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黒翼のカナエル  作者: 氷花
プロト・ゼウス編
226/240

悪夢

 天使界。大聖堂に残されたマールはひたすらに祈っていた。

「ミカエル様が帰ってくるまで何事もありませんようにミカエル様が帰ってくるまで何事もありませんようにミカエル様が帰ってくるまで何事もありませんように・・・」

 大聖堂に残っているのは自分一人だけという訳ではないが、戦える者となると、その数は数えるほどしかいない。しかも自分はミカエル様直々にこの大聖堂の事を頼まれているのだ、今は不気味に動かない白翼の少女たちが動き出してしまったら戦わざるを得ない。

「あれ?でも、そう言えば特殊部隊の方々が世界中に派遣されるという話だったはず・・・ということはここにも来てくれる!?そ、それなら何とかなるかも!・・・どうか、早く来て早く来て早く来て・・・」

 その時、大聖堂の扉を開け放ち、一人の男が入ってきた。それは門番の一人、ダニエルだった。

「マール!来たぞ!」

「来た!?ついに!?」

「そうだ!ついにだ!・・・ついに、奴等が目覚めたぞ!戦いの準備をするんだ!」

「そっちが来ちゃったー!?」

 大聖堂の外へと恐る恐る出ると、少女たちが立ち上がっていた。

「何か・・・姿が変わってませんか・・・?」

「ああ。奴等、合体しやがったんだ!」

「と言うことはだ。さっきまでの奴等よりも強いだろうから、気合入れろ!」

「う、うう・・・」

 死神族であるマールは不安そうに鎌を取り出し、構える。

 相手の数は三人でこっちも三人。ということは・・・

「一人一体、だな」

「やっぱり・・・・・・」

「数が多いのとどっちがマシか・・・」

 確かに数こそ減ってはいるが、個としての強さは絶対に増しているはずだし、戦いになるだろうか・・・。マールは益々不安に苛まれていく。

 と、少女たちが光の剣を生成する。

「来るぞ!」

 ふと、マールは少女の一人と目が合った。そう思った瞬間には目の前まで迫っていた。

 ただ構えているだけで、準備の整っていなかったマールは軽々と吹き飛ばされてしまう。

「い、痛い・・・あっ!」

 吹き飛ばされて壁に叩きつけられた影響で、大聖堂の壁にでかでかとヒビが入ってしまっていた。

「あ、あわわわ・・・・・・」

 自分が生まれるよりもずっと昔から存在している歴史的な建物にヒビを入れてしまった。この最悪の事態に硬直しているマールの元へ、少女の追撃が迫る。

「ひぃっ!」

 振るわれた光の剣をギリギリ回避する。

「ってあああああああ!!よけちゃったああああああ!!」

 壁に深々と切れ込みが。

 絶望に打ちひしがれる暇もなく、少女は襲い掛かってくる。

「どうしよ、どうしよ、どうしよ、どうしよ・・・・・・」

 マールは必死に考えを巡らせる。目の前の相手ではなく、傷付いてしまった大聖堂のことばかりに。焦り、集中力を欠いた状態で攻撃を裁けるはずもなく、幾度も斬撃を受け、仕舞いには吹きとばされ、再び壁に激突、今度は大穴を開けてしまう。

「あ・・・あ・・・・・・」

 最早言葉も出ない。

 あまりの惨状に動きが止まってしまったマールに光の剣が迫る。

「マール!」

「・・・!」

 光の剣を振り上げた少女をダニエルが後ろから羽交い絞めにし、制止する。しかし、その後ろにはもう一人の少女が迫っていた。

「ダニエル!」

 もう一人の門番パウエルが光の剣を受け止めるが、三人目の少女が競り合って無防備になっているパウエルの腹部に一撃を叩き込む。吹き飛ばされたパウエルは直ぐ後ろにいたダニエルに直撃し、拘束が解けてしまう。その瞬間に少女は抜け出し、三人揃って光を蓄え始める。

「くっ!不味いか!?パウエル!」

「おう!」

 二人は持っている武器に意識を集中する。

「「「グランド・クロス」」」

「グランド!」

「クロス!」

 三人で三つの十字を放つ少女たちに対し、ダニエルとパウエルは二人で一つの大きな十字を斬り、三つの十字を受け止める。

「こ!これは・・・!」

「だめか・・・!」

 大きな十字は押し負け、三つの十字が二人に直撃、大きな爆発と共に大聖堂の奥へと吹き飛ばされてしまう。

「お二人とも!?」

 三人の少女が目の前のマールに標的を絞る。

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