帰還命令
「お前は・・・『ジェネラル』か!ここまで成長している個体がいたとはな。だが何故だ?何故こうも大人しい?戦いを止める命令など出していないはずだが」
すると、その隣にいた青髪の女が一歩前に進み出る。
「ほう。ということは、お前がこいつ等の主か。こいつがお前に話があるらしい」
「話だと?そいつが?」
赤髪の少女が天使の少女に向かって合図を送る。
その天使は杖を取り出す。
「では・・・我、命ず。ジェネラルよ、その意思を示せ!」
「・・・・・・ゼウス・ワンに通達します」
「喋っただと!?」
ソルジャーたちはただの兵力として創り出され、命令に従うだけで、そこに意思など存在しないものだと思っていた。いや、それよりも、
「通達とは何だ?」
「プロト・ゼウスと共に帰還せよ、とのことです」
「帰還命令・・・?」
何故直接自分に伝えてこない?気が付かなかったのか?・・・ともあれ、
「ここまで、か・・・・・・プロト・ゼウスよ」
「はい。従います」
エミエルは迷い無く頷く。
その隣で、エルメは頭を悩ませていた。
「なあ、帰還するって言うけどさ、方法はあるのかい?僕はセクテの力でこられたけど・・・セクテはいなくなっちゃったし・・・・・・帰ろうにも帰れないんだよね」
「一緒に連れ帰って欲しいと」
「そもそも、君たちはどうやってこっちにきたんだい?時の力を使える訳でもないだろうにさ」
「お前たちは世界線を移動する力を白紙界の中で使用しただろう?白紙界で起こったことは自動的に解析され、再現できるのだ」
「ああ、それで・・・・・・って、ちょっと待てよ・・・・・・」
エルメは重大な事に気が付いた。
「ということは結局、君たちもセクテの力を再現してやってきただけで、帰る方法は・・・!おいまさか、帰る方法を持たずにきたの!?」
「いいや、白紙の書の力を使えば可能だ。元々白紙界から移動してきた訳だからな。戻す事も可能だ。申請すればよいだけだ」
「そっか・・・」
エルメは胸を撫で下ろす。
「では、ゼウス・ワン。今直ぐ帰還を申請しますか?」
「ああ、たの」
「待って!」
言葉を遮り、特徴的な長い耳を持つ少女がやってくる。
「お前は・・・!ミー」
「ミーニ!!」
またも声を遮り、突然現れた黒髪の女がミーニを抱き締める。
「ミーニ・・・無事でよかった・・・」
「あう・・・シツライさん、きてくれてありがとう」
更にハワーや皆まで出てきていた。
「ハワー・・・皆さん・・・」
「帰っちゃうんだね・・・・・・」
「・・・はい」
「そっか・・・・・・でもよかった!」
「?」
「だって、今のエミエルちゃん、とってもいい顔してるんだもん!やりたいこと、やれたんだね!」
「はい!お陰様で、もっとしたいことも見つかりました!」
エミエルは満面の笑みを浮かべて見せた。
「えへへ、そっか!」
ハワーもまた、満面の笑みを返す。
「エルメちゃんも帰っちゃうんだねえ」
「はい。セイムにはリベンジもしたかったですけど、ね」
「ごめんねえ。結局、大して何も力になってあげられなかったねえ」
「いいえそんなこと!シュリさんにはずっとお世話になりっ放しですよ!・・・ほら、これとか!」
エルメは袋から玉を一つ取り出して見せる。
「ははは。それは元々私が考案したものじゃないんだけどねえ」
「それでも!です!」
「ふふっ!ありがとうねえ」
「エルメさん」
そこへ、シツライから解放されたミーニがやってきて手を差し出す。
「これ・・・」
エルメも手を差し出し、一つの玉を受け取る。
それには既に何かしらの魔法が込められていた。
「これは・・・?」
「望めば、どんな場所にでも行ける玉だよ」
「へえ・・・時の力ってやっぱりすごいんだね」
「うん、すごいよ。だから一つだけで。これを使えば、どの世界にだって行けるよ。それが・・・・・・例え、
時の狭間でも!」
「!!それって・・・!」
「私が一つになったのは、私とだけ。時壊兎はまだ存在してるよ」
「ああ・・・ああ!ありがとう!!ミーニ!!有難く使わせてもらうよ!」
「お前たち、もう別れは済んだか?」
「へえ、君も気、使えるんだ?」
「優秀だからな。では、申請するぞ」
ゼウス・ワンは目を閉じ、意識を集中する。
・・・・・・・・・・・・。
長い。距離?が遠いから時間が掛かっているのかもしれない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
まだか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「おい」
「ゼウス・ワン?どうしました?」
「・・・・・・通じない」
「通じないとは?」
「ジェネラル、お前はどうだ?」
ジェネラルも目を閉じ、試みる。だが、
「失敗しました」
「やはりか・・・・・・」
「どういうこと?ジェネラル、君はさっきまで通信できてたんじゃないの?」
「何かあったのかもしれんな」
「何かって何だ?白紙界の外のことは何も知らないから分からないんだけど」
教えてもらおうとしたが、ゼウス・ワンは考え込んでしまった。
「元の世界に戻りたいなら、方法はあるが?」
突如そう言いだしたのは、青髪の女ヒサメだ。
「見ろ、きたぞ」
指差す方を見ると、こちらに向かってきている一団があった。
「あれは?」
「特殊部隊だ。おい、お前たちよ」
一団は一斉に足を止める。
「あなたは・・・・・・北の大妖怪のヒサメ様ですね?はい、何でしょう?」
「こいつ等に作戦の概要を説明してやってくれ」
「はあ・・・ですが、この者たちは・・・」
「構わん。こいつ等にはもう、戦う意思は無い。むしろ、元の世界に帰ることを望んでいる。」
「・・・分かりました」
特殊部隊の隊長らしい者が説明する。
「なるほど。まずその武器で殴られて白紙界に行った後、もう一度こっぴどくぶちのめされれば帰れるってことだね!・・・って、何か嫌な帰り方だな」
「ですが、それ以外に方法はありません」
「仕方あるまい」
「では、私たち四人にその武器を」
「いいえ」
だが、ジェネラルは首を振る。
「このジェネラルには帰還命令は出ておりません」
「出てないと言ったって、この世界に留まるわけにもいかないだろう?」
「・・・いや、いい。ジェネラル、お前はここに残れ」
「はい」
「いいのかい?」
「ゼウス・ワン、何か考えがあるのですね?」
「・・・三人だ。我等三人を飛ばせ」
「分かりました」
ゼウス・ワン、エミエル、エルメに武器が当てられ、その場から消え去った。




