苛立ち
結界の外には、同じ顔をした無数の白翼の少女たちが空を覆っていた。
「これは多いのう・・・また増えたのではないか?」
「気色悪ぃな・・・ふぅ。試しだ」
メアトリスは一度深呼吸する。
「おい、お前等!話をしようじゃないか!お前たちの望みは何だ!」
その言葉とは関係無しに、少女たちは拳を構え、光を蓄える。
「んなこったろうなあ!」
拳から放たれた光の槍は二人を狙ってのものではなく、これまた二人など関係無く、結界へと降り
注ぐ。
「あ奴等!」
メルリアが結界を護ろうと光の槍を打ち払おうとする。
「構うな!」
「じゃ、じゃが!」
「この程度で結界は破けたりしない」
その言葉の通り、大社を覆う結界は光の槍の雨を受けてもビクともしていないようだった。
「強度も、結界を維持するにも十分な人手はある。だから、結界は気にせず・・・やるぞ」
「うぬ!」
相手の数は余りに多く、多勢に無勢。おまけにどいつもこいつも動きが早く、連携も取ってくる
厄介さの前に苦戦を強いられていた。
「ディバージェント・キロブレス!」
メルリアの放ったブレスが何本にも拡散し、少女たちへと向かう。
しかし、少女たちは一瞬でその場から消え、範囲外の死角から反撃の槍を放ってくる。
「チッ!」
メアトリスがそれを軽々打ち払う。
「ムカつくなあ・・・こっちの攻撃は当たらねえわ、奴等の攻撃、強い訳でもねえ」
少女たちからはこちらを本気で倒そうという気が感じられない。無表情で、まるで定められた事
のみを、ただしているだけのよう。それがメアトリスを更に苛立たせていた。
「おい、メル。・・・あれをやるぞ」
「あれとは?」
「メガでいい、俺にブレスを放て」
「姉上にじゃと?ということは・・・あれとは『アレ』のことかの!?姉上!この状況であれは流石に
不味いのじゃ!結界があるのじゃぞ!?」
「んなこたあ分かってる!構わん、やれ。あれだけの人数が結界維持してんだ、俺たち二人程度の
技で貫かれる程柔じゃねえさ!」
「う、うぬ・・・」
「やれ!!」
「うぬ!!」
メルリアが大きく息を吸い込み始める。それを見たメアトリスは天高く昇って行く。
その姿は雲よりも高く、地上からでは豆粒程度にも見えなくなっていた。
「カンバージェント・メガブレス!!」
メルリアが点に向かって鋭く伸びるブレスを放つ。
向かってくるブレスに対し、メアトリスは両腕を竜化させる。
「幾らテメエ等が速かろうと、降り注ぐ雨の一粒一粒は避けらんねえだろお!?」
メアトリスはブレスに拳を打ち付ける。
「メガ・・・スコーーーーール!!」
物凄い速さで、連続で拳を殴りつけて行く。
「うららららららら!!」
その度にブレスから破片が飛び散り、地上へと落ちて行く。
「らららららららあ!!」
それは激しい雨のように広範囲に降り注ぎ、少女たちだけでなく、結界にも容赦なく襲い掛かった。
雨が止み、メアトリスが天から降りてくる。
「・・・結界は無事か。まあ、当然だな。あいつ等は・・・」
少女たちは未だに空にうじゃうじゃといるが、どいつもこいつも傷を負っていた。
「ハッ!いいカッコになったじゃねえか。おら、かかって来いよ。やり返してみろよ!」
メアトリスが指先をクイッと一度二度曲げ、挑発する。
「・・・・・・」
少女たちは何も言わない。
だが、その中の一人が単独でメアトリスに突撃してきた。
「メル、お前は手え出すな」
「うぬ!」
「相手・・・してやるよ!」
少女はその速さで瞬時にメアトリスの背後、死角に周り込み、光の槍を放つ。
しかし、直撃してもメアトリスはビクともしない。
「効かん」
少女は再度、メアトリスの背後、死角に回り込み、今度は蹴りを胴体に叩き込んだ。だが、
「効かん!!」
軽く払われてしまう。
「その程度でこの俺を倒せると思ってんのか!?ああ!?雑魚がよお!!」
「・・・!」
少女は身体の中で何かがピクリと動くのを感じた。
「ん・・・!」
薙ぎ払われた腕を回避した少女は、身体の中に感じた「何か」を四肢に集め、再度突撃する。
瞬時に背後に周り込み、一撃を・・・
「!」
だが、今度は手で完全に受け止められてしまった。
「弱えな・・・同じ手ばかり使いやがって・・・弱え弱え弱ええ!!力も!何もかも弱えんだよ!!」
メアトリスが拳を振るう。
それを回避し、瞬時に背後に回り込んだ少女だったが、
「!?」
その瞬間に尻尾が顔面に飛んできていた。
直撃を受け、怯んだ少女の顔面を振り返る勢いを乗せたメアトリスの拳が完璧に捉えた。




