竜王の意地
残り一人となり、連携も取れなくなったナイトは数に押され、次第に追い込まれていく。それでもナイトは全く逃げる素振りすらせず、戦い続けていた。
最早、決着が付くのも時間の問題だった。本来ならば喜ばしい状況だったが、一人、竜王メアトリスだけは複雑そうにその様子を見つめていた。
「メルリアの奴め、しっかり指揮執りやがって・・・。普段は抜けてる癖に、やろうと思えばできるってか?くそったれめ・・・」
メアトリスは悪態を吐きながらゆっくりと立ち上がる。
「竜王様?」
「治療はもう十分だ。感謝するぞ」
「竜王様、もしや戦いに赴かれるおつもりで?このまま座していても直に決着が付きそうですが・・・」
「放っておいても付くだろうな。・・・だが、それじゃあ俺の気が済まねえんだよ!」
メアトリスは戦いの場へ飛び出していく。
「メル!」
「姉上!?」
「あいつの相手は俺がする!」
そしてそのままナイトへと向かっていく。
「うらああっ!」
勢いに任せて拳を振るうが、やはりかわされる。幸い、他の連中がいるお陰で反撃はされなかった。
「姉上!一人で出過ぎじゃぞ!」
「うるせえ!文句なら終わった後で幾らでも聞いてやるよ!」
メルリアが注意するも、メアトリスは全く聞く耳を持たず、また突っ込んでいく。
「むう・・・仕方の無い姉上じゃのう。・・・皆すまぬ!共に姉上のフォローをして欲しいのじゃ!」
メルリアたちは、猛進していくメアトリスがナイトから反撃を受けないように立ち回る。
ナイトは、そんな周囲の動きを理解したのか、迎え撃つ姿勢を見せる。
「そうこなくっちゃあなあ!行くぞお!・・・竜拳!」
メアトリスの竜化させた拳とナイトの光の剣が正面からぶつかり合う。
「チィッ!」
光の剣の鋭さが勝り、メアトリスの拳の鱗に傷を刻み込む。
「やはり硬度がたりねえか・・・!」
ナイトの更なる連撃を何とか防いでいくも、その度に傷が刻まれていく。
(ふざけるな・・・!何時までこんな醜態を晒し続ける気だ!これだけお膳立てしてもらっておいてこの体たらく・・・何もかも俺の鱗が弱えせいだ・・・!!)
「竜化」は自身が本来持つ鱗を纏わせる技術。例え顕現したとしても、あの光の剣を無傷で受け止めることはできない。それどころか、顕現してしまえば身体そのものが大きくなり、いい的だ。
顕現すれば、魔力や力は強くなるが、小回りが利かなくなる。・・・そう、その「顕現」の弱点を補っているのが、メルリアの「部分顕現」だ。メルリアの奴に見つかって、気持ちの悪いにやけ顔で何やらと言われるのは腹が立つし、隠れて練習はしてはいたが、メルリアのように自在に、素早く部分顕現を成功させる事はできなかった。悔しいがあれが俺には無い、あいつの才能という奴なのだろう。
・・・ならば、俺には何ができる?俺「だけ」のものって何だ?・・・・・・。
(あ~腹立ってきた。直ぐに思い付かないのが腹立つぜ!・・・・・・)
ふと思った。上手く部分顕現させることこそできないが、顕現するための魔力を身体の一部分に集中させることはできる。
(・・・これだ!)
メアトリスの身体を囲うように魔力の輪が六つ、現れる。
「姉上!?顕現する気かの!?」
しかし、姿が変わる様子は無い。
(全身を顕現させる魔力を腕に集中させる・・・)
輪が両腕それぞれに三つずつ移動する。
「!!」
その時、メアトリスの腕が光の剣を弾いた。
ナイトが一瞬怯んだ隙を突き、両腕を掴む。
「へっ!漸く捕まえたぜ?」
と、周囲に無数の光の短剣が生成され、メアトリスの竜化していない部分に次々に突き刺さる。
「っぐう・・・!」
それでもメアトリスはナイトの両腕を離さない。
「そろそろ終わりにしようぜ・・・なあ!!」
メアトリスは大きく息を吸い込む。
「!」
それがブレスの予備動作だと直ぐに察したナイトは、一本の大きな光の剣を生成する。が、
「メガブレス!!」
ブレスの方が早かった。
超至近距離からのブレスを受け、ナイトは空高く打ち上げられる。それをすぐさま追いかけ、追いついたメアトリスは、右腕に輪を六つ全て集中させ、引き絞る。
「一発・・・ブン殴らせろやあ!!竜王拳!!」
魔力で極限まで強化された拳がナイトの顔面を打ち抜いた。
ナイトは天空から一瞬で地面に叩きつけられた。
「満足・・・とは行かねえが、これくらいにしといてやる・・・」
地面に叩きつけられ、動けないナイトへ武器が当てられ、その場から消える。
それを確認し、メアトリスはゆっくりと地面に降り立つ。
「姉上。無茶し過ぎじゃぞ」
メルリアが少しふら付くメアトリスの身体を支えつつ、優しく声を掛ける。
「・・・うるせえ」
「ぬふふ。今は大人しく休むのじゃな。後はわし等に任せておくのじゃ」
「・・・チッ」
「皆よ!まだ新手がやってくるやも知れぬ!怪我をした者は治療を受け、そうでない者は見張りに当たるのじゃ!」
メルリアが皆を纏め、指揮している姿を面白くないと思いつつも、メアトリスは結界内へと退避した。




