表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒翼のカナエル  作者: 氷花
プロト・ゼウス編
183/240

外へ(後編)

「何と言うことをっ!」

 デルフが強靭な尻尾を振り下ろすも、それは一瞬でその場から消え、一撃を脇腹に叩き込む。

「ううっ!!」

 吹き飛び、瓦礫の中に突っ込む。

「再度警告する。汝は対象外である。大人しくしていれば危害は加えない」

 背に大きく真っ白な翼を携えた少女は、冷酷な目で熱のこもらない言葉を口にする。

「大人しくしていれば・・・?有難い忠告ですが、それを聞き入れるつもりはありませんわ!」

 デルフは立ち上がり向かって行く。

「理解不能。勝てないと分かっていて何故自らの生を脅かす?」

「竜爪連斬!」

 デルフが爪を振り回し、連続攻撃を仕掛けるも、当たらない。

「光拳」

「ぐふぅっ!」

 対し、白翼の少女の攻撃は鋭くデルフの胴体に突き刺さる。

 しかし、それでもデルフは倒れない。

「理解不能」

「り、理解して頂かなくても結構です。これは・・・わたくしの信念の問題なので!」

「理解・・・不能」

 身体中ぼろぼろでありながらも立ち続けるデルフへ向け、白翼の少女は静かに止めの一撃を叩き込

むべく構える。

「散ろうとも、最期のその時まで勇ましく!」

 デルフは迎え撃つ体勢を取る。

 と、その時、

「チェイン・ストリーム!」

 突然、白翼の少女の足元から無数の鎖が噴き出し、中に閉じ込めた。

「これは・・・!」

「無事か!?デルフ!」

「エルメさん!」

 エルメはデルフの全身を眺める。

「な・・・何ですの!?」

「デルフ、お前は下がれ!」

「な!?わたくしに逃げろと申しますの!?生憎、そういう訳には・・・」

「聞け!まだここいらには負傷者や逃げ遅れた奴らがいる。お前はそいつらを纏めて避難させるんだ!

・・・お前には人望がある。だから声も届くし纏めて導ける。デルフにしかできないことなんだ!」

「ですが・・・」

 その時、白翼の少女が鎖を蹴散らして出てきてしまった。

「ああいう奴の相手は、そういう血筋の奴に任せときゃいいさ!」

「エルメさん・・・分かりました!ご武運を!!」

 デルフは一礼すると、走り去って行った。その姿を白翼の少女は目で追う。

「・・・逃走確認。追撃の必要無し。捜索再開」

 そして、目の前のエルメには目も暮れず、翼を広げて何処かへ飛び立とうとする。

「待てよ!・・・ゼウス、ちゃん」

 その言葉を聞いた白翼の少女の動きがピタリと止まる。

「全部知ってるよ?君のことも・・・僕自身のことも、ね」

「イレギュラーを認定。削除します」

 一転、白翼の少女ゼウスは目の前のエルメを標的と捉える。

「やっとこっち見たねっ!?」

 その瞬間、ゼウスの姿は消えていた。既に懐まで跳び込み、拳を振るっていた。

 しかし、エルメの身体はそれを回避し、その上ゼウスの後頭部へ踵を浴びせていた。

 吹き飛びながらも受身を取り、体制を瞬時に立て直したゼウスは、予想外の事象を分析する。

 確実に不意は討っていた。あの速度の攻撃を回避するだけでなく、反撃まで行ってくる確率は極め

て低いはず。しかしながら、何かしらの魔法を使用した様子も形跡も無い。考え得る可能性は、単な

る反射神経及び身体能力。脳と身体の反応速度の差が極めてゼロに近いと推測される。

 一方のエルメは驚いていた。

「何だ今の速さは・・・全く目で見えなかったぞ・・・・・・」

 ゼウスの姿が再び消える。縦横無尽に動き回り、撹乱してくる。

 エルメは構えたまま身体を動かさず、目だけで周囲の様子を伺う。

「光拳」

 背後からの鋭い突き。しかし、やはりエルメの身体はそれを回避する。

 ゼウスは再度撹乱し、幾度も攻撃を試みるも、全てかわされる。

「相手はこちらの姿を捉えられていない。加えて何処から来るか予測できないはずなのに何故・・・・・・

光輪脚」

 ゼウスは脚に鋭い光の輪を纏わせた蹴りで胴体を狙う。だが、これもかわされ、反撃の蹴りを顔面

に受け、瓦礫の中へ突っ込んだ。

「ふー・・・・・・目で追えない速さであんなに動き回られたら、攻撃当てるので精一杯だよ・・・厄介すぎる

ねこれは・・・」

「エルメちゃーん!おーい!」

「ん・・・この声は・・・セクテ!?」

 セクテが走り寄ってきた。

「セクテ!今こっちにきちゃだめだ!!」

「どうして?」

「ここにはあいつが・・・」

 その時、エルメたちの頭上に大きな光の球ができていることに気が付いた。

「スコール・ライト」

 無数の光の槍が二人に降り注ぐ。

「くっ!」

 エルメが咄嗟に障壁を展開し、傘にする。

「・・・で?ママはどうだった?」

「えっとね、任務・・・もらったの・・・・・・」

「任務?」

「だから・・・行かなきゃなの!それでエルメちゃんに・・・言いに・・・・・・」

 エルメはセクテの今にも涙してしまいそうな悲しそうな表情から、これが永遠の別れになるかもし

れないと悟った。

「・・・行くよ、僕も」

「え!?で、でも・・・」

「同じだよ、今更。ゼウスに逆らっちゃったしね。だったら、僕も一緒に連れて行ってよ!」

「エルメちゃん・・・うん!直ぐに準備するね!」

 セクテは懐中時計を取り出し、魔力を込め始める。

「『兎』確認。制限解除。全力で排除します」

 上空に飛び上がったゼウスが十字を斬る。

「グランド・クロス」

 巨大で眩く輝く十字架が落ちてくる。

 対するエルメも魔力を込めた指先で小さな十字を描き、右手で握り締め、そこに大量の魔力を一気

に注ぎ込み、迫る十字に向かって撃ち出す。

「ワイルド・クロス!」

 輪郭の整わない不恰好な十字架が受け止め、競り合う。

「セクテ!」

「もうちょっと・・・」

 エルメの十字が次第に押し戻されていく。

「出し惜しみしてらんないっ!」

 エルメは追加で魔力を注ぎ込み、二人の直ぐ真上で停止させる。

「ぐっ・・・!さっき・・・マキちゃん作ってたせいで・・・魔力が・・・」

 足りない。もう持たない。

「セクテェ!!」

「できたー!行くよ!『外』の世界に!タイム・ジャーンプ!!」


 地面には巨大な十字の痕ができていた。だが、その場にも周辺にも二人の姿は無い。

「反応・・・消失。逃走された可能性、極めて高いと判断。一度帰還します」

 ゼウスもまた、その場から消えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ