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黒翼のカナエル  作者: 氷花
プロト・ゼウス編
202/240

足りないもの

「あ~んらっ!エルメさ~ん!またまた落ち込んでいらして?魔王の娘ともあろう者が儘なりません

ことねえ?オーッホッホッホ!!」

 食堂で浮かない顔をしていると、デルフが決まってやってきて何やら言って高笑いする。

「デルフ、これ、返すよ。ありがとう」

 デルフに借りていた絵本を手渡す。

「どうも。・・・で?どうでしたの?」

「・・・・・・女心が分からねえ・・・・・・」

「そんな話でしたっけこれ!?」

「なあ、デルフ・・・もし、よく知らない相手からいきなり友達になってくれと言われたらどう思う?」

「何ですの?その質問は。・・・ま、いいですわ。答えは分からない、ですわね」

「どっちかで答えてくれよ」

「その相手と実際に会って話して見ない事には判断しようが無いということですわ。わたくしは自身

の眼と心で判断致しますので」

「眼と心、か・・・はぁ~・・・・・・」

 もし、あの兎も眼と心で判断してのあの行動だったのだとしたら、自分は駄目な奴だと判別された

ことになる。そう思うと深い溜め息を漏らさずにはいられない。

「ま~たそんなドデカイ溜め息をお吐きになられるなんて、いい加減、何にそんなに悩んでいらっし

ゃるのか教えて下さらないかしら?」

「そこまで気にしてくれるのか?」

「当然でしょう!見くびらないで下さいまし!目の前でこ~んな溜め息を吐かれて、何の手も差し伸

べないなんて有り得ませんわ!」

「・・・そうか・・・・・・そうだよな」

 デルフならば話しても問題ないだろう。

 デルフに兎の事、これまでの事を話した。

「まさか・・・!本当に実在していたんですの!?」

「その絵本に描かれてる奴よりは大分大きそうだったけどね」

「・・・成程ですわ。その兎がこの絵本の仔兎でないにしろ、同じような境遇なのだとしたら、あなたが

仲良くなりたいと思った気持ちも理解できますわね。そしてその兎が逃げ出した理由は恐らく、困難

に巻き込んでしまうから・・・ですわね」

「だよな・・・」

 それは予想がついていた。あの兎も絵本の中の兎のように心優しく、誰かを困難に巻き込まないよ

うにしているのだろう。でも、そうは思いつつも人里に割と近い山で生活していたり、実験している

ところをこっそりと見にきたりもしていた。それはやはり、どこかで寂しさを感じているということ

ではないだろうか・・・。

「それで?どうするんですの?」

「デルフはどうするべきだと思う?・・・やっぱり迷惑、なのかな・・・・・・」

「あなた自身はどうしたいんですの?」

「そりゃあ・・・友達になれたらいいとは思うけどさ・・・」

「でしたら!迷う事は無いでしょう!」

「いや、だから・・・相手の気持ちも考えると・・・」

「ええい!!魔王の娘ともあろう方が!一度断られたくらいで!何時までもウジウジいってんじゃあ

ねえですわ!!」

「お・・・おう!?」

「要は!後悔させなければいいだけですわ!あなたには、その程度の自信も無くって!?」

「・・・・・・そうか」

 やっと分かった。自分の言葉が軽すぎたのだ。覚悟が足りなかったのだ。あの子が背負っているも

の全てを共に背負う覚悟が。

「よし・・・決めた!また行ってくる!」

「ええ!今度はちゃんと紹介して頂きますわよ?」

「任せといて!」


 三度山にやってきた。あの子は普通に探しても見つからないだろう。なので、今一度釜を持ち込み、

実験を行う事にした。

 一日、二日、三日・・・未だあの子は現れない。

 四日・・・五日・・・六日・・・・・・風による葉の擦れる音一つ一つに否応無く反応してしまう。その内、幻覚

でも見てしまいそうな感じだ。

 ・・・・・・・・・・・・十日目。元々長丁場になることを考え、食料を節約しつつ留まり続けていたが、遂に

底を突いた。まあ、山の中にも食べられそうなものはたくさんありそうだし、大丈夫だろう。そんな

ことよりもだ。師範の講義も休みっぱなしだし、怒られる事は確実だろう。下手をすれば除籍になる

かも知れない。デルフが上手いこと話をつけてくれていれば助かるのだが。 

 様々な不安や苛立ちが募りに募り、何だか叫びたくなってきた。いや、もう叫ばずにはいられない!

「いい加減早く出てこいよ兎ヤロー!もう十日も経ってんだぞ!?師範の講義も休みっぱなしで、ただ

でさえ不合格続きなのに、これで除籍でもされたらどうしてくれんだ!出てこねえとこの森ごと焼き尽

くすぞアホンダラー!!」

 ふう・・・。と、少しすっきりした。その時だった。

 背後の茂みからトボトボと兎が、あの子が姿を現した。

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