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黒翼のカナエル  作者: 氷花
プロト・ゼウス編
227/240

あたたかな光

「さ、三人に勝てる訳ないですってぇ・・・」

 一対一でも勝てる気がしないのに、三人同時になんて相手できる訳がない。

 無理・・・逃げたい・・・怖い・・・でも・・・

(ミカエル様・・・私は・・・!)

 こんな私に目を掛けてくれたミカエル様のためにも、せめて・・・

(せめて、逃げる事だけは・・・!)

 震える手で鎌を握り締め、震える脚で立ち上がり、構える。

(このまま大聖堂の中で暴れられるのは駄目・・・何とか外へ誘導しないと・・・!)

 マールは鎌を大きく振り被り、ナイトたちへ向かって行く。

「うわあああああ!!」

 大声を上げながら突撃し、鎌を振るう。

 ナイトたちはこれを軽々とかわすと、隙だらけのマールの背中に一撃を叩き込む。

(い・・・たい・・・でも、何とか・・・)

 吹き飛ばされはしたが、大聖堂の外に出ることはできた。

 だがしかし、吹き飛ばされ過ぎたのか、ナイトたちは大聖堂の中へ歩いて行ってしまう。奥に倒れている二人を狙っているのか?

(いけない!)

 マールは必死に考えを巡らせる。

(そ、そうだ!)

 大きく息を吸う。

「こ、こらーー!!仲間を呼びに行っちゃうからね!!ミカエル様を呼びに行っちゃうからねー!!」

 ピクリ。

 その声に反応し、ナイトたちが踵を返して向かってくる。

「みんなー!!逃げてーーー!!」

 叫び、そして立ち向かって行く。

(後は私がこの人たちを引き付ければ・・・!)

 相手は三人である上、一人一人が自分なんかよりも遥かに強い。

 マールは三人の動きが全く見えないままに次々に攻撃を叩き込まれ、傷だらけになって行く。それでも戦う事を止める訳には行かない。幾度倒れようとも直ぐに立ち上がる。ふらつく身体で向かって行く。

(今、私が倒れたら・・・他の人の所に行っちゃう・・・私が護らないと・・・!助けがきてくれるまで、私が護るんだ!)

 その時、胸の辺りが不思議と温かくなった。その温かさは全身へと広がって行く。

「あったかい・・・この温もりはまるで、ミカエル様の光のよう・・・・・・」

 そこへ光の剣が迫る。

 ふと、思う。

(これ、よけられそう)

 マールは突然、素早い動きで回避する。そのことにマール自身が一番驚いていた。

(身体が軽い・・・動きも見える・・・!これならまだ、頑張れる!)

 一転、マールはナイトたちの攻撃に対応し始める。とは言え、攻撃を喰らわないようにするので精一杯で、攻撃する余裕はない。それでもマールは落ち着いていた。

(攻撃はしなくていい。自分にできることだけを頑張ればいい・・・!)

 息を吐く暇も無い猛攻が続くが、今のマールには焦りも恐怖心も無かった。

 しかし、体力には限りがある。三人の攻撃に対応し続けるのも限界を迎えてしまう。次第に動きが鈍り始め、ついには攻撃を受け、倒れてしまう。

「くっ!身体が・・・」

 あの温かさも何時の間にか消えていた。

「ミカエル様・・・私は、頑張れたでしょうか・・・ご期待に応えることができたでしょうか・・・・・・私でも、何かの役に・・・・・・」

 光の剣が振り下ろされる。

 ・・・・・・。

 不意に暖かな光を感じる。目を開けると、そこには見慣れた背中があった。

「ミカエル・・・様・・・」

「よく頑張りましたね。立派でしたよ、マール」

「!!・・・はい、ミカエル様・・・!」

「後は任せて休みなさい」

 ミカエルから暖かな光が放たれ、マールはゆっくりと目を閉じた。

「感謝しますよ、貴女方。これでこの子も前に進んで行けることでしょう。・・・さて、貴女方の処遇についてですが・・・」

 ミカエルは翼を大きく広げる。

「オーバードライブ」

 ミカエルの翼が四枚になる。

 ナイトたちが一斉に襲い掛かるが、強い光に阻まれ、剣も届かない。

 ミカエルが光と気迫を纏い、ゆっくりと歩き出す。ナイトたちが思わず後ずさりする。

「恐怖・・・それを感じているという事は、感情が、意思が全く無い訳ではないということでしょうか。それならば」

 ミカエルがナイトたちへ向け、手をかざす。

『覚醒の光』

 激しい光がナイトたちを包み込む。

 光が治まり、ナイトたちは自分の身体を確認する。そして重大な事に気が付く。

 身体を動かす事が、認識する事が、何故だと考える事ができたのである。

「分かりますか?それが『個』というものです。そして、その先にある『自分』という境地を知りたくはないですか?」

 ミカエルはナイトたちに手を差し伸べる。

 ナイトたちは初めての感覚に怯えていた。この何とも言えぬ気持ち悪い感覚から逃れたいが、その方法が分からない。唯一、変化をもたらしてくれそうな存在は目の前にしかいない。

 ナイトたちはすがるようにその手を取る。

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