セイムからの依頼
冥界の外側に存在する「大社」を訪れた四人。大社は今日も多くの人でごった返していた。
「ここが大社なんだ・・・!人多いねー!!」
その中央に湖を抱き込むように建てられている。何階にも及ぶその建物の内側は廊下になっており、
外壁が一切無いため、そこを行き交う人々が下からでもよく見える。
「二人はここに来るの初めてなのか?」
「うん!初めて!」
「そうなんですね」
「ねーねー!これからあそこに入るんだよね!?」
セクテは目を輝かせている。
「はい。これからもう一人を迎えに行くつもりですし、依頼も中で受ける事になっていますから」
「わあお!じゃあ行こ行こ!」
セクテが我先にと大社の中へと向かって行く。
「セクテー、迷子になるぞー」
中は人がとても多く、様々な種族や種の人々が賑やかに行き交っている。セクテは建物だけでなく、
それらの人々にも目を輝かせ、忙しなくキョロキョロと周囲を見回している。
「前見てないと転ぶぞー?」
「はいはーい!」
返事だけで一向に周囲を見るのを止めない。
「見て見て!水の中からも人来てるんだ!そっかあ・・・水棲の人たちのことも考えてこんな造りになっ
てるんだねー」
「はあ・・・全く・・・・・・」
「・・・エルメって、何だかセクテの保護者みたいだな」
「そうなっちゃうんだよ。セクテといると、危なっかしくってさ」
「あー、分かる。ちょっと前までのハワーもそんな感じだった」
「それが今や勉強家さんですもんね」
「全く、子供の成長は早いもんだな!」
「二人も十分保護者じゃん」
一行は最上階へとやってきた。
「ここはあんまり人、いないね」
「最上階はこの大社を管理されている方々の仕事場だったり、住居となってますから」
「え!?そんなとこに来ちゃっていいの!?」
「ああ。ここにそのもう一人がいるからな」
一つの部屋のドアをノックする。
「メルリアさーん、起きてますかー?」
・・・・・・返事は無い。
「中、入りますよー?」
ドアを開け、中に入る。
部屋の中は陽の光が差し込んでいて暖かい。その陽の当たる位置に横たわっていた。しかも、二人。
「もう一人は・・・セイムか?何でいるんだ?」
メルリアは着物がはだけ、だらしなく眠り、セイムはそんなメルリアの太い尻尾を抱き枕代わりに
抱いて眠っている。二人ともとても気持ち良さそうだ。
「気持ちよさそー・・・わたしも寝るー!」
セクテも寝転び、セイムのもふもふな尻尾に抱き付く。
「ああ~・・・これは眠っちゃう~・・・・・・」
「寝るな!お前らもさっさと起きろー!!」
バンリが三人を鎌の柄で小突いて起こした。
「む~・・・姉上のような起こし方をするのう~」
「ふあぁ~・・・あ~気持ちよかった。・・・誰?」
「わたし、セクテ!」
「僕はエルメ」
「へぇー・・・エルメちゃんってさあ、グリムお姉ちゃんに似てるね」
「そ、それは・・・どうも」
「んー?」
セイムがエルメの顔をまじまじと見つめる。
「うう・・・」
「ほんとよく似てる・・・」
「さあさあ、セイムさんもそのくらいにして。メルリアさん、依頼を受けに行きましょう。今日中に
終わらなくなってしまいますよ!・・・って、そう言えば、どうしてセイムさんはここ?」
その問い掛けに、セイムは思い出したかのように手を叩く。
「あ!そうそう!そうなんだよ!今日はさあみんな、何の依頼を受けるか決めてるの?」
「いや、決まってないな。探すところからだ」
「だったらさ、今日は私からの依頼、受けてみない?」
セイムに案内され、やって来たのは死神界。その中心都市ゼントルムにあるこれまた中心にそびえ
立つ巨大な城「天界城」。その門前までやってきた。
「こここ・・・今度はここに入れちゃうの!?」
セクテがまた目を輝かせている。
「ここに用があるって事は、目的地は・・・」
「そ!書物庫だよ!」
セイムが門番に近付いて行き、やあ、と手を軽く挙げると、門番も気さくにやあ、と手を挙げて応
え、重厚な門を開いた。
「お偉いさんかよ」
「えへへ、いいでしょ~すごいでしょ?」
「うん!すごい!カッコイイ!!」
「ねえ、本当にお偉いさんなの?あのセイムさんって人」
「ええと・・・そう言う訳ではないかと。恐らくですが、お城の中の書物庫で司書をしていらっしゃる方
が居まして、その方とお友達で、チームも組んでいたりするので、そのせいかと」
「成程。コネというか、ツテというか、そんな感じか・・・」
城内の広く、長い廊下を進んで行く。
「わあ・・・!きれいで広くてすっごーい!これがお城・・・!」
やはりセクテは頻りにキョロキョロしている。もうエルメも注意しない。というよりかは、エルメ
も見慣れない内装に興味を惹かれていた。
やがて、一つのドアの前に辿り着く。
「さ、どうぞ」
セイムがそのドアを開ける。
「わあ~!すごーい!!」
「これは・・・あっちも・・・こっちも!全部本・・・なのか・・・!?」
広い空間に高い天井。その外周全てが本棚で埋め尽くされており、どの本棚にも隙間無く本が収め
られている。
「みんな、お待たせー!」
「お、セイム。やっと来たか」
「ラキエルちゃんたちもちゃんと一緒・・・って、知らない子たちもいるね」
「はい、紹介しますね。セクテさんとエルメさんです」
「私はメイエル。見た通りの天使族です。こっちは私のお兄ちゃんのカイエル。で、あっちの方でお
っきな釜とにらめっこしてるのが、ここの司書もしてるシュリちゃんだよ」
「シ・・・シュリ!!??」
その名前にエルメは固まった。
自分の背丈よりも大きな釜の前で何やら考え込んでいる猫種の人物がいた。
「シュリちゃーん!みんな来てくれたよー!」
「ん、ああ、きてくれたんだねえ」
「このでっかい釜は何してんだ?」
「鍋じゃろ!皆で美味しく鍋でもするのじゃろう!」
「いやいや、実はねえ、ミーニちゃんから依頼されてねえ」
「ミーニさんからですか?」
シュリは一枚の紙を取り出す。
「私は今、この紙に書かれているモノを作り出そうと思案してるんだよねえ」
その紙を広げると、そこには簡単な絵と文字が書かれていた。
「これは・・・どう言う物なんだ?」
「『マキちゃん』って言う、魔法を記憶させておける道具だねえ」
「ああ!ミーニさん、使ってました!あれの事だったんですね!」
「実際に使って見せてくれたんだけどな、あれは確かに便利そうだったな」
「で、それを作る手伝いをして欲しいってことか?」
「その通り、だねえ」
「むう・・・この鍋はそのための道具だったという訳かのう。残念じゃのう~」
「それで、私たちは何をすればいいのですか?」
「材料集め、だねえ。そのために、冥界の中に一緒に行って欲しいんだよねえ」




