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黒翼のカナエル  作者: 氷花
プロト・ゼウス編
212/240

マールの不安

 天使界の空では、無数の白翼の少女たちに対し、たった一人の天使が戦い、むしろ弄んでいた。

「光拳」

 四方八方から光の槍が一斉に放たれ直撃するが、その天使の女には通用せず、吸収されてしまう。

 ならばと少女たちは接近戦を仕掛ける。

 その速さを生かし、瞬時に背後に回り込んだ。つもりだったが、その場には既にその女の姿は無く、

次の瞬間には背中に打撃を受け、地面に叩き付けられていた。複数で掛かっていっても結果は変わらない。連携を取ろうとも、相手の速度は少女たちを上回り、次々に打ち落とされていく。

 その最中、一部の少女たちが集まって輪を作り、光を蓄える。

「陽光」

 光の柱による熱攻撃を試みる。すると、女の翼が光り輝き始める。

「陽光」

 その瞬間、周辺一帯が激しい光に包まれた。

 光が治まると、少女たちは光によって全身を焼かれ、地面に倒れていた。

 それを空から見下ろす天使ミカエルは考えを巡らせる。

「他の世界線で創られた、光を操る強化天使・・・それらの大元となっているのは私、でしょうか。

しかし、聴いていた目的を達するために創られたにしては、創りが雑、弱すぎる・・・。真意は何処か

別にありそうな気がしてなりませんね・・・・・・今は、取り合えず」

 ミカエルが翼を広げると、その周囲に十字型の光が無数に現れる。

「グレイブ・クロス」

 十字型の光が地面に転がる少女たちの胴体に一本ずつ突き刺さる。

 まだ起き上がろうとする意志を見せていた少女たちだったが、その瞬間にピタリと動きが止まり、

力が抜けたように動かなくなった。


 大聖堂に戻ってきたミカエルを給仕者見習いマールが出迎える。

「ミカエル様!お疲れ様です!」

「マール、進捗は?」

「はい!リンナ様もご到着されたようですので、もうそろそろ整っている頃かと!」

「そうですか。では、私もそちらに向かいます」

 ミカエルが飛び立とうと翼を広げると、

「ええーっ!?」

 マールが素っ頓狂な声を上げた。

「マール?どうかしましたか?」

「あ、あの・・・えっと・・・そのぅ・・・・・・」

「何かあるならはっきりと言いなさい」

「は、はいぃ!えっとですね・・・あの者たちは・・・どうなさるおつもりで・・・?」

 マールの指し示す方には、十字型の光が突き刺さり、ピクリとも動かなくなった少女たちが

無数に転がっていて、正直、怖い。それにもし、ミカエル様がいない間に動き始めてしまったら

と思うと・・・・・・考えたくない。

「動けなくはしてありますが・・・成程確かに。私も彼女たちの全てを知っている訳ではありません。

もしかしたら弱いと言う演技をしている可能性もありますね。機を見計らい、動き出してくる事も

考えるべきでしょうね」

「そ、そうですよね!」

「では、できるだけ早く戻りますね」

 ミカエルはやはり翼を広げる。

「ええーーーっ!?」

 素っ頓狂な声を上げるだけでなく、今度はまるで幼い子供が親に行かないでとせがむかのように

ミカエルの服の裾を掴んでいる。

 ミカエルは小さく溜め息を吐くと、掴んでいるマールの手を掴み、解く。

「マール・・・あなたにも戦いの心得はあるでしょう?給仕者になるための必須科目だったはずですよね?そんな弱気でどうするのですか」

「うう・・・そうですけどぉ・・・・・・私のそれは合格点ギリギリで、自分の身を護る事で精一杯なんです・・・」

 マールは大聖堂という大きな施設で給仕の仕事をしてはいるが、優秀と言う訳ではない。もう何年も給仕者としての資格を得られる試験に落ち続けているのである。それ自体は特段、珍しい事ではないのが、飛び級で卒業して行った伝説の給仕者に憧れを抱いていることもあってか、その人物と自身を比べてしまい、無駄に自分自身への評価を低くしてしまっているのだ。未だに試験に受かる事ができていないのは、そこからくる弱気さ故だという事を、大聖堂に住まう誰もが知っている(知っていても決して本人には教えないことになっている)。

 ふと、ミカエルは一つ、いい考えを思い付く。

 ミカエルは徐にマールの背後に移動し、背中にそっと触れる。その瞬間、マールは身体の中が少し

温かくなるのを感じた。

「ミカエル様・・・?」

「あなたはあなたに出来る事を頑張ってくれればいいわ。私が戻るまではお願いね?」

「は、はい・・・・・・」

 未だ不安そうに見つめるマールを横目に、ミカエルは大聖堂を後にした。

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