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黒翼のカナエル  作者: 氷花
プロト・ゼウス編
232/240

帰還命令

「お前は・・・『ジェネラル』か!ここまで成長している個体がいたとはな。だが何故だ?何故こうも大人しい?戦いを止める命令など出していないはずだが」

 すると、その隣にいた青髪の女が一歩前に進み出る。

「ほう。ということは、お前がこいつ等の主か。こいつがお前に話があるらしい」

「話だと?そいつが?」

 赤髪の少女が天使の少女に向かって合図を送る。

 その天使は杖を取り出す。

「では・・・我、命ず。ジェネラルよ、その意思を示せ!」

「・・・・・・ゼウス・ワンに通達します」

「喋っただと!?」

 ソルジャーたちはただの兵力として創り出され、命令に従うだけで、そこに意思など存在しないものだと思っていた。いや、それよりも、

「通達とは何だ?」

「プロト・ゼウスと共に帰還せよ、とのことです」

「帰還命令・・・?」

 何故直接自分に伝えてこない?気が付かなかったのか?・・・ともあれ、

「ここまで、か・・・・・・プロト・ゼウスよ」

「はい。従います」

 エミエルは迷い無く頷く。

 その隣で、エルメは頭を悩ませていた。

「なあ、帰還するって言うけどさ、方法はあるのかい?僕はセクテの力でこられたけど・・・セクテはいなくなっちゃったし・・・・・・帰ろうにも帰れないんだよね」

「一緒に連れ帰って欲しいと」

「そもそも、君たちはどうやってこっちにきたんだい?時の力を使える訳でもないだろうにさ」

「お前たちは世界線を移動する力を白紙界の中で使用しただろう?白紙界で起こったことは自動的に解析され、再現できるのだ」

「ああ、それで・・・・・・って、ちょっと待てよ・・・・・・」

 エルメは重大な事に気が付いた。

「ということは結局、君たちもセクテの力を再現してやってきただけで、帰る方法は・・・!おいまさか、帰る方法を持たずにきたの!?」

「いいや、白紙の書の力を使えば可能だ。元々白紙界から移動してきた訳だからな。戻す事も可能だ。申請すればよいだけだ」

「そっか・・・」

 エルメは胸を撫で下ろす。

「では、ゼウス・ワン。今直ぐ帰還を申請しますか?」

「ああ、たの」

「待って!」

 言葉を遮り、特徴的な長い耳を持つ少女がやってくる。

「お前は・・・!ミー」

「ミーニ!!」

 またも声を遮り、突然現れた黒髪の女がミーニを抱き締める。

「ミーニ・・・無事でよかった・・・」

「あう・・・シツライさん、きてくれてありがとう」

 更にハワーや皆まで出てきていた。

「ハワー・・・皆さん・・・」

「帰っちゃうんだね・・・・・・」

「・・・はい」

「そっか・・・・・・でもよかった!」

「?」

「だって、今のエミエルちゃん、とってもいい顔してるんだもん!やりたいこと、やれたんだね!」

「はい!お陰様で、もっとしたいことも見つかりました!」

 エミエルは満面の笑みを浮かべて見せた。

「えへへ、そっか!」

 ハワーもまた、満面の笑みを返す。

「エルメちゃんも帰っちゃうんだねえ」

「はい。セイムにはリベンジもしたかったですけど、ね」

「ごめんねえ。結局、大して何も力になってあげられなかったねえ」

「いいえそんなこと!シュリさんにはずっとお世話になりっ放しですよ!・・・ほら、これとか!」

 エルメは袋から玉を一つ取り出して見せる。

「ははは。それは元々私が考案したものじゃないんだけどねえ」

「それでも!です!」

「ふふっ!ありがとうねえ」

「エルメさん」

 そこへ、シツライから解放されたミーニがやってきて手を差し出す。

「これ・・・」

 エルメも手を差し出し、一つの玉を受け取る。

 それには既に何かしらの魔法が込められていた。

「これは・・・?」

「望めば、どんな場所にでも行ける玉だよ」

「へえ・・・時の力ってやっぱりすごいんだね」

「うん、すごいよ。だから一つだけで。これを使えば、どの世界にだって行けるよ。それが・・・・・・例え、

時の狭間でも!」

「!!それって・・・!」

「私が一つになったのは、私とだけ。時壊兎はまだ存在してるよ」

「ああ・・・ああ!ありがとう!!ミーニ!!有難く使わせてもらうよ!」


「お前たち、もう別れは済んだか?」

「へえ、君も気、使えるんだ?」

「優秀だからな。では、申請するぞ」

 ゼウス・ワンは目を閉じ、意識を集中する。

 ・・・・・・・・・・・・。

 長い。距離?が遠いから時間が掛かっているのかもしれない。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 まだか。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「おい」

「ゼウス・ワン?どうしました?」

「・・・・・・通じない」

「通じないとは?」

「ジェネラル、お前はどうだ?」

 ジェネラルも目を閉じ、試みる。だが、

「失敗しました」

「やはりか・・・・・・」

「どういうこと?ジェネラル、君はさっきまで通信できてたんじゃないの?」

「何かあったのかもしれんな」

「何かって何だ?白紙界の外のことは何も知らないから分からないんだけど」

 教えてもらおうとしたが、ゼウス・ワンは考え込んでしまった。

「元の世界に戻りたいなら、方法はあるが?」

 突如そう言いだしたのは、青髪の女ヒサメだ。

「見ろ、きたぞ」

 指差す方を見ると、こちらに向かってきている一団があった。

「あれは?」

「特殊部隊だ。おい、お前たちよ」

 一団は一斉に足を止める。

「あなたは・・・・・・北の大妖怪のヒサメ様ですね?はい、何でしょう?」

「こいつ等に作戦の概要を説明してやってくれ」

「はあ・・・ですが、この者たちは・・・」

「構わん。こいつ等にはもう、戦う意思は無い。むしろ、元の世界に帰ることを望んでいる。」

「・・・分かりました」

 特殊部隊の隊長らしい者が説明する。

「なるほど。まずその武器で殴られて白紙界に行った後、もう一度こっぴどくぶちのめされれば帰れるってことだね!・・・って、何か嫌な帰り方だな」

「ですが、それ以外に方法はありません」

「仕方あるまい」

「では、私たち四人にその武器を」

「いいえ」

 だが、ジェネラルは首を振る。

「このジェネラルには帰還命令は出ておりません」

「出てないと言ったって、この世界に留まるわけにもいかないだろう?」

「・・・いや、いい。ジェネラル、お前はここに残れ」

「はい」

「いいのかい?」

「ゼウス・ワン、何か考えがあるのですね?」

「・・・三人だ。我等三人を飛ばせ」

「分かりました」

 ゼウス・ワン、エミエル、エルメに武器が当てられ、その場から消え去った。

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