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黒翼のカナエル  作者: 氷花
プロト・ゼウス編
192/240

「あ・・・!?」

 驚き、後ずさりするとその全容が見えてくる。

 それは大きな『兎』の姿をしていた。蜘蛛の巣状に線の刻まれた目を持ち、空間を突き破っている

のか、謎のひび割れの向こうから顔だけ出し、こちらを凝視している。

「ママ、この仔がそうだよ」

 その兎は、徐にミーニに向け、手を伸ばす。

 ミーニは動く事ができなかった。それは恐怖からではない。その兎の眼が、似ていたからだ。自分

が「時の王」の力を発現した時のそれに。

 兎の手がミーニに触れんとしたその時だった。

 突然、ミーニの姿が消えた。

「ん・・・ラキエル・・・さん?・・・じゃない!?だれ!?」

 ミーニは気が付くと抱き抱えられていた。その姿は真っ白な翼を生やした天使のようであったが、

ラキエルではない、見たことのない少女だった。

「まさか・・・ここまで追ってくるなんて・・・!」

「兎の王・・・」

 白翼の少女が小さく呟く。

「兎の王・・・?」

「!」

 白翼の少女が突然飛び退いた。

「え?」

 ついさっきまでいた地点の地面から無数の鎖が噴き出していた。

「鎖!?」

 更に、背後からも無数の鎖が迫っていた。

 白翼の少女はミーニにも認識できない速さで攻撃範囲外まで退避した。

「何が起こってるの!?」

 ミーニには何が何やら理解が追いつかない。

 そんなことお構い無しに三人は対峙する。

「エルメちゃん・・・」

「上手く行かなかったか・・・ここまで追ってくるとはね」

「・・・・・・」

「エルメちゃん、どうしよう?」

「・・・退こう。あちらさん、どうやら攻めてくるつもりは無さそうだし」

「分かった!エルメちゃん、こっち!」

「ああ!」

 エルメとセクテは破れた空間の中へ向かって行く。

「セクテさん!エルメさん!」

「ミーニちゃん・・・またね・・・」

 二人が中に入ると、空間は閉じて見えなくなってしまった。

「・・・・・・えっと、降ろしてもらってもいいですか?」

「・・・・・・」

 白翼の少女は無言で静かにミーニを降ろす。

「あなたは一体・・・・・・っと、とりあえずみんなの所にもどらないとね」


「あ!ミーニさん!・・・って、誰ですか!?その人!?」

「えっと・・・・・・」

 一度白紙界から出て、白翼の少女と向き合う。

「あなたは一体何者なのですか?」

「その問いに答える事は出来ません」

「・・・じゃあよ、どうやって白紙界に入ってきたんだ?誰にも気付かれずにさ」

「その問いに答える事は出来ません」

「せめて名前くらいはのう?」

「その問いに答える事は出来ません」

 白翼の少女は何を訊いても無表情で同じ文言を繰り返すばかりで何も分からない。

「埒があかぬのう・・・む?そう言えばじゃ、セクテとエルメの姿が見えぬが、どうしたのじゃ?」

「そうでした、エルメさんがミーニさんたちを捜しに行って・・・会いませんでしたか?」

「・・・・・・会ったよ。セクテさんともいっしょだったし・・・」

 ミーニは俯く。

「・・・何かあったのか?」

 何かはあった。だが、二人が何をしようとしていたのか、自分に何をして欲しかったのか、どうし

ていなくなってしまったのか、何も分からない。何も・・・・・・

「よく・・・わかんない・・・・・・」

「どうやらお二人とも、もう白紙界にはいないようですよ」

「本当ですか!?グルさん!」

「はい。現在、白紙界の中に生体反応はありません」

「もう白紙界から出たってのか?またも誰にも気付かれずに?どうなってんだ・・・・・・」

「元々現れた時も突然で、転移魔法を使って逃げてきたと行っていましたし、やはり出るときも同じ

方法で出たのではないでしょうか」

「・・・・・・」

 ミーニは何も言わなかった。


 結局、セクテとエルメは戻ってこないまま、ハイラント邸へと帰ってきた。そこに白翼の少女も同

行していた。

「あいつ・・・中まで付いてくる気か?」

 問い掛けても何も答えない割には、ラキエルたちから離れようとしない。流石に気味が悪いが、不

思議と敵意のようなものは感じられない。

「まあ・・・もう少し様子を見てみましょう」

 そのまま白翼の少女をハイラント邸に招き入れることにした。

「お帰りなさいませ!皆さん!・・・そちらの方は初めましてですね」

「えっと・・・とりあえずは、お客さんということでお願いします。・・・あとガルさん、セクテさんとエ

ルメさんが何処かへ出掛けてしまったようですので・・・」

「了解しました。お客様、只今お部屋を御用意致しますね」

「必要ありません。この場で問題ありません」

 そう言い、白翼の少女は動線の邪魔になら無そうな隅っこの方に移動する。

 そして、白翼の少女は徐に両手を掲げる。すると、両手の中に光の球が現れる。

「何をする気だ!?」

「『光域』展開します」

 制止する間も無く、光の球は急激に肥大化し、壁もすり抜け、見えなくなった。

「おい!何しやがった!!」

 フェローリアが掴み掛かるも、白翼の少女は変わらない。

「その問いに答える事はできません」

「ぐうー!何なんだこいつはーっ!!」

 その日、白翼の少女がその場から動く事は無かった。


 深夜、ミーニは白紙界での出来事を思い出し、眠れずにいた。

「セクテさんとエルメさんは何がしたかったんだろう・・・私に・・・何をして欲しかったのかな・・・・・・」

 それに、空間を突き破り現れたあの「兎」とその「眼」。「時の王」の力を発現した時の自分とは

少し違うが、似ていた。あれは一体・・・・・・?不安でもない。恐怖でもない。何も分からないというも

どかしさに苛まれたまま、何時の間にか眠りに落ちていた。

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