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黒翼のカナエル  作者: 氷花
プロト・ゼウス編
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奮闘

 一部隊に編成されている隊員の数は大体十人前後。その中には様々な種族の者がおり、それぞれが天才やら秀才やら才能ある者と言う訳でもない。それどころか、運動が苦手だとか勉強が苦手等など、普通よりも劣っている者までいる。それぞれ能力に差はあれど、世にために戦いたいという想いは同じ。入隊して直ぐに部隊は編成され、その後の訓練から日常生活まで共にしていく。その中でそれぞれが自分の役割を見つけて行くのである。

 ナイトの動きは速く、その姿を的確に捉えられる者はいない。円状に陣形を取り、中央に魔力を持つ隊員を配置、陣形の頭上に障壁を展開する。

「みんな!自分の正面だけに集中しろ!少しでも隙を見せればそこを突かれるぞ!」

 隊長の指示に従い、自身の目の前に集中する。

 しかし、それでも相手の速さに反応が間に合わず、次第に陣形が崩されて行く。

「くっ!堪えるんだ!・・・一発・・・一発でいいんだ・・・この剣を当てられれば・・・!」

 目的はあの少女を第六世界へと送る事。そのためには一度、この剣を当てるだけでいいのだが、あの速度ではとても当てられない。

「ひぃっ!た、隊長!どうしましょう~!」

「適当に振り回してたら当たったりして~」

「それでは困るな。張り合いが無くなってしまうからな」

「そんな強者っぽい台詞を吐くくらいならこの状況を何とかして下さいよ・・・」

「・・・ええい!いつまでもこんな所にいられるか!俺は突っ込むぞお!!」

 一人が勝手に陣を離れて行ってしまう。

「あっおいっ!・・・あいつめ・・・仕方ない、皆!フォローするぞ!」

「オラァかかってこいよお!相手してやるよお!」

 男は虚空に向かって威勢を放つ。

「ビビッてんのかあ!?」

「馬鹿!後ろだ!」

「何ぃ!?ぬおおっ!」

「はああっ!」

 別の男が攻撃のために一瞬足を止めたナイトに対して剣を振るうが、姿が消え、当たらない。

「くそったれ!」

「大丈夫か!」

「こんなもん、掠り傷だ・・・」

「ねえ~、あっちいるよ~」

 指差す方には確かに、ナイトが地面に立ちつくしていた。

「へっ!漸く観念しやがったか・・・」

「そんな訳ないでしょう・・・」

「観念するならこっちだよね~」

「あのぅ・・・なんだか・・・すっごく光ってますけど・・・」

 ナイトが急激に光を蓄えていた。

「まずい!総員、防御体勢!!でかいのがくるぞー!!」

「撃たせるかってんだ!これでも喰らいやがれい!!」

 男がナイトに向かって武器を放り投げる。

 しかし、ナイトは光を蓄える片手間に光弾を撃ち出し、それを弾く。

「ちぃっ!駄目か!」

「閃光」

 太い光の柱が放たれる。

「くうううっ!障壁がっ・・・持ちません!!」

「耐えろ!耐えてくれ!!」

 複数人で張った強固な障壁だったが、直ぐにひびが入り、全体へと広がって行く。

「くそっ!万事休すか・・・!」

 その時だった。

「ん・・・?」

 突然光が弱まり始め、遂には消えてしまった。

「た・・・耐え切った・・・?」

「あれ、見て~!」

 ナイトがどう言う訳か、頭を抱えて苦しんでいた。

「何だ・・・?いや、何でもいい!今が好機だ!包囲しつつ掛かれ!!」

 ナイトは苦しみながらも片手に光の剣を創り出し、迎え撃つ意志を見せる。しかし、多勢に無勢。万全でない状態ではその全てを捌ききることはできず、遂に隊員たちの武器がナイトの身体を捉えた。

「・・・!?」

 すると、ナイトは消えるようにその場からいなくなった。

「・・・これで・・・いいんだよな?・・・できたんだよな・・・・・・?」

 突然の逆転劇に現実感が無く、半信半疑になってしまう。

「おおおっ!俺たちの勝利だぜええっ!!」

「お~」

 武器を掲げ、抱き合い喜ぶ隊員たち。と、

「あの!」

「・・・お?」

 聞きなれない声が聞こえ、その声のした方を見ると、そこには緑の狐の少女がいた。

「君は?・・・もしや、逃げ遅れて隠れていたのかい?」

「あっちの二人の事、手伝いには行かれないんですか?」

「はっ!そうだった!皆!浮かれている暇は無い!竜王様たちの援護に向かうぞ!!」

 援護に向かうため、隊員たちは大社を覆う結界を登り始める。

「君は早く結界内に避難して・・・って・・・・・・いない・・・?」

 振り返ると既に緑の狐の少女の姿はそこには無かった。

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