違和感
白翼の女は光の大剣を作り出し、宣戦布告するかのようにその切っ先をヒサメに向ける。
「フッ・・・いいだろう」
ヒサメも氷の剣を作り、同様に切っ先を相手に向ける。
しばし睨み合い、ある瞬間に突然始まった。
氷と光の剣がぶつかり合い、競り合う。剣の強さに差は無い。力の強さは・・・白翼の女がヒサメを弾き飛ばし、続けざまに猛攻を仕掛ける。ヒサメは力に押されながらも、冷静にそれらを捌いていく。
(速さも力もある・・・剣の出来もいい・・・おまけに・・・!)
「瞬光」
目に見えない速度の一振りが氷の剣を弾き飛ばす。
(技もある・・・!)
「閃光斬」
返しの一振りを跳び退いて回避したつもりだったが、剣先から光が伸び、直撃を受けてしまう。
「ぐぅっ!」
体勢を崩されるヒサメ。
一気に押し込む絶好の機会であったが、何故か女はせず、ヒサメが体勢を立て直すまでじっと見ているだけだった。
「ハッ!飽く迄も正々堂々と・・・ってか?この北の大妖怪、なめられているのか?・・・いや、北の大妖怪であるからこそ、正々堂々と戦いたいのだろうと、そう受け取っておいてやろう」
ヒサメは改めて氷の剣を生成する。
女は目にも止まらぬ速さで動ける割に、ヒサメの背後は疎か、側面にも回り込むことはせずに真正面から打ち込んできていた。そうなればヒサメも付き合わざるを得ない。剣を振るう以外の一切の搦め手を使用しない打ち合いが続いていた。
(何だ・・・この感じは・・・?)
打ち合う中でヒサメは違和感を感じていた。
女の力が弱まってきていたのである。バテてきた訳でもないだろうし、何故だ?
ヒサメが少し押し込むと、女の剣はいとも簡単に弾かれ、隙だらけになる。ヒサメはその隙を突かなかった。それどころか、無防備に剣を下ろしてしまう。
「どう言うつもりだ?」
「・・・・・・」
ヒサメが隙だらけになっても、女は攻撃しようとしてこない。しかし、その眼はしっかりとヒサメの姿を真っ直ぐに捉えている。あれは、何かを訴えかけようとでもしているかのよう。聞いていた話では、こいつらには意思は無く、対話はできないらしいが・・・・・・
(あの眼、本当に意思は無いのか?)
ただの操り人形だと言うのなら、今のこの状況で攻撃を仕掛けてこない理由が分からない。
「お姉ちゃん!」
そこへ、流石に様子がおかしいと感じたエンジュが駆け寄ってくる。
「どうしちゃったの?」
「分からない。何かを訴えたそうには見えるんだがな」
「ん~・・・・・・」
エンジュが近付いて行くが、やはり女は何もしない。ただ目線をエンジュへと移す。
「・・・確かに。何が言いたいのかは分かんないけど。・・・・・・こんな時、あの子・・・ラキエルちゃんの命令の力があれば何とかなるのかな・・・」
「それだ!!」
「え!?それだって、まさか・・・」
「行くぞ!!こいつを連れて!」
「ええー!?自分で言っといてなんだけど、本当に行くの!?」
「当然だ。このままにしとくのは気持ち悪いだろ?それに・・・この無口で不器用な感じ、誰かにちょっと似ててな」
「・・・うん、そうだね!放っておけないよね!分かったよ、行こう!・・・そうだ私、皆に事情を説明してくるね!」
「ああ、頼む」
エンジュが城へ駆けて行く。
「お前・・・何か伝えたい事があるのか?・・・もしもあるのなら、我等に付いてこい。お前の意思を、言葉を引き出してやる」
女は頷く事もしなかったが、二人が歩き出すと、その後を付いて歩き出した。




