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黒翼のカナエル  作者: 氷花
プロト・ゼウス編
233/240

ブレイブ

 飛ばされたそこは、何一つとして視界を遮るものの無い荒野だった。空も真っ青に晴れ渡っているのだが、太陽は確認できない。この異質な空間は確かに、白紙界ものだろう。

「これはこれは。逃げ場も隠れ場も無い、如何にもな決戦地だね」

 ふと、ゼウス・ワンが右手を挙げる。

「者共よ、集え!」

 そう声を上げると、何処からかソルジャーたちが集まってきた。

「まだこれだけ残っていたか。・・・ナイトの姿もあるな」

「この場所に飛ばされた後、元の世界へ還されるとのことでしたが、どういうことでしょう?この子たちの相手をしている方々の姿が見えません」

「変だね。僕たちより先に飛ばされてきていただろうに、まだこれだけ残っているなんてね。ん~・・・よもや、ソルジャーやナイトたちに苦戦してるって訳でもないだろうし」

「・・・ならば、こいつらに直接状況を聴くのが手っ取り早いだろう」

「成程。合体させて意思を芽生えさせるということですね?」

「ああ」

「そうか、ジェネラルになれば・・・って言っても、それでもラキエルの力で漸く喋れるようになったんだったね。と言うことは、話を聴ける程となると・・・」

「ジェネラルの更に上、ということですね?」

「うむ。これだけの数が残っていれば可能だろう。・・・よし、お前たち!力を結集せよ!ソルジャーたちはナイトへ!ナイトはジェネラルへ!」

 少女たちは命に従い、光となって集い、次々に姿を変えていく。

 やがて、ジェネラルが三体誕生した。

「ジェネラルが三体・・・行くぞ!お前たち!ジェネラル三体を結集し、今こそ、最強の姿『ブレイブ』へと進化する!」

 ジェネラルたちは互いに顔を見合わせると静かに頷き、光となって一つとなる。

「これが『ブレイブ』ですか・・・!」

 軽鎧にマント、手には大振りの剣を携えた、凛々しい女性の姿へと形を変えた。

「ほー!カッコイイじゃない!『ブレイブ』って名前も勇ましくていいね!ぴったりだ!」

「お褒め戴き、恐縮です」

 ブレイブはそう言い、会釈する。

「うおおっ!?喋った!」

「よし。ブレイブ、相手は何処にいる?」

「相手は一人」

「一人だけですか?」

「来ます」

 次の瞬間、先程まで誰もいなかった場所に一人、女性が突然姿を現した。片手に刀を携えた狸の女は、その様相とは裏腹に敵意を全く感じない微笑を浮かべる。

「あなたがゼウス・ワンだよね?」

「ああ、そうだ。・・・そう言うお前は、強化獣人だな?」

「うん。・・・強化獣人No.06、ポンポコです。よろしくね」

 と、小さく手を振る。弱々しい印象すら受ける彼女だが、今の今までたった一人で数多のソルジャーたちを相手にしていたことを考えれば、その弱々しさはむしろ、余裕の表れにすら見てとれる。

「事情は全部知ってるってことでいいのかな?」

「ああ、聴いている。だからここにきた。・・・だが、何故お前は先に送られてきていたナイトやソルジャーたちを送らずにいた?」

「話を訊くためだよ。その子たちにも意思があるって分かったから、もっと強い存在になってくれるのを待ってたんだ。あなたたちがこの世界線に来た理由は知ってるの?」

「・・・知らされていない。だから、与えられた目的を果たすべく行動していた。もっとも、今は帰還命令が出されているがな」

「分からない、か・・・嘘を吐いているようにも見えないし・・・じゃあさ、あなたたちの世界が今、どうなっているかは・・・」

「悪いが、その問いに答える事はできない」

「だよね・・・」

 ポンポコは頭を押さえ、首を振る。

「結局何も出来ず仕舞いか・・・仕方ないんだけどね。聞き出したら出したで色々と問題になりそうだし」

「強化獣人ポンポコ。私たちを元の世界に送って頂けませんか?」

「ん、いいよ・・・って言ってあげたい所なんだけど、折角だからちょっと私に付き合ってもらっちゃってもいいかな?」

「付き合う?」

「うん。私と・・・本気で戦って欲しいんだ」

 えへへと、笑みを浮かべる。

「はあ!?こっちは一思いに送ってくれた方がいいんだけど!」

「何か理由があるのか?」

 ポンポコは少し恥ずかしそうにもじもじし始める。

「私・・・戦うのが好きじゃないんだ。だけど、私には戦いに特化した力が備わっていてね、もう一人同じように戦いに特化した力を持った子がいて、その子は戦うのが好きだったから、その子にずっと任せっきりだったんだけど・・・その子にもすべき事ができて、今ではもっと大きなことをしてるの。・・・あんなに危なっかしくて、いつもはらはらしながら見てたのにね。知らないうちにどんどん成長しちゃって・・・それなのに私は、あの子よりもお姉さんなのに、全然何も変わってなくて・・・・・・あの子がいなくなった今、私がしっかりしないといけないの。戦う事が好きじゃなかったり、得意でもない人でも戦ってくれてるに、私がいつまでも好きじゃないからって、戦いから逃げてばかりいる訳にはいかないの!だからお願い!私が変わるために、私と戦って下さい!」

 深々と頭を下げる。

「えっと・・・皆さんはどうですか?」

「うん、まあ・・・ただ黙って斬られるって言うのもあれだし」

「いいだろう。強化天使として、強化獣人に一矢も報いぬままここを去ることはできん。相手をしよう」

 三人がそう頷いてみせると、ポンポコは満面の笑みを浮かべる。

「ありがとう!ちゃんと送ってあげるからね!」

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