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黒翼のカナエル  作者: 氷花
プロト・ゼウス編
195/240

エルメvsセイム

 別の部屋へ移動した二人は距離を開けて向かい合う。セイムはやる気満々といった様子で、準備体

操をしている。

「悪いな、エルメ。セイムのわがままに付き合わせて」

「セイムちゃん、じっとしてるの苦手だから」

 カイエルとメイエルの二人は部屋の端の方に座り、観戦するつもりのようだ.

「エルメちゃんがんばれー!」

 そしてセクテも。

「ふう。あっちはやる気みたいだし、今更嫌だとは言えないだろうね。となれば、やるからには楽し

みたいよね」

 互いの準備が整った。

「んじゃ、ぼちぼち行くよー!」

 セイムが手を振って合図する。

「シュピラーレ・フェアシュテルカ!」

「・・・強化魔法か」

 セイムは正面から突っ込み、接近戦を仕掛ける。

 セイムが次々に体術による攻撃を仕掛けるが、エルメはそれら全てを見事に回避していく。

「おお・・・やるなあエルメの奴。あのセイムの連続攻撃を全部かわしてるぞ!」

「すごい反射神経だね!」

「ふふん!エルメちゃんはすごいんだよ!」

 セクテが胸を張る。

「・・・?」

 カイエルたちが感心する一方、セイムは回避される度に違和感を感じていた。

(何かが違う・・・気がする・・・・・・)

 普通にかわされている感じではない気がしていた。と、

「!」

 突然反撃が飛んできた。ギリギリで防ぐ事はできた。威力こそ大したことはなかったが、回避する

身体の動きを生かした、無駄の無い反撃だった。

(やっぱり何かありそう・・・!)

 セイムはその「何か」の正体を掴むため、攻撃を続ける。

 対するエルメはセイムが使用している強化魔法を見極めようとしていた。

(どうやら身体強化ではなさそうか・・・?いやしかし、任意のタイミングでその効果を発揮させる事が

できるのかも知れない。決め付けるのも、油断もだめだ。・・・試しに、攻撃を受けてみるか・・・?)

 強化魔法の正体を知らぬままでは攻め辛い。確かめるためにも動く必要がある。もちろん、攻撃を

受けるのは自分ではない。

(これを使うと面倒な事になるかな・・・?)

 そうは思いつつもエルメはそれを使用し、セイムの拳を受け止めた。

「!!これって・・・鎖!?」

 魔王グリムが攻めに守りにあらゆる場面で使用するその鎖だった。しかし、その色は違い、緑色を

している。セイムはこの色の鎖には見覚えがあった。

「これはカリナちゃんも使ってた・・・確か、緑は属性を効率よく伝える、だったはず!」

「へえ・・・似たようなの使ってる人いるんだ・・・でも!僕のは少し違うよ!ブラス・チェイン!」

「!!」

 次の瞬間、鎖が弾け、凄まじい突風が発生し、セイムは吹き飛ばされた。

「くっ!鎖そのものが風になった!?」

 吹き飛びはしたものの、ダメージは無い。だが、距離が離れた事でエルメに機が訪れた。

 エルメが片膝を突き、地面に手を置く。すると、魔法陣が展開され、そこから無数の色とりどりの

鎖が噴き出し、セイムの方へ向かって行く。

 セイムは構え、回避に集中するが、鎖は一本もセイム自身には向かってはこなかった。セイムはす

ぐに最初から当てる気は無かったのだと思い知った。

 無数に放たれた鎖は、縦横無尽に張り巡らされ、セイムはその中に閉じ込められてしまっていた。

「チェイン・ハザード。さあ、今度はこっちの番だよ」

 結局セイムの強化魔法の正体は掴めないままだが、遠距離攻撃なら問題ない。

 エルメは両手を突き出し、それぞれから一本ずつ鎖を放つ。

 放たれた二本の鎖は、乱雑に張り巡らされた鎖の隙間を巧みに縫い、セイムの元へと向かう。

 色は緑と赤。恐らく風と火。この状況で緑の方を受ければ先程のように吹き飛ばされ、張り巡らさ

れた無数の鎖へ突っ込まされることになる。しかし残されたこの狭い空間では回避するのは困難。

「まだ間に合う!フォルムバール・フェアシュテルカ!」

 セイムの周囲に帯状の魔法陣が漂い始める。

 セイムは一切れの帯を向かってくる緑の鎖に巻き付け、炸裂させる。緑の鎖は弾け、やはり突風を

発生させるが、別の帯を重ねて壁を作り、防ぎきった。そこへいつの間にか背後に回り込んでいた赤

の鎖が迫っていた。それを何とか直前の所で帯で受け止める事に成功すると、赤い鎖は弾け、爆発。

爆風を発生させるが、それもギリギリで帯の壁を作り、防ぎきった。

「へえ、あんな魔法も使えるんだ・・・」

「ふー・・・爆発したのにはびっくりしたけど、何とかなった・・・。さて、と・・・」

 エルメとの間には距離があり、その間には無数の鎖が張り巡らされていて、とても間を縫って移動

する事はできない。これらの鎖をどうにかする必要がある。

 さっきしたみたいに一本ずつ誘爆させていくか?いやしかし、この密度だし、一つ誘爆させれば、

誘爆が誘爆を呼び、全ての鎖が一気に弾け飛ぶことになるだろう。もしそうなった場合、防ぎきれる

だろうか・・・

「ええい!迷ってらんない!突撃だー!!」

 手を拱いていては不利になるばかり。セイムは強化魔法に魔力を追加で注ぎ込み、大量の帯を精製

すると、それらを全身に何重にも巻き付け、無数の鎖の中に突っ込んだ。

「そんな事する!?」

 エルメはもう少しくらいは考えてくれると思っていた。まさか、直ぐに突撃してくるとは。

 案の定、鎖は次々に連鎖爆発した。

 撒き散らされた様々な属性によって煙が辺りに充満し、視界が効かない。

(セイムはどうなった?これでどうにかなりそうな感じはしないけど・・・)

 次の瞬間、背後からセイムが迫ってきていた。

(やっぱりね・・・!)

 倒せてはいないだろうとは思っていた。でも、背後からとは予想外だった。この視界の中、この短

時間で背後に回り込んでくるとは。完全に不意を突かれた。

 振るわれた大振りの渾身の拳。

 しかし、それでもエルメの身体は回避する。そして、反撃の一撃がセイムを捉えた。

「あっまずっ!?」

 その瞬間、エルメは確信した。負けた、と。

 反撃の蹴りを放ったエルメの脚に、セイムの身体を覆っていた無数の帯が巻き付いたのである。

 セイムの身体に取り込まれるかのように片脚を封じられたエルメにはもう、次のセイムの一撃を回

避する術は無かった。

「帯拳!」

 無数の帯で形成された巨大な拳がエルメの頭上に振り下ろされた。

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