エルメとエミエル
「勘違いするんじゃないぞ。僕はただ、相手は完全上位互換で戦いになれば厳しいだろうっていったら、皆に・・・セクテに優しくしてくれた皆に手伝ってやってくれって頼まれただけだ」
「エルメ・・・」
「ただの駒不勢が、我の邪魔をするな!」
ゼウス・ワンがエルメに襲い掛かるが、エルメはそれを全て回避する。
「こいつ・・・!」
「だから僕は、セクテと僕自身のために君を手伝う」
エルメがエミエルに手を差し伸べる。
「・・・すみません。手数をお掛けします」
エミエルはその手を取り、微笑む。
「で、説得はできそうなのかい?」
「いいえ。今の彼女に私の言葉は届きません。故に」
「一先ずは大人しくさせる、と」
「はい」
「吹けば消えるような奴等が頭に乗りおって!貴様等!もう二度と元の世界に帰れると思うなあ!!」
ゼウス・ワンは怒りに任せて最早、当たろうが当たるまいが構わずに光の剣を振り回し、広範囲に亘って光の斬撃を飛ばしまくる。逸れた斬撃は周辺の建物に直撃し、無惨に破壊していく。
「く・・・これ以上は・・・!」
「あ、おい!」
エミエルが飛び回って放たれる斬撃を打ち消し始める。
「あいつ・・・これ以上干渉させないために・・・!」
しかし、幾ら目にも止まらぬ速さで動けるとは言え、全てを捌き切ろうというのは無理がある。そんなことは分かっているだろうに、元を何とかしないとキリが無いことも分かっているだろうに、これ以上町を壊させないために、一つでも多くの斬撃を打ち消そうとしている。
「あいつを説得することがお前のやりたいことだろうに・・・ああ設定されているのか?それとも・・・・・・あれがあいつの『信念』なのか・・・全く!」
エルメは袋を取り出し、その中から幾つか玉を取り出して割る。すると、そこからおびただしい量の鎖が噴き出し、エルメはそれを操って巨大な箱を造り出し、三人を内包する。
「これなら心配ないだろう?」
「・・・はい!すみません!・・・ゼウス・ワン!」
「プロト・ゼウスゥ!!」
再び打ち合いが始まる。
「打ち合いか・・・どう考えてもゼウス・ワンの方が優勢だな。・・・備えておくか。『眼』は空いてるし」
エルメは片目を抑えて何やら唱え、魔法を使用する。
『先見の眼』
そして一つ、大きく息を吐く。
「・・・よし、『見える』な。これ、魔力の消費はバカにならないんだけど、まあいいだろう」
エルメは二人を見据える。
案の定、エミエルは押され、防戦一方になってしまっていた。体勢を崩され、そこへ光の剣が迫る。
「消えろお!!・・・何っ!?」
その一撃を割り込んできた鎖が受け止める。
「このクソ狐がっ!」
エルメは腰に提げていた試験管のようなものを一本取り、握り潰す。
「我の邪魔をするなっ!!」
すると、緑の剣が生成され、その剣で光の剣を受け止める。
「ブラス・ソード!」
突如、剣から突風が発生し、ゼウス・ワンを吹き飛ばした。
「チッ!風の剣か!」
エルメは更にもう一本取り出して砕き、今度は赤い剣を生成する。
「小賢しい・・・!!」
「おい・・・・・・はあ・・・・・・おい、エミエル!」
「!!私の名前を・・・!」
「んなことはいい!それよりも、自分よりも強い相手と戦ってるんだ、相談の一つもしてくれないもんかね?折角、手伝ってやるって言ってやってるのにさ」
「・・・はあ・・・すみません・・・?」
よく分かっていないらしく、口では反省しているが、首を傾げている。
「はあ~・・・」
エルメは額を押さえる。
まあ、こいつはまだ自我に目覚めてから間もないし、その辺、分からなくても仕方ないか・・・
「もういいよ。君は思うように、好きに戦ったらいい。こっちも勝手にサポートさせてもらうから」
「・・・はい!お願いします!」
エミエルは無邪気に礼を述べた。




