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黒翼のカナエル  作者: 氷花
プロト・ゼウス編
194/240

思案

 眠る度に思う。これでもう、二度と目覚めることはないのではないかと・・・・・・。

 こう思い続けて結構経つが、ここ数日、この世界戦に来てからは特に強く思い、上手く眠れなくな

ってきている。

「エルメちゃんおかえりー!どうだった?」

「駄目だね。すっかり居ついちゃってるよ」

「そっかぁ・・・」

 シュリさんのいるこの書物庫に転がり込んで数日、セクテの目的を果たすべく、影から機を伺う日

々だ。状況はよくない。ゼウスがぴったりと張り付いていて隙がない。これは時間経過で変化すると

は思えない。

「これはこっちから仕掛けていくしかないだろうね。・・・さて、どうしたものか・・・・・・」

「・・・ごめんね、エルメちゃん・・・わたしのために・・・・・・」

「またその話?いいって言ったでしょ?貸しにしとくつもりだし」

「・・・うん」

 ここの所、セクテはいつもの元気が無く、毎日申し訳無さそうにしている。自分のせいでとか、色

々と気負っているのだ。本当に気にする必要なんて無いのに。

「皆様ー、お昼の用意が整いましたよー!」

 この城の給仕者で、城のことだけでなく、シュリさんの身の回りの世話もしているクォイアが小さ

な鐘を鳴らしつつ、食事の時間を告げる。

 この書物庫には一切窓が無く、ずっとこもっていると昼も夜も分からない。特にシュリさんは研究

に没頭していると、食事も睡眠も忘れてしまうらしい。

 その知らせを聞き、シュリさんも手を止める。

「もうお昼とはねえ。最近は時間が経つのが早くて困るねえ」

 書物庫でも食事を取るのに十分な広さも場所もあるが、別室でと言うことになっている。シュリに

少しでも陽の光を浴びさせるためだ。

 廊下に出ると、眩しい陽の光が全身に降り注いでくる。

「んーーー!・・・はあ~~~・・・・・・やっぱり陽の光は気持ちがいいねえ」

「そうでしょう?ですから、シュリ様ももっと外に出て積極的に陽の光を浴びるようにして下さい」

「・・・いつか、この陽の光を魔法で再現してみたいねえ。ただの光では感じない、この陽の光だからこ

その気持ちよさ・・・・・・再現できたら・・・」

「駄目ですよ」

「何時でも何処でも、書物庫でも日向ぼっこを・・・」

「駄目です」

「・・・むう」

 お昼は大体三人だ。セイムやカイエルメイエルはいつも書物庫に居る訳でなく、来るにしてもお昼

を食べてからやってくる。

「そう言えば、二人共大丈夫かねえ?さっき、難しそうな顔してたけど」

「大丈・・・夫とは言わないですけど・・・」

「何か、手伝える事があれば手伝うけどねえ」

「それはとても有難いです。・・・ですが、まだ万事を尽くした訳ではないので・・・」

 シュリさんに協力してもらえるのは願ってもないことだが、無駄に関係の無い人を巻き込むことは

したくない。何か、いい策を練らなければ。

 昼食を終えると直ぐにセイムたちがやってきた。

 三人は主に、掃除をしたり本を読んだり世間話をしたりお茶を淹れたり、必要な物資があればそれ

を調達してくることもある。中でもセイムは三人の中で唯一魔力を持っているため、シュリさんの研

究を手伝う事もあるのだが、それも特に無い時は大体、

「ひまー・・・・・・ひーまーだーよー・・・」

 と、地面にへばりつき、小声で唱え始める。

 らしいのだが、今は自分たちがいる。特に、自分は同じ狐であるため、興味があるらしく、色々な

質問を投げ掛けてくる。

「エルメちゃんは今、何してるの?」

「作戦を立ててるところ」

「作戦?ふ~ん・・・何の作戦?」

「・・・誰にも見つからず気付かれず、目的地まで辿り着くための、かな」

「おやあ?何やら怪しい事考えてる?・・・でも、何だかおもしろそうだね!」

 セイムは目を閉じ、眉間にしわを寄せる。一緒に考えてくれているようだ。

「ねえ、状況は?どんな感じなの?」

「それは・・・目的地の周辺には常に人を感知する結界が張られてる感じ。ちなみに、目的地は建物の中

にあるから」

「建物の中・・・人を感知する結界かぁ・・・・・・む~ん・・・・・・」

 その結界を張っているゼウスを、わざと結界に引っ掛かって見せてゼウスをおびき寄せている隙に

何とか・・・とも考えたが、常に張り付いているあたり、こっちの目的対象はばれていて、引っ掛かった

ところで守りを固められるだけで、誘い出されるなんてことはしないだろう。

 ならばいっその事、ゼウスを倒すか?いやいや、一度戦った事はあっても、本気じゃなかったし、

あいつの力は未知数だ。勝てる保証は無い。

「この事、シュリちゃんには相談してみた?」

「・・・してない」

「・・・そっか」

 一瞬、セイムがシュリさんに相談しに行ってしまうのではないかと思った。しかし、セイムは行か

なかった。行かず、続けて頭を悩ませる。

「優しいね、セイムは」

「そう?本当は私にも関わって欲しくなかったんじゃなあい?」

「そんなことはないよ」

「ほんとかなあ?・・・・・・というかさ、エルメちゃん。エルメちゃんってさ、私とシュリちゃんで言葉

遣い違うよね?」

「え!?そうだったかなあ~・・・・・・」

 惚けてみるも、まあ、通じない。

「そうだよ!シュリちゃんとは同い年だよ!?もしかして、色々と下に見られてる?そりゃあシュリ

ちゃんに比べたら頭よくないし、落ち着きもないかもだけどさあ!」

「ま、まあ落ち着いて!ほら、シュリさんはこのおっきい城のおっきい書物庫の司書だって言うしさ、

実際に偉そうでしょ?それに、言葉遣いが砕けてた方が友達っぽいでしょ?同じ狐なんだしさ!」

 思いつく理由を並べ立てて沈静化を試みる。が、

「駄目!許さないよ!もう、こうなったら戦いで決着を付けるしかないね!」

「ええ・・・それってただ、セイムが暇で身体動かしたくなっただけなんじゃ・・・」

「問答無用!表へ出ろー!」

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