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黒翼のカナエル  作者: 氷花
プロト・ゼウス編
188/240

マキちゃん

「さて、冥界にやってきた訳だが・・・材料って、何を集めればいいんだ?」

「魔力が多く含まれている・・・植物がいいねえ。とにかく沢山集めてくれるかねえ」

 一行は言われた通りに片っ端から植物を採取し、シュリの元へ運ぶ。シュリはそれらを手に取り、

使えそうかどうかを鑑定していく。

 そんな中、エルメは未だに呆けていた。

「エルメちゃん・・・だったよね?どうかしたの?身体の調子が悪いなら少し休んでる?」

 すると、メイエルが心配そうに声を掛けてきた。

「ああいえ、問題ないです!大丈夫大丈夫・・・」

「そう?辛かったら遠慮なく言ってね?私、治療できるから」

 メイエルは作業に戻って行った。

「行けない行けない・・・ついつい見惚れてしまった・・・。それにしても・・・・・・あれがシュリさんか・・・」

 元の世界ではその人の書いた魔道書でしか彼女の事を知ることはできなかった。今の今までその姿

や性別すらも分からなかった大魔道士本人が今、目の前にいるのだ。まあ、ここは過去だし、まだ大

魔道士とは呼ばれていないようだが。

「何にせよ、今、あの魔道書に書かれていた『マキちゃん』を製造実験しようとしている・・・その場に

立ち会えてるって・・・かなりすごい事じゃないの!?」

 興奮しないわけが無い。しかし、気を付けなければ。うっかり自身の身元をばらすような事を言っ

てしまわないように落ち着かねば。

 エルメは深呼吸を繰り返し、心を落ち着かせる。

 やがて、かなりの量の植物が集まった。あのでっかい釜にも入りきらないだろう量だ。って、そう

言えばだ、釜を持ってきていない。

「まさかじゃが・・・・・・これを全て書物庫まで持ち帰れと言うのでは無かろうな!?」

 書物庫まではかなり距離がある。人数はいるとは言え、一度で全て運べる量ではない。

「何往復もすんのか・・・」

「運んでくれるかねえ?」

 誰もウンともスンとも言わない。植物採取だけでくたびれていた。

 その様子を見たシュリは笑い出す。

「あっははは!嫌そうだねえ。大丈夫。釜のほうを持ってきたらいいんだよねえ」

 そうは言うが、持ってくるにも一度書物庫に戻る必要がある。しかもあの釜の大きさだ、何人かで

抱えなければならない。

「仕方ない・・・戻るか・・・」

「まあまあ、ちょっと待っててねえ」

 シュリは徐に地面に魔法陣を描く。そして出来上がった魔法陣に魔力を込める。

 すると次の瞬間、魔法陣の上にあのでっかい釜が現れた。

「おお!」

「さっすがシュリちゃん!」

「転移魔法の応用だねえ。前にも見せたこと無かったかねえ?」

「のうのう、次はどうするのじゃ?」

「次はねえ、この植物を全部釜の中に入れたいから、細かく刻む必要があるねえ」

「細かくか・・・・・・」

 皆一様にシュリの方をじーっと見つめる。

「き、期待されてるねえ。まあ、そう言った魔法もあるんだけどねえ、この後の工程に多量の魔力を

必要とするのがあるから、できれば使いたくないんだよねえ・・・・・・」

「みんな、やろ!みんなでやったらそんなに時間掛からないよ!多分!」

 セイムの言葉で皆、重い腰を上げる。

「エルメちゃんエルメちゃん」

「セクテ?」

「やってあげようよ!」

「力を使う気か?・・・・・・まあ、何とかなる・・・か。みんな、僕たちの魔法、試してみてもいいかな?」

「おお!魔法で何とかしてくれるというのか!」

「そうだよ!」

 皆が植物の山から離れる。

「全部細かくしちゃっていいんですよね?」

「うんと細かくしちゃっていいからねえ」

「ん」

 エルメが両手を広げる。

 すると、左手に空気が渦巻き、右手の指先に複数の刃が形成される。それらを一纏めにし、植物の

山に向かって投げつけた。

「サイクロン・スフィア!」

 植物の山は宙に舞い上がり、球状の風の渦の中で乱雑にかき回され始めた。

「セクテ、三つくらいで」

「はいよー!」

 セクテが手をかざす。

「タイム・スタック・・・トリプル!」

 その瞬間、植物の動きが一層激しくなり、みるみるうちに細切れになって行く。

「このまま釜に入れちゃいますよっと!」

 エルメが右手で軌道を描くと、その通りに風の球は動き、釜の中にすっぽりと入った。

「おおー!」

 見事な手際に拍手が起こる。

「やるねえ二人とも、エルメちゃんは魔法の制御が上手だねえ」

「!・・・ありがとうございます!!」

「次は何をするのですか?」

「次は、魔力濃度の高い水を入れて煮込む!だねえ」

「魔力濃度の高い水・・・そこいらの水じゃだめなのか?」

「・・・エルメちゃんはどう思うかねえ?」

「え!?えっと・・・普通の水であっても、後から魔力を注ぎ込めば大丈夫かと思います」

「だねえ。流石、やっぱり魔法に詳しいみたいだねえ。エルメちゃんとはいい魔法談義ができそうだ

ねえ!」

「恐縮です」

 近場の泉の水を釜一杯に入れた後、シュリが釜の下に熱を発生させる魔法陣を張り、ゆっくりと長

い棒でかき混ぜ始めた。

「何だかそれっぽいなあ」

「マッドな感じ、という奴じゃな」

 シュリは集中する。棒を伝い、釜の中に魔力を少しずつ注ぎ込みながら一定の速度でかき混ぜ続け

る。釜の中の温度もどんどんと上がり、汗を垂らしながらもシュリは一切集中力を切らせることなく

かき混ぜ続ける。

「もう少し・・・・・・そろそろかねえ」

 シュリは手をかざす。

「ここでありったけの魔力をぶつけるっ!」


ドーーーーン!!


 爆音と共に白い煙が噴き出し、シュリの姿が見えなくなってしまった。

「シュリちゃん!大丈夫ー!?」

「ぶえっほ!げほげほ!・・・大丈夫、大丈夫だねえ」

 直ぐに煙の中からシュリが出てきた。

「どうなったんだ?まさか、失敗したのか?」

「いや・・・どうだろうねえ・・・」

 煙が治まるのを待ち、中身を確認する。

 釜の中身は固まっていた。触れてみると、弾力があり、完全に固まった訳ではないようだった。

「・・・・・・成程ねえ」

 シュリはそれを少し掬って手に取り、捏ねて球体にする。そしてその中に魔法陣を仕込んだ瞬間、

その球体はカチカチに固まった。

「・・・バンリちゃん」

 それをバンリに投げ渡す。

「それ、足元に投げつけて割ってみてくれないかねえ」

「足元に、だな?」

 バンリはその球をまじまじと観察した後、言われた通りに足元に叩き付けた。

「おお!?」

 すると、バンリの背中に半透明の四枚の羽が出現した。

「おお!あれはいつぞやの羽じゃな!」

「魔力が無くても魔法を起動できた・・・成功ってことですね!」

「・・・・・・そう、だねえ・・・・・・」

 確かに成功だった。だがしかし、何故かシュリの顔は曇っていた。

「シュリさん・・・?」

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