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黒翼のカナエル  作者: 氷花
プロト・ゼウス編
215/240

変化

「おお、あなたは!こちらにいらっしゃるとは珍しいですね」

「ヒイカさんはこの方をご存知なのですか?」

「はい。この方は『兎さん』ですよ」

「初めまして!うさちゃんだぴょん~」

「は、はあ・・・・・・」

 何の情報も得られない紹介に誰もがぽかんと言葉を失う。

 そんな周囲を余所に、知り合いらしい二人は話を進める。

「それで今日はどうされたのですか?」

「そうぴょん!さっきの話の続きぴょん!」

「さっきの、とは・・・」

「ミーニぴょんが取り引き材料になるという話ぴょん」

「ぴ、ぴょん・・・」

「それはだめなの!」

「勿論、本人が行くのは駄目ぴょん。だから、代わりに私が行くぴょん~」

「え・・・?」

 確かに、どちらも兎なのだろうが・・・・・・どう考えても取り引きに行くというよりは、喧嘩を売りに行こうとしているとしか思えない。

「疑ってるぴょん?」

「う、うたがうというか・・・そもそも何をするつもりで・・・?」

「勿論、取り引きぴょん!」

 目の前の珍妙な兎のぬいぐるみは自信満々に胸を張る。

「あ・・・やっぱりそうなんですね・・・・・・でも、いくらなんでも無理がある気が・・・・・・」

「ぐふふ・・・心配ないぴょん・・・ちょっと触るぴょん」

 兎のぬいぐるみは怪しげに笑いながらミーニの頭頂部にぽんと手を置く。すると、兎のぬいぐるみの額の一部が真っ赤な光を放ち始める。

『トレイス』

 その瞬間、兎のぬいぐるみの姿が大きく変化する。

 新たに成形された姿は驚く事に、ミーニと瓜二つだった。

「え・・・えええええ!?」

「へ、変身魔法というやつですか!?」

「えへへ、似てる・・・かな?」

「!?し、しゃべり方も声もミーニちゃんと同じ!?」

「それだけじゃない、感じる魔力の量や質なんかも同じ・・・!これ程までに錬度の高い変身を見たのは初めてだ・・・!でも、今のは本当に魔法なのか・・・?」

 呪文らしきものは口にしていたが、エルメには魔法を使用していたようには見えなかった。

「でも、これなら確かに、ミーニさんの代わりになれそうですね」

「うん・・・・・・」

 そうだとしても、ミーニは自分自身で何かをする訳ではなく、結局他の人に頼る事になっているため、複雑に感じていた。そんなミーニに瓜二つの姿となったそのミーニが言葉を掛ける。

「そんな顔しないで。人にはそれぞれ、すべき事、すべき時があるものだから。だから、その時に頑張ったらいいんだよ」

「その時に頑張る・・・・・・うん、ありがとう。それと・・・お願いします!」

「任せて!・・・それじゃあ、行こっか。えっと・・・」

「わ、私は、ゼ、ゼ・・・プ、プロト・ゼ・・・」

「エミエルちゃんだよ!」

 自らをどう表していいのか悩み、言葉に詰まる少女の代わりに、ハワーがその名を口にする。

「あなたはエミエルちゃん、だよ!例え、過去にどれだけのあなたがいたとしても、私たちが知っているのはあなただけ・・・エミエルちゃんだけなんだから!だから・・・もっと今の自分に自身を持ってよ!エミエルちゃんに代わりはいないの・・・あなたはたった一人のエミエルちゃんで、私たちの友達なんだから、ね!」

「とも・・・だち・・・!」

 その言葉に、エミエルは身体の中が不思議と温かくなるのを感じた。


 白翼の少女たちを統括するゼウス・ワンの元に、多数のソルジャーたちから状況の変化の報告が届いていた。

「この短時間で策を講じてきたか・・・これ以上ゆっくりもしていられないか。ソルジャーたちよ!」

 その呼びかけに、複数の白翼の少女が集まってくる。

「その光を集わせ、より強く輝くがいい!」

 ゼウス・ワンが合図を送ると、少女たちの身体が光に包まれる。そして光は集まり、一つとなって、

新たに姿を成す。

 それは、少女の頃の面影を残す、少女が少し成長した姿だった。

「世界中のゼウス・ナイトよ、邪魔者を蹴散らせ。お前は共に、そろそろあの鬱陶しい壁をぶち壊してやろうじゃないか」

「・・・通す気はありません・・・!」

 と、そこへ、屋敷の中からミーニが出てくる。少女と共に。

「ミーニさん!?」

 驚くフュクシンに、そのミーニは目で合図を送る。

「・・・・・・」

 フュクシンは理解したのか、小さく頷く。

 そのミーニはフュクシンの張る気の壁を抜け、ゼウス・ワンの眼下へとやってくる。そしてそれを庇うように少女が立ち塞がる。

「・・・今更何のつもりだ?プロト・ゼウスよ」

「取り引きを・・・しにきました」

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