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黒翼のカナエル  作者: 氷花
プロト・ゼウス編
189/240

シュリの疑問

 「マキちゃん」の製造に成功した一行は書物庫に戻ってきていた。そして釜の中の物を球の形に成

形する作業を行っていた。

 エルメはまだ弾力のあるマキちゃんを手に取り、眺めていた。

「そっか・・・最初期のマキちゃんはこんな形だったんだ・・・!」

 エルメが知るマキちゃんの形状は試験管型であり、シュリが書いたという書物にもこの型の造り方

しか記されていなかった。恐らく、ここから形状も製造方法も改良がなされてあの形になったのだろ

う。そう考えると、

「やっぱり研究者ってすごいなあ・・・!」

 エルメは改めてシュリへの尊敬の念を強めた。

 一方、シュリは今回の実験の考察を紙に纏めていた。

「えっとだねえ・・・」

 精製時の釜の中に出来上がるものは、魔力を物質化した物だと思われ、状態はゲル状で不安定。し

かしながら強い衝撃を与えなければ触れても捏ねても問題は無し。

 中に魔法陣を組み込む事で一転、状態は安定し、凝固する。この時点における内部の魔法陣は、起

動前で完全に停止した状態となり、凝固したこれを破砕することで再び動き出す。故に、例外はあろ

うが、予め魔法陣を仕込んでおく事で、込めた魔法が誰の物であっても、全ての人が魔力を消費する

事無く魔法を使用する事ができるようになると思われる。

「・・・と、取り敢えずはこんなとこかねえ」

 そう纏めつつも、シュリはどこか腑に落ちない様子で考え込んでいる。

 その様子を気にしていたラキエルが問い掛ける。

「シュリさん、どうかされましたか?実験が成功した辺りから浮かない顔をされていますが・・・」

「・・・実は、そうなんだよねえ・・・・・・」

「はあ・・・・・・」

 何かあることは肯定したものの、その事についてはまた直ぐに考え込んでしまい、中々話してはく

れない。

「そんなに重大な事・・・だったりするのですか?」

「・・・・・・かも、知れないねえ」

「・・・・・・」

 また考え込む。

 今はこれ以上は訊かない方がいいかも知れないと、ラキエルが作業に戻るとすると、

「成功・・・しちゃったんだよねえ・・・・・・」

「え?」

「私はねえラキエルちゃん、今日の実験、失敗するつもりだったんだよねえ」

「そう・・・なんですか?」

 それで成功しちゃったんならいいはずだが・・・

「うん。だってねえ、この紙に書いてある通りにやったんだよ?これを書いた人は悪魔界の人で、悪

魔界と冥界では色々と環境が違うはずで、違えばどこかで必ず躓くことになるはずだよねえ?なのに

上手く行った。これは単に、これを書いた人がより作り易いように気を利かせてくれたがためなのか、

もしそうでないならば・・・一体どういう事を指し示しているのだろうねえ・・・・・・」

 シュリが考えている事は、ラキエルにも理解できた。

「ま、考えすぎかもねえ」

 やがて成形作業は全て終わり、大量の「マキちゃん」が出来上がった。

「さて、みんなに分けてあげないとねえ」

「もらってもよいのか!?」

「もちろん!手伝ってくれた報酬ってことでねえ。何なら、一部に魔法も込めてあげるけど、どんな

のがいいかねえ?」

 皆、思い思いの魔法を込めてもらい、それぞれ一袋分受け取った。

「それと、これはミーニちゃんの分、渡しておいてくれないかねえ?」

「了解しました。お預かりします」

「また欲しくなったらいつでもおいでねえ」


 ハイラント邸に帰り、セクテがミーニに受け取った袋を渡す。

「ミーニちゃん!これ、マキちゃん!どうぞ!」

「え!?マキちゃん、もうできたんだ!?エリーちゃんは難しいよって言ってたのに・・・さすがシュリ

さんだね!それと、みんなが手伝ってくれたおかげなのかな?ありがとう!」

「えへへ~大したことはしてないよ~」

「そう言えば確かに、大したことはしてないですね。植物を集めたり、出来たマキちゃんの元を丸め

たくらいですし」

 重要で繊細な作業は全部シュリさんがやってくれて、こっちは見ているだけだったし。

「ミーニ、ちょっとそれ、見せてもらえる?」

 そこへグリムがやって来た。どうやら「マキちゃん」に興味を持ったらしい。

「あっ、はい、どうぞ」

 ミーニから袋を受け取り、中から魔法陣の込められた一つ取り出し、まじまじと見つめる。更にも

う一つ、魔法陣の込められていないものを取り出し、比べる。

「エルメ、これについて説明できる?」

「あ、それなら・・・」

 エルメはすらすらと説明する。

「・・・という感じです。殆どシュリさんの考察そのままですけど」

「そうだとしても、それだけすらすらと言えるのは、ちゃんと意味を理解してるからでしょう?それ

でこれは、誰が考案したものだっけ?」

「悪魔界のエリーちゃんっていう、エルフという種の女の子です」

「へえ~・・・子供が・・・エルフ、悪魔界・・・か・・・・・・」

 今度は悪魔界に興味を持ったらしい。

「そうだ!ねーねー、明日もどこか行くんでしょ?」

「はい。明日も付き合って下さいますか?」

「もっちろん!色んなとこ行きたいなあ~」

 明日の事を想像し、セクテの顔が緩む。

「それならば、私が紹介状を書きましょう」

 そこへ丁度ヒイカが帰ってきた。

「ヒイカさん!どこどこ!?どこに行けるの!?」

「セクテ、落ち着いて」

「それは明日のお楽しみ、と言うことで。どうですか?行ってみる気はありますか?」

「行くー!!」

 セクテが勝手に了承してしまった。

「悪いね、ラキエル。セクテはいつもこんなんで・・・」

「構いませんよ。どの道、明日も何をするか決まってませんでしたから。皆で一緒に行きましょう。

ミーニさんとフェローリアさんも明日は一緒にどうですか?」

「いいよ!」

「構わん」

「では、紹介状を用意しましょう」

 傍に立っていた使いのフュクシンがヒイカに耳打ちする。

「ヒイカ様、宜しいのですか?」

「いいのですよ。彼女たちだからこそ、ね。フュクシンさん、紙を」

「かしこまりました」


 深夜。ハイラント邸上空。真っ白な翼を携えたそれは、滞空しながらハイラント邸を見下ろす。

「対象確認。・・・行動制限解除不可。『観察』を実行します」

 月明かりから身を隠す事も無く、それはただただ真っ直ぐにハイラント邸を見つめる。

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