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黒翼のカナエル  作者: 氷花
プロト・ゼウス編
228/240

何故

 ナイトの速さを目の当たりにしても、シツライは全く動じる事無く、それどころか完璧に対応できていた。シツライ自身の速さもナイトに引けを取らず、互いに相手の死角を取り合いながらの、静かで且つ激しい攻め合いが続いていた。

 そうこうしている間に、別の場所にいたナイトたちも集まってきてしまった。数に物を言わせ、ミーニを力尽くで奪う気だ。これ以上ゆっくりはしていられない。

「させない・・・『天殺』」

 シツライは雷に特効を付与する力で「天使族」に対する特効を付与する。

 ナイトたちが四方八方から一斉に仕掛けてくる。

 対しシツライは、ただ放電する。

 足元にハイラント邸を覆う結界のようなものがあるため、大技を使うことはできないが、『天殺』を付与した今の雷ならば、少し浴びせてやるだけでも十分な効果を発揮する。

 放たれた雷は少女たちの身体中を引き裂くが如く駆け巡り、あっという間にその意識を奪った。


 ナイトたちが一気に落とされて行く様は、プロト・ゼウスとの戦いの最中であるゼウス・ワンの目にも映っていた。

(何故だ・・・何故これ程までに上手く行かない!)

「ゼウス・ワン。もう不可能です。このまま戦い続けてもミーニを始末するという目的を果たすことはできません」

「黙れ!」

「それを成そうとしているあなたが、一番よく分かっているはずです!」

「!!」

「幾ら無限の兵力があろうと、この世界にはそれをどうにでもできてしまう力が幾つも存在する」

「黙れえ!!できる・・・できるはずだあ!!」

 そうでなければ・・・そうでなければ・・・!

「貴様を倒して我は成す!成し遂げて見せる!!」

 ゼウス・ワンは両手に光の剣を携え、鬼気迫る表情で襲い掛かる。エミエルも同様に光の剣を両手にそれぞれ生成し、受け止める。

「私を倒した所で何も変わらない・・・!」

「うおおおおお!!」

 ゼウス・ワンはエミエルの言葉を打ち消すように叫びながら弾き飛ばし、十字を斬る。

「グランド・クロスゥ!!」

「・・・・・・」

 エミエルはそれを軽々と打ち払う。

「なっ!?」

「信念の揺らいだ今の不安定な状態で十字を斬ってもこの程度です」

「くっ・・・」

「無駄な戦いはもう止めましょう。きっと、私たちがこの世界ですべきことはもう、ない。だから・・・」

「もう、ない・・・?」

 まだ何一つとして成していないというのにか?なのに、『もう、ない』と言うのか?

「ふざけるな・・・ふざけるなあああああ!!」

 ゼウス・ワンが剣を振り回す。

「それでは・・・それでは我は何だと言うんだ!?我は何のために・・・我は代わりの利く貴様とは違う!?唯一無二!!故に・・・故にいいぃぃぃ!!」

 自分に言い聞かせるように声を上げながら乱雑に剣を振るい続ける。

「冷静になって下さい!あなたにはあなたのちゃんとした役割が・・・」

「うるさい!!上からものを語るな!!我は貴様の強化形!!強化天使だっ!!」

 言う通り、基礎能力はゼウス・ワンの方が高い。エミエルができることは全て、ゼウス・ワンにも、より高い練度でできてしまう。冷静さを欠いているとは言え、その猛攻を捌き切れず、エミエルは地面に叩き落されてしまう。

「やはり我の方が上・・・我は優れているのだ!!」

「ぐ・・・!その通りです。あなたは優れている・・・そんなあなただからこそ分かるはずです!真の目的はこれでないことは!!」

「語るなと言っているううう!!」

「くっ!うう・・・!!」

 エミエルは頭上から振り下ろされた渾身の一撃を受け止める。しかし、力の差に押され、片膝を突かされる。

「もう貴様の言葉など効かん!もう二度と喋る事のできないよう、今直ぐ始末してやる!!」

「ぐ・・・んぐぅっ・・・!」

「消えろ!プロト・ゼウスゥゥゥ!!」

 ゼウス・ワンの剣が強い光を纏う。

「光裂斬んんん!!」

 エミエルの剣にヒビが入る。

「ゼウス・・・ワン・・・・・・」

 その時、

「弾けろ、ブラス・チェイン!」

 何かが二人の間に入り込んできたかと思うと、それは突然弾けて突風を巻き起こし、二人を吹き飛ばした。

「誰だ!?」

「あなたは・・・エルメ!?」

「邪魔させてもらうよ。・・・不本意だけどね」

 そこには銀の毛並みを持つ狐が立っていた。

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