あたたかな光
「さ、三人に勝てる訳ないですってぇ・・・」
一対一でも勝てる気がしないのに、三人同時になんて相手できる訳がない。
無理・・・逃げたい・・・怖い・・・でも・・・
(ミカエル様・・・私は・・・!)
こんな私に目を掛けてくれたミカエル様のためにも、せめて・・・
(せめて、逃げる事だけは・・・!)
震える手で鎌を握り締め、震える脚で立ち上がり、構える。
(このまま大聖堂の中で暴れられるのは駄目・・・何とか外へ誘導しないと・・・!)
マールは鎌を大きく振り被り、ナイトたちへ向かって行く。
「うわあああああ!!」
大声を上げながら突撃し、鎌を振るう。
ナイトたちはこれを軽々とかわすと、隙だらけのマールの背中に一撃を叩き込む。
(い・・・たい・・・でも、何とか・・・)
吹き飛ばされはしたが、大聖堂の外に出ることはできた。
だがしかし、吹き飛ばされ過ぎたのか、ナイトたちは大聖堂の中へ歩いて行ってしまう。奥に倒れている二人を狙っているのか?
(いけない!)
マールは必死に考えを巡らせる。
(そ、そうだ!)
大きく息を吸う。
「こ、こらーー!!仲間を呼びに行っちゃうからね!!ミカエル様を呼びに行っちゃうからねー!!」
ピクリ。
その声に反応し、ナイトたちが踵を返して向かってくる。
「みんなー!!逃げてーーー!!」
叫び、そして立ち向かって行く。
(後は私がこの人たちを引き付ければ・・・!)
相手は三人である上、一人一人が自分なんかよりも遥かに強い。
マールは三人の動きが全く見えないままに次々に攻撃を叩き込まれ、傷だらけになって行く。それでも戦う事を止める訳には行かない。幾度倒れようとも直ぐに立ち上がる。ふらつく身体で向かって行く。
(今、私が倒れたら・・・他の人の所に行っちゃう・・・私が護らないと・・・!助けがきてくれるまで、私が護るんだ!)
その時、胸の辺りが不思議と温かくなった。その温かさは全身へと広がって行く。
「あったかい・・・この温もりはまるで、ミカエル様の光のよう・・・・・・」
そこへ光の剣が迫る。
ふと、思う。
(これ、よけられそう)
マールは突然、素早い動きで回避する。そのことにマール自身が一番驚いていた。
(身体が軽い・・・動きも見える・・・!これならまだ、頑張れる!)
一転、マールはナイトたちの攻撃に対応し始める。とは言え、攻撃を喰らわないようにするので精一杯で、攻撃する余裕はない。それでもマールは落ち着いていた。
(攻撃はしなくていい。自分にできることだけを頑張ればいい・・・!)
息を吐く暇も無い猛攻が続くが、今のマールには焦りも恐怖心も無かった。
しかし、体力には限りがある。三人の攻撃に対応し続けるのも限界を迎えてしまう。次第に動きが鈍り始め、ついには攻撃を受け、倒れてしまう。
「くっ!身体が・・・」
あの温かさも何時の間にか消えていた。
「ミカエル様・・・私は、頑張れたでしょうか・・・ご期待に応えることができたでしょうか・・・・・・私でも、何かの役に・・・・・・」
光の剣が振り下ろされる。
・・・・・・。
不意に暖かな光を感じる。目を開けると、そこには見慣れた背中があった。
「ミカエル・・・様・・・」
「よく頑張りましたね。立派でしたよ、マール」
「!!・・・はい、ミカエル様・・・!」
「後は任せて休みなさい」
ミカエルから暖かな光が放たれ、マールはゆっくりと目を閉じた。
「感謝しますよ、貴女方。これでこの子も前に進んで行けることでしょう。・・・さて、貴女方の処遇についてですが・・・」
ミカエルは翼を大きく広げる。
「オーバードライブ」
ミカエルの翼が四枚になる。
ナイトたちが一斉に襲い掛かるが、強い光に阻まれ、剣も届かない。
ミカエルが光と気迫を纏い、ゆっくりと歩き出す。ナイトたちが思わず後ずさりする。
「恐怖・・・それを感じているという事は、感情が、意思が全く無い訳ではないということでしょうか。それならば」
ミカエルがナイトたちへ向け、手をかざす。
『覚醒の光』
激しい光がナイトたちを包み込む。
光が治まり、ナイトたちは自分の身体を確認する。そして重大な事に気が付く。
身体を動かす事が、認識する事が、何故だと考える事ができたのである。
「分かりますか?それが『個』というものです。そして、その先にある『自分』という境地を知りたくはないですか?」
ミカエルはナイトたちに手を差し伸べる。
ナイトたちは初めての感覚に怯えていた。この何とも言えぬ気持ち悪い感覚から逃れたいが、その方法が分からない。唯一、変化をもたらしてくれそうな存在は目の前にしかいない。
ナイトたちはすがるようにその手を取る。




