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黒翼のカナエル  作者: 氷花
プロト・ゼウス編
219/240

不甲斐無い!

 メアトリスは倒れる事こそしなかったが、胴体に大きく刻まれた傷口から出血していた。

「チッ・・・中々やるじゃねえか・・・」

「あ、姉上!?」

「騒ぐな!自分の事に集中しろ!」

「じ、じゃが血が・・・」

「くるぞ!」

 ナイト二人が挟み込むように向かってくる。

 メルリアは翼を顕現させ、メアトリスを包み込む。

「わしが護るのじゃ!」

「メル、お前・・・!」

 ナイトたちの光の剣がメルリアの翼を切り刻んでいく。

「ぐ・・・ぐぬぅ・・・!」

「メル!お前まで傷を負ってどうする!?」

「あ、安心するのじゃ・・・!わしは打たれ強いからのう!ふふふ・・・」

 メルリアは汗を滲ませながらも、必死に笑ってみせる。

「強がりやがって・・・全く、情けないことだ・・・!」

 こんな傷を負わされ、妹にまで護ってもらうとは・・・

「竜王様ー!メルリア様ー!」

「む?この声は・・・姉上!皆が助けにきてくれたようじゃぞ!」

 防戦一方の二人の元へ、特殊部隊と、結界内に待機していた大勢の人々が集い、二人を護る体勢を取る。

「お二人共!ご無事ですか!?」

「すまぬ。わしは大したことはないが、姉上は出血しておる。誰か、治療をお願いするのじゃ」

「それなら私が!」

 一人の女性が魔法を使用し、傷の治療を開始する。

「傷の程度はどうなのじゃ?」

「幸い、深くはないようです。これならば直ぐに止血できそうです」

「うむ、頼むのじゃ」

「はい!お任せ下さい!」

 メルリアはメアトリスの様子を確認すると立ち上がり、戦いの場へ戻って行く。

「皆、すまぬ!助かったのじゃ!あ奴等はとんでもなくすばしっこい・・・どうか、皆の力を貸して欲しいのじゃ!」

「はい!もちろんです!メルリア様!」

「目的は特殊部隊の持っておるあの武器をあ奴等に当てることじゃ。皆でその隙を作ろうぞ!」

「おおー!!」

 メルリアが皆を纏め立ち向かっている。

(だというのに俺は・・・竜王っつー立場でありながらこの体たらく・・・!!)

 メアトリスは歯を食いしばる。あまりの情けなさ、不甲斐無さに思わず身体に力が入る。

「竜王様、いけません!力んでは傷口が開いてしまいます!」

「!・・・悪い・・・・・・(何をしているんだ俺は・・・俺は竜王だぞ?竜たちの頭で、この大社を取り纏めているんだぞ?冷静さを失うな!・・・考えるんだ・・・俺にできることを・・・!)」

 二人のナイトに対し、大勢で向かって行く。相変わらずの速さで攻撃をかわし続けるナイトたちだが、明らかに反撃を行う頻度が減っていた。

「もう一押しと言ったところじゃな。・・・うむ。となれば、今こそこれを使う時であろう!」

 メルリアは小袋を取り出すと、その中から一つ選び、手に取る。

「セイムよ、お主の魔法・・・借りるぞ!フォルムバール・フェアシュテルカ!」

 丸い玉を握り潰すと、メルリアの周囲に魔力の帯が漂い始めた。

(二人同時には無理じゃ・・・まずは確実に一人を狙うのじゃ!)

 メルリアは片方に標的を絞り、準備をしつつ、機を伺う。

 狙い所は反撃のために動きを止めるその一瞬。

 ある者が仕掛け、ナイトがかわす。そこへ直ぐにまた別の者が仕掛け、それをまたナイトがかわす。かわす、かわす、かわし、少し距離を取って攻撃の構えを取る。

「今じゃ!」

 一気に魔力を込めてナイトの周囲に大量の帯を作り出し、見事にナイトの一人を取り囲む。更に帯を重ねて行き、直ぐには出られないよう分厚く補強する。

「皆よ、今からあ奴を叩き落す!フォローを頼むのじゃ!」

 メルリアは飛び上がり、ナイトの一人を包み込んでいる帯の塊の上空へ移動する。

「行くぞ!」

 一気に降下し、目一杯に引いた右腕を打ち出すと同時に顕現させる。

 もう一人のナイトが妨害を試みるが、阻まれ、届かない。

「真・竜拳!!」

 メルリアの巨大な拳が帯の塊を捉え、そのまま地面まで一直線。帯の炸裂も相俟って、大量の砂埃を巻き上げた。

 メルリアが翼を羽ばたかせて砂埃を払うと、ナイトは伸びていた。

「お主等!」

「はい!只今!」

 特殊部隊の数人がやってきて伸びているナイトに武器をあてがう。すると、そのナイトはその場から消えてしまった。

「ふう。これでよいのじゃな?」

「はい、そうです!」

「うむ。では後一人じゃ!」

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