表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒翼のカナエル  作者: 氷花
プロト・ゼウス編
190/240

白紙の書

 翌日。ヒイカに渡された紹介状を手に向かった場所は「育みの里」だった。その広大すぎる敷地の

中で指定された場所に向かうと、そこには丸い形をした不思議な建物が建っていた。

「あまり見ない形の建物ですね」

「これも育みの里の施設だし、何かしらを学ぶ施設なんだろうな」

「・・・・・・」

 セクテが建物を見上げながらぼーっとしている。

「セクテ・・・さん?どうかしたの?」

「え?あ、ううん、大丈夫だよミーニちゃん。ちょっと変な形だなあって思って見惚れてただけ!」

 そう笑って見せるセクテだが、その笑顔は何処かぎこちないように見えた。

「んで?どっから入るんだ?」

「えーっと・・・?」

 建物の周りをぐるっと周ってみるも、扉らしきものは見当たらない。

「入り口が無い!?」

「欠陥住宅というやつか!」

 外で騒いでいると、声が、建物から聞こえてきた。

「何か御用ですか?」

「建物が喋った!?」

「いやいや、中に人がいるだけだと思うけど」

「えっとですね、これです!ヒイカさんから紹介されて来ました!」

 ラキエルが紹介状を建物に対して掲げて見せる。

「・・・少々お待ち下さい」

 言われた通り、少し待っていると突然、目の前の壁が開いた。そしてそこに給仕服を着た女性が立

っていた。

「どうぞ、お入り下さい」

「ここが入り口だったのか・・・」

「ふふふ、それはどうでしょうね?」

「?」

「ここは誰でもは入る事のできない施設ですので、色々とあるんですよ」

「そんなにすごい所だったんですね、ここ・・・」

 その給仕者に案内され、誰でもは入る事のできないという建物の中に入る。

 中は全面に渡って開けており、部屋は一つも見当たらない。ここにあるのは、いかにも精密そうで

大きな機械ばかりだ。

「セクテ、はしゃぐなよ?」

「はしゃがないよ!」

 あちこちに機械が設置されている中、とある一角だけには機械が一切無く、代わりにこの場には不

釣合いなソファーや絨毯が敷かれていた。

 一行はそこに座り、改めて周囲を見渡す。

 やはり一番目を引くのは、中央にそびえ立つ透明な円柱形の機械だ。その機械は天井にまで達して

いて、まるでこの建物の大黒柱のようだ。その大黒柱に繋がるように、線が別の機械に幾つも延びて

いる。これだけの機械がありながら、今確認できる人の数はたったの四人だけだ。これだけの人数で

全ての機会を操っているのだろうか?

 給仕者の女性が作業していた仲間たちに声を掛けて回り、集まってやってきた。

「お待たせ致しました、皆さん。私たちは研究開発一班の者です。そして私は所長をしております、

グル、と言う者です」

 狼の給仕者の女性が深々と頭を下げる。

「こちらが、ラグラ様で」

 不機嫌そうな表情の狸の女性。

「モリトっすよ、よろしく~」

 少し軽い感じの熊の男性。

「エルビナ」

 小さな声で名乗るその猫の女性は、こちらからではその目を見ることができないほどの分厚いビン

底眼鏡を掛けている。

「皆さんは、ここで何をしているのか、お聞きになっていらっしゃいますか?」

「いいえ。お楽しみだと言う事で、何も」

「そうでしたか。ここはですね、『第六世界』を研究している施設なんです」

「『第六世界』?・・・って、悪魔界のことだよな?」

 元々五つの世界が繋がっていた所に、ついこの間、悪魔界との同盟が結ばれ、自由に行き来はでき

ないものの、六つになったのだ。

「いえ、悪魔界は『第七世界』です」

「何ぃ!?それじゃあ、また新たな世界と同盟を結んだってのか!?この短い間に!?」

「いえいえ、そう言う訳ではありませんよ」

「んー?では、それ以前に見つかっていた世界、ということかの?」

「??」

 ラキエルたちは考えるが、中々思い当たらない。首を傾げていると、険しい表情を浮かべ続けてい

る狸のラグラが口を開いた。

「分からないのか?お前たちの中にだって、行った事のある奴がいるだろう。・・・魔王グリムと戦った

あの世界の事だ」

「あ!!」

 言われてみれば、あの場所は五つのどの世界でもなかった。あの世界は魔王グリムが創り出したも

ので、もう消えてしまったのだと思っていた。

「その世界が第六世界。こっちでは『白紙界』って呼んでるっす」

「カナエルが創り出した『白紙の書』。その中に広がる世界だから『白紙界』」

「ほ、本の中に行けるって事か!?」

「はい、その通りです。・・・とは言っても、今行った所で中には何もありませんが」

「どう言う事ですか?」

「白紙の書に何も書かれてないっすからね」

「白紙の書に書き入れることでその通りの世界ができる」

「そう。例えば、『海』と書き入れましたら、海が出来ます。しかし、それだけですと、中にあるの

は本当に海だけで、陸も空も生物も何もいない事になります」

「成程・・・」

 つまり、詳しく書き入れる必要があるが、それができれば、自分の想った世界を創り出すことがで

きるということか。

「それって、何だか怖いね・・・・・・」

 ミーニが呟いた。

 それを聞いたラグラがニヤリと笑う。

「何故そう思った?」

「その書いたものって、消す事もできるんですよね?」

「ああ、できる。消せば中にあったものは当然、全て消えてなくなる」

「・・・それが、人でも?」

「ああ。人でも、思いのまま、だ」

 皆、その恐ろしさに気が付き、静かになる。

「もう分かったな?この白紙の書は、人だろうと何だろうと、あらゆるものを創り、いとも簡単に消

してしまう事も出来てしまう。そう言う代物だ」

「ま、要は機械と同じっす。間違った使い方をしなければいいってことっすよ」

「だからこそ、ここは誰でもは入る事ができなくしているんです」

「あの・・・カナエル様はどうしてこの白紙の書をお創りになられたのでしょうか?」

「それは・・・お祭りのため、ですかね」

「へ?」

 全くの予想外の答えにラキエルは目を丸くする。

「この白紙の書を用いれば、お祭りに必要な建物の建造も簡単ですし、食べ物だって創り出す事が出

来てしまいます」

「く、食いもんも創れんのか!?」

 フェローリアが激しく食いついた。

「んで、この施設では、白紙界の様子を撮影機材で写し、それを全世界の空に投影するための研究を

してるっすよ」

「白紙界での催しを全世界の人が見て楽しめる」

「へえ・・・!」

 皆の表情に明るさが戻ってきた。

「今日は、白紙界の試運転と、こっちで造りました、撮影機材での試し撮りをします。白紙の書にど

う言った世界を描くかは皆さんに考えて頂きます」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ