければならないのですか?」

「仲間?貴女と仲間になった覚えなど!まだ、ありませんわ!!」

「!!」

 シュンとしてしまったエミエルの肩をエルメがポンポン、と優しく叩く。

「戦うことが分かり合うために必要な時だってあるさ。分かるよね?」

 そう言われ、エミエルはゼウス・ワンとのことを思い出す。

「・・・はい!」

「さあ、始めますわよ!!」


「全く!何て速さですの!?」

「くっ!何という硬さ・・・!」

 デルフはエミエルの速さに防戦一方、エミエルはデルフの鱗の硬さの前に有効打が無いという膠着した状況となっていた。

「そこまで!二人共。この戦いは引き分けだよ」

「邪魔しないで下さいまし!」

「するよ。もうどれだけ、そうやって睨み合ってると思う?お互いに何の手も浮かばないんだろう?」

「そ、そんなことは!」

「はい・・・」

 二人はじばし見つめ合い、やがて戦闘態勢を解いた。

「決着をつけるには、お互いに考える時間が必要だね」

「・・・ですわね。・・・エミエルさん」

 デルフがエミエルの元に歩み寄り、手を差し伸べる。

「戦ってみて分かりましたわ。貴女の力も、貴女自身も、気持ちのいいくらい真っ直ぐですのね。認めて差し上げますわ。エミエルさん」

「!!・・・はい!デルフさん!!」

 エミエルは嬉しそうに差し伸べられた手を両手で包み込む。

「ん、んもう!こんなに無邪気な方でしたのね」


 その後も、様々な組み合わせで模擬戦が行われた。

「さ、流石にくたびれましたわ・・・」

「お腹も空いてきましたね」

「あれ?そう言えば、食料って持ってきてましたっけ?」

 お互いを見合わせるが、誰一人としてそれっぽいものは持ってきていなかった。

「どうするんですの!?ここは一旦出直してくるべきではありませんこと?」

「それはできない」

「何故ですの?」

「帰る方法が無いから」

 は?一同はぽかんと口を開ける。

「どどど、どうするんですの!?私たちにここで野垂れ死ねとでも言うつもりですの!?」

 焦りの色を見せるデルフたち。

「このままだと、そうなるね」

 しかし、はははと笑うエルメに危機感は全く見てとれない。

「どうしてそんな風に笑ってられるんですの!?私たち、このまま死んでしまうかもしれないんですのよ!?」

「どうしてって?信じてるからだよ。友達を」

「友達・・・セクテさんのことですわね?」

「帰る方法ならセクテが持ってる。だから要は、僕たちが野垂れ死ぬのが先か、セクテが助けにきてくれるのが先か・・・全てはセクテ次第ってことだね」

「・・・はぁ。そういう事でしたのね。理解しましたわ。ですが、そう言うことは先に伝えておいて下さいまし」

「それはごめん」

 皆、理解し、笑顔を浮かべる。

「それじゃあ後は、セクテの選択をゆっくり待つとするか!」

 そう言ってエルメが寝そべろうとしたした時だった。

「ずるいよ、そんなの・・・・・・」

 耳に入ってきたのは、久し振りに聴く友の声だった。

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