起動
亜獣人界・育みの里。第六世界研究所では突如として現れた少女たちへの対応策が整いつつあった。
「第六世界影響範囲、最大。エネルギー充填完了。いつでも起動できるっすよ!」
研究員モリトが計器を読み取り、準備が整った事を伝える。
そこへミカエルが到着する。
「丁度よいタイミングだったようですね」
「ああ、ミカエル様。ミカエル様もいらっしゃいましたし、今一度作戦の概要を確認しておきましょうか。グル、お願い」
指名された、所長であるグルが説明を始める。
「まずは、第六世界起動後、各界に存在するゼウス・ソルジャー及び、それらを統括するゼウス・ワン
全てを第六世界へと移動させます。その方法ですが・・・」
グルが目配せすると、研究員エルビナが台車に武器を乗せ、運んでくる。その武器の刀身は丸くなっており、殺傷能力は低そうだ。
「こちらは研究開発局の特別製で、リンナ様のお札を武器にセットすることで、刀身にその力を宿らせることができ、本来は一枚に付き一度きりのお札の力を複数回発現させる事ができます。そのお札の効果ですが、武器にセットするお札を『子』とすると、別に『親』となるお札がありまして、『子』の力を受けたものを『親』の元へと転移させるという効果があります。ですので、予め『親』のお札を第六世界へと持ち込んでおきます。そうして全ての来訪者たちを第六世界へと移動し終えた後は、そこで第六世界の力も使い、決着を付けます」
「その役には誰が当たりますか?」
「強化獣人のポンポコさんお一人です」
「それならば、何ら問題はありませんね」
「その他、気になる点など御座いますか?・・・・・・無ければ、作戦を開始したいと思います」
研究所の外では、機動部隊の隊員たちがお札の力を宿らせた武器を携え、整列していた。その視線の
先には、隊員たちを指導し、皆からは「師」とも呼ばれ尊敬し、慕われている強化獣人のポンポコの
姿があった。
普段は人見知りがちで、気弱な印象の彼女だが、一度、訓練や戦闘に入ると一変。あらゆる武器や武術を使いこなす、武の達人となる。そのギャップも相俟って、訓練外の時にはちゃん付けで呼ばれるなど、とても親しみやすいということもあってか、年々ポンポコの指導を受けたいと、入隊を希望する人が増え続けている。そんな背景もあり、今、ここにはかなりの人数が集まっていた。
「みんな!これから始まる戦いの前に、リンナ様よりお言葉を賜ります!」
用意された壇上に、平和の象徴であるリンナが上がる。
日常生活ではまず会うことも見ることも、その声を聴く事も叶わない人物の登場に、場の空気が一層引き締まる。
「皆さん、この場に集まって下さった事、心より感謝致します。これは実戦であり、この場に居る多くの方々はこれが初めての実戦で、不安を抱えていらっしゃる事でしょう。・・・・・・しかし、皆さんは一人ではありません!周りを見ればそこには仲間が居ます!私が望むのは、皆さんが笑顔で帰って来る事です!現地では既に戦いが始まっています。皆で助け合い、平和な世界を取り戻しましょう!」
おおおおーーーーーー!!
割れんばかりの歓声が上がる。その直後、
『これより、第六世界を起動します。これより第六世界を起動します』
その放送と同時に、研究所の天井が開き、細長い何かの機械が顔を出す。
「総員!配置に付け!」
ポンポコの指示で整列していた部隊が、用意された各界の地区へと向かう簡易転移門の前にそれぞれ素早い動きで移動し、整列する。
そして、
『第六世界、起動!!』
機械の先から光が放たれ、遥か天井まで達すると放射状に世界全体へと広がって行った。
それを確認したポンポコが命じる。
「全体、出撃!!」
隊員たちが次々に転移門を潜り、それぞれの担当地区へと向かって行った。
「私も準備しないと」
「ポンポコさん、平気ですか?」
ポンポコは強化獣人の中でも、トップクラスの実力を誇る。しかし、その強さに肩を並べるベリコとは違い、ポンポコは戦う事は好きではなかった。今回のこの事態においても、決着を付けるという役はポンポコである必要は無かったのだが、どう言う訳か、自分から買って出ていた。
「リンナ様・・・はい、大丈夫です。みんなが戦ってるんです。だから・・・強化獣人の・・・それも、この私が戦わない訳には行きませんから!」
「ポンポコさん・・・頼みましたよ!」
「・・・はい!」
ポンポコは研究所の中へと入ってきた。
「ポンポコ、来たわね。準備をしてくれるかしら」
「はい!」
「ポンポコさん。第六世界内の性質についてですが、中ではどれだけの数、威力の攻撃を加えても身体に傷は付かず、痛みのみが発生するようになっています。そして、気絶させる事によって、元の世界へと送り返す事ができます。この第六世界は外部からの侵入は出来ず、この研究所からのみ中へ入れるようになっており、全ての世界、つまり、エヴァーラスト全体を内包するような形で存在していますから、一度送り返してしまえば、再侵入される恐れはありません」
「・・・了解しました。それでは私も・・・出撃します!」
ポンポコは一人、第六世界へ足を踏み入れる。




