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黒翼のカナエル  作者: 氷花
プロト・ゼウス編
211/240

「λ」の城

 創生界では、昨日まで何も無かったその場所に、超が付くほど巨大な建物が建っていた。

 その周辺の空には、無数の白翼の少女たちがその建物を破壊せんと攻撃を続けている。しかし、

この建物、幾ら攻撃を受けてもその瞬間に元通りに修復され、全く倒壊する気配は無かった。

 その建物の内部には、人々が寝泊りする場所や浴場や食堂、思い切り走り回ることができる広場

などなど、生活するに事欠かない設備が整っていた。そんなこともあってか、ここに避難してきた

者たちの多くに笑顔が見られる。

 普段は人の寄り付かない地に住む北の三姉妹もこの事態を受け、加勢に来たのだが、来てみたら

見たことの無い建物が建ってるし、見た所、別に困っている様子でもなかった。それどころか、

にこやかに中へと案内されていた。

「ほえ~・・・すごいもんだね、お姉ちゃん。こんな状況なのに笑ってる人がそこら中にいるよ」

「おのれ・・・我が氷を以ってしてもここまでの物は・・・魔王の妹め・・・・・・」

「お姉ちゃん・・・」

「ヒサメさん方、来て下さったんですね」

 そこに一人の男が声を掛けてきた。

「奴の旦那か」

「はい。加勢に来て下さったんですね、助かります」

「必要無さそうだがな」

「とんでもない。護る事に従事しているからですよ。攻め手には欠けています」

「だといいがな」

「もう、お姉ちゃん!」

「?もしや何か、気に障るようなことを・・・だとしたなら、すみません」

「あ~いえいえ!お姉ちゃんが勝手に僻んでるだけなので!」

「ひ!?ひひひ僻んどらんわい!」

「ははは・・・ま、まあ、こちらへどうぞ」

 その男アゼルに連れられ、中を見回しながら奥へと進んで行く。

「アゼルさん、今ここにはどのくらいの人がいるんですか?」

「そうですね・・・今は創生界の人口の五割程度でしょうか」

「もう五割ですか!?」

 変事が発生してからそれ程時間は経過していないはずだが、それでも既に五割も集まっている

というのには驚かざるを得ない。

「驚きでしょう?私も驚いていますよ。人と人との繋がりの強さが成せる業、ですかね」

「逞しいもんだな」

 やがて、人気の無い場所までやってきた。

「ここです」

 その部屋に入ると、そこには何人かが集まっており、中にはこの建物を創り出した張本人である

ライムの姿もあった。そしてその瞳には「λ」の紋様が浮かんでいた。

「皆、心強い援軍が来てくれたぞ!」

「おお!北の三姉妹か!これは心強いな!」

「来てくれてありがとー!助かっちゃうよ!取り合えず座って座って!」

 何も無かった所にいかにもふかふかして座り心地のよさそうな立派な椅子が三つ、突如出現する。

「ふわあ・・・ふかふかだあ・・・・・・」

 エンジュはその心地よさに思わず声を漏らす。

「くう・・・!これが魔王の妹の力か・・・!ひ、卑怯な・・・」

 ヒサメは気持ちよさそうに全身を椅子に預けながらも、口だけは抵抗する。

 魔王グリムの妹であるライムが得意としているのが「幻術」である。人に幻を見せ、惑わせるのが

本来なのだが、ライムは狐種に伝わる奥義「進化魔法」の「λ」の力により、生み出した幻術に実体

を持たせることができるのである。

「三人も来てくれたし、改めてこれからの事、説明するね。現状、私たちには戦闘はせず、防衛のみ

に従事するようにとの指示が来ています。なので、次の指示が来るまでは、より多くの人をここに

避難させる事に集中しましょう。それで、戦闘の指示が来た場合ですが・・・ヒサメちゃんたちにも

手伝ってもらってもいいかな?」

「・・・勿論だ。協力するために来ているんだからな」

「任せてよ!」

「・・・・・・」

「・・・シツライちゃん?」

「・・・・・・」

 シツライは黙ったまま、虚空を見つめている。椅子が気持ちよすぎるせいだろうか?いや違う。

ここに来た時からずっと、一言も発していない。元々口数は少ないのだが、何も喋らなくても話は

いつもちゃんと聴いていて理解しているし、こんな時に呆けたりはしない。こうなってしまっている

理由は直ぐに予想が付いた。

「心配か?・・・ミーニが」

 シツライは虚空を見つめたまま、コクリと頷いた。

「心配無いだろう。向こうにも腕の立つ奴はいる」

「・・・・・・」

 シツライにもそんな事は分かっているだろう。シツライはきっと自分の手で護りたいのだろう。

「ふう・・・シツライ、行っていいぞ」

「!!」

「ここにはもう十分な戦力があることは明白だ。だが、向こうの状況は分からん。もしかしたら

戦力が足りていないとも限らん。・・・応援に行ってやれ」

 シツライはいいの?と言いたげにヒサメとエンジュを交互に見つめる。

 それに対し、ヒサメとエンジュはニカッと笑ってみせる。

 すると、シツライは勢いよく立ち上がった。

「ごめんなさい・・・」

「そこは、行って来ます、でいいんだよ」

「・・・うん、行ってきます!」

 シツライは駆け出して行った。

「シツライちゃんの分も頑張らないとね!」

「それが姉の務めだ」

「えへへ、そうだね!」

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