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黒翼のカナエル  作者: 氷花
プロト・ゼウス編
210/240

奇妙な兎

 死神界ゼントルム。全世界一の大きさを誇る都市である。

 そんな都市は勿論、外れに位置する山までもを覆う結界ができあがっていた。

 この死神界の統領であるリベラールはその結界を造りだした張本人を天界城に招き入れていた。

「いやー、あなたが近場に居てくれて助かったわー。幾らカテでもこの都市全部を護るのは厳しかったからね」

「御助力、感謝致します」

「みんなの笑顔のために頑張るのは当たり前ぴょん~!」

 そう言いながら、ひょうきんな顔をした二足歩行の兎のぬいぐるみが無駄な動きを伴いながら

手を振っている。

「・・・・・・」

「・・・コホン。現状、全世界に対し、準備が整うまで交戦する必要は無し、との指示が出ています。

なので、えー・・・兎さん?は、引き続き結界の維持をお願いします」

 カテドールもその兎のぬいぐるみに困惑しながらも、指示を伝える。

「は~い!頑張るぴょ~ん!」

「・・・・・・」

 カテドールはすべきかどうか思い悩みながらも、口にする。

「・・・それ・・・脱がないの?」

「脱ぐ?何の事だか分からないぴょん~!」

 兎のぬいぐるみは大袈裟に首を腰から傾げる。

「あ~・・・うん、分かった。もう言わない・・・」

「・・・それで、襲撃者たちについての情報ですが、種族は強化天使。目的は時の兎ミーニの抹殺、

とのことです。当のミーニですが、現在ハイラント邸にて保護中、護衛には強化獣人フュクシンが

付いています」

「フュクシンが付いてるなら安心できるわね」

「・・・・・・」

 兎が急に大人しくなった。

「?兎ちゃん?どうかした?」

「いい事思い付いたぴょん~!」

「いい事って?」

 兎が要らない動きを交えながら「いい事」を説明する。

「成程ね・・・動きのせいで半分位しか頭に入ってこなかったけど、提案してみてもいいかもね」

「ですがそうなりますと、結界の維持に支障が出てしまうのではないですか?」

「心配ないぴょん~!維持するだけなら、自動魔力供給装置があるぴょん。それなら丸一日は持つぴょん」

「しかし、攻撃は続いています。維持は可能でも、破壊されることもあり得るのでは?」

「それも大丈夫ぴょん。もう応援は呼んであるぴょん~!」


 結界の外では、結界を破壊せんと白翼の少女たちの攻撃が続いていた。

 そこへ突然、きらきらとした謎の粒が降って来た。

「?」

 上を見上げるが、空にはそれらしい雲も無いし、誰かがいるようにも見えない。

 と、次の瞬間、粒が爆発し、白い煙を周囲に撒き散らす。

「!?」

 その途端、少女たちはがくんと一斉に落下する。

 結界の上に墜落した少女たちは直ぐに原因を察する。身体のあちこちや翼が凍り付いていたのだ。

「そんな羽じゃあ、もう飛べないでしょ~?うじゃうじゃと鬱陶しいのよね~あなたたち」

 女の声が聞こえる。周囲を見回すが、その姿が見えない。

「ど~こ探してるのかしら~ん?こっちよこっち~っと!」

 突然、空に姿を現した。鮮やかな色と模様の翅を持つ女がそこで笑っていた。

「こ~んなにも美しい翅を持っている私に気付かないなんて、ちゃんとおめめ、付いてるう?」

 少女たちは結界を足場に立ち上がり、反撃を開始する。

 一斉に光の槍を撃ち出すが、女はひらひらと舞い踊るようにかわす。

 ならばと、少女たちは

「光弾」

 一発一発の威力ではなく、複数の弾を広範囲に継続して撃ち続ける。

「おお?おわっとっと!」

 これには女も動きに余裕が無くなっていた。

 ここぞと少女たちは弾数を更に増やす。

 すると女は回避を諦め、障壁で防ぎ始めた。

 少女たちは攻撃範囲を狭め、女の周囲に弾を集中させる。

 障壁を破壊できるのも時間の問題だと思われた時だった。

「!!」

 少女たちは突然息苦しくなり、直ぐに身体を上手く動かせなくなった。

 突然の事態に周囲を見渡すと、何時の間にか黒い気体が漂っていた。

 その霧の中に一つ、見慣れない影があった。

 細い身体に鞭のように長い尻尾、ゆらゆらと怪しくゆらめく触覚のような角を持つ女が立っていた。

 この霧がその二人目の女の仕業だとは直ぐに分かった。しかし、身体はもう動かない。それでも、

少女たちは他の少女たちと情報を共有することはできる。

「他のソルジャーたちに応援を要請・・・」

 少しすると、大勢の少女たちが空に到着した。

「あら~!これは大ピンチかしら~!」

 空の女を完全に包囲し、攻撃を開始しようとした時、

「!?」

 突如として一斉に勢いよく結界の上に叩き付けられた。

 そして応援の少女たちも霧に中てられてしまった。


「うっわー・・・気持ち悪いくらい居るわね、しかも同じ顔ばかり。ね、ヒュード、クリーク」

 雹蝶フリーミがヒュードに向かって手をかざすと、その隣にクリークが突然現れる。

「こんな策を講じる程の相手か?こそこそと・・・我等は七魔だ。正面から叩き潰せばいいだろう」

「この脳筋!単純な力だけが七魔の有り方であってたまるかってーの!頭も使って美しく戦ってかないと、七魔って力だけのバカなんじゃないの?って思われちゃうじゃない!ね、ヒュードもそう思うわよね?」

「別に・・・己らしくあれば、それでいい」

「んもうっ!ほんっとに協調性無いわね~。何よこのチーム。クリークは脳筋の癖に人見知りするし、

ヒュードは何考えてんのか分かんないし」

「御三方とも、お疲れ様です」

 そこに、緑の狐カリナが肩に小さな紫の狐スターシャを乗せ、やってくる。

「んもーっ!やっぱりこのチームの癒しよ!あなたたちは!」

 フリーミがカリナに抱き付く。そして離れ際にスターシャを抱え、撫で回す。

「あ、有難う御座います。とりあえず、この者たちは倒さずこの場で待機で、指示があり次第、

討伐に掛かりますので、その様にお願いします」

「だって、クリーク。勝手なことしないでよね」

「しない。いつも勝手なことをしているかの様に言うな」

「してるじゃない!戦いとなればいつもいつも無駄に張り切っちゃって!この間も・・・」

「あー・・・ちょっとお二人とも落ち着いて・・・」

「いつものこと。放っておいた方がいい。カリナ」

「ヒュードさん・・・ああ・・・はい・・・・・・」

 カリナがこの三人の纏め役としてチームに加わるよう魔王グリムから言われてしばらく経つが、

未だに上手く纏められている気がしないし、これからも期待に応えられるのかと不安を抱えていた。

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