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黒翼のカナエル  作者: 氷花
プロト・ゼウス編
193/240

エミエル

 翌日、学校へ向かおうと外へ出た時だった。

 一晩中、朝を迎えても尚、ずっと同じ場所から動く事は無かった白翼の少女が後ろを付いて来てい

たのだ。

「な!?何で付いてきてんだ!?」

「・・・・・・」

 その問い掛けにはやはり、答えない。

 しかし、どう足掻いても付いてくるつもりのようだ。

「・・・行きましょう」

「いいのか?」

「来るなと言った所で、言う事を聞いてもらえるとは思えませんし」

「・・・そりゃそうだな」

 ラキエルとフェローリアが諦めて歩き出す中、ハワーは白翼の少女の顔を真正面からまじまじと見

つめていた。

「う~ん・・・・・・」

「お姉ちゃん?」

 白翼の少女はハワーが目を合わせようとすると、ちゃんと目を合わせてきてくれる。ずっと真顔で、

決して目を逸らそうとはしない。

「むむむ・・・・・・」

 ハワーも負けじと目を見続ける。

 このまま不毛な時間が続くのかと思われた次の瞬間、ハワーは指を巧みに使い、両頬を引っ張り、

鼻を持ち上げ、両目を釣り上げ白目を剥き、だらしなく口を開けた見事?な異形の顔を一瞬で作り上

げた。

「!?」

「あ゛~~~」

 白翼の少女の身体がビクンと跳ねた。

 その表情は目を見開き、額にしわを寄せ、必死に理解しようとしているようだった。

 何かの技なのか、何の意味があるのか、害はあるのかとか考えているのだろうか。

 やがて、異形の顔の維持に限界が訪れた。

「だーっ!もうだめっ!敵わないよー」

「何・・・してんだ?」

「にらめっこ!」

「そんな気はしてましたけど、何故突然にらめっこを?」

「だって笑った顔がみたくなっちゃったんだもん」

「お姉ちゃんは、仲よくなりたいの?」

「うん!」

 ハワーは屈託の無い笑顔で頷く。

 ミーニは思った。お姉ちゃんはすごいな、と。その名前も目的も何も分からない相手であっても自

ら歩み寄って行く。お姉ちゃんらしい。

「だよね・・・会う人みんなと仲よくなれたらすてきだよね!」

 ミーニは白翼の少女の手を取る。

「わたしもー!」

 それを見たハワーも反対側の方の手を取る。

「ねえ、お姉ちゃんだったら、何てあだ名つける?」

「あだ名?んーとねー、天使で、あんまり笑わなくて・・・でも笑って欲しいし・・・だから・・・・・・うん!

決めた!エミエルのエミちゃん!」

「エミちゃん・・・いい名前だね!よろしくね、エミちゃん!」

「・・・・・・」

「お前らなあ・・・」

「まあいいじゃないですか。何かしらの呼び名がないと不便ですし。それより、もう行かないと遅刻

してしまいますよ!」


 学校に到着すると、皆それぞれの教室へ別れて行く。そんな中、白翼の少女エミエルはと言うと・・・

「あ!おは・・・よー?ねえミーニちゃん、そっちの子、だあれ?」

「えっと、エミちゃんって言って、学校の授業を体験してみたいんだって」

 という事にしておこう。

「へえ~、エミちゃんだね!よろしくね!」

「・・・・・・」

 視線は移すが何も喋らない。

「エミちゃん、無口な子だから。クールでしょ?」

「クール!うん!かっこいい!」

 その後、先生とも話を付け、何とかエミを伴ったまま授業を受ける事ができた。

 やはりエミは全くその場を動かなかった。授業中はもちろん、合間の休み時間にクラスメイトたち

に群がられても、昼食の時も。エミはどうやら食事を摂らなくても平気なようで、何人かがお昼ご飯

を分けてくれようとしたが、

「必要ありません」

 と断っていた。

 一日の授業が無事に全て終わり、

「ばいばーい!エミちゃーん!」

「また明日なー!」

 皆、エミに一声掛けて帰って行く。

「よく受け入れられたもんだな。何もしゃべってねえのに・・・」

「それがエミちゃんの個性だって分かってくれたんだよ、みんな」

 動かず、何も喋らず、常に真顔で、必要ない事ははっきりと断る。そんな姿がみんなには格好良く

映ったのかも知れない。

「くっ・・・何もしゃべらずとも受け入れてもらえるとは・・・!」

 フェローリアは自分が初めて学校にきた時の事を思い出していた。何も喋らなくてもそれが個性と

して受け入れてもらえると分かっていれば、あんなにやきもきしなくてすんだのに!と、唇を噛み締

めた。

 帰り道。基本、エミは一番後ろを付いてくる。見守っているのか、監視しているのか、未だにはっ

きりしないが、今のところ何の害も無い。

「エミさん、今日一日学校で授業を受けてみていかがでしたか?」

 ラキエルが問い掛ける。もちろん、返答など期待していない。ただ、ラキエルもまた、ハワーと同

じように歩み寄ろうと思ったのだ。

「・・・・・・」

 やはり何も答えない。

「うちの組じゃあ早速受け入れられたみたいだぜ?」

「そうなんですか?」

「きっと、何も喋らないっていうのが個性だって受け入れられたんだと思う」

「へえー!いいお友達ができたね!よかったね!エミちゃん!」

「・・・・・・」

「はあ~・・・おれも無口ってキャラにしとけば楽だったのかなあ~」

「え~?似合わないよ」

「似合いませんね」

「似合わないこたあないだろ!そんなうるさいタイプじゃないだろ?おれ!」

「じゃあさ、少しの間エミちゃんのまねしてみたら?」

「まねだと?」

「そ。家に帰ったら、一つの場所から動かず、何もしゃべらないで、ごはんも食べないの!」

「ご飯と無口キャラは関係ねえだろ!」

「じゃあだめだねー」

「・・・なあ、お前ら。無口って、口が無いって意味で言ってるんじゃないだろうな?」

「違うの?」

「違うわ!!」

「・・・・・・」

 ラキエルたちは賑やかに岐路に着く。

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