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黒翼のカナエル  作者: 氷花
不死と希望の悪魔編
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不安

 春。一日の授業が終わり、皆、それぞれの家へと帰って行く。日常に戻った少女たち。フェロー

リアは、家事の全てをこなしてくれていたベリコが悪魔界に残る事となり、一人では生活して行け

ないということでハイラント邸にお世話になっていた。

 ハイラント邸での生活は新鮮だった。大きなお屋敷の中で生活するというのもそうだし、毎日の

食事を大勢で一緒に食べるというのも何だか不思議な感じだ。ここでの暮らしのいい所は、毎日が

賑やかな所だろうか。後は勉強も教えてもらえるし、料理もベリコに負けず劣らず美味しい。

 ベリコ・・・・・・。未だにふとしたときにベリコの事を考え、寂しさを感じてしまうことがあるのが

情けない所だ。

 帰り道、フェローリアが足を止める。

「・・・ん?フェローリアちゃん、どうしたの?」

 そんな中、今抱えている不安要素がある。それは、

「・・・おい!いい加減にしやがれ!」

 そう大声を出し、振り返ったそこには誰もいない。しかし、少しするとそれは姿を現した。

 その人物は角を生やした大男。不死を求めてフェローリアを狙っていた元七魔の鬼クリークだった。

「気付いていたか」

「当たり前だ!お前・・・まだおれのことを狙ってやがんのか!」

 クリークは悪魔界でヘルという人物の力で若返った。しかし、奴が本来求めていたのは「不死」。

言わば、猶予が伸びただけ。まだ狙われていたとしても不思議ではない。

「安心するがいい。もう狙わん。いや、もう狙えぬと言った方がよいか」

 クリークは言いながら自身の首を指し示す。そこには首輪が取り付けられていた。

「・・・それは?」

「魔王に因る物だ。これで監視されている。我が次に魔王の目に余る行為をすれば、容赦無く首が飛

ぶことになる」

「首輪って、制御するためだけじゃないんだね・・・」

「罪人用の首輪と言う物もありますが、それとも違う、特別製の物のようですね」

「それは分かった。なら、なおさら何の用だ?何でまだつけ回す?つーか、こっちに戻ってきてから

ずっと監視してやがんだろ!」

「・・・・・・警護だ」

「警護お?」

「この首輪の制約を緩和、及び取り外すために善行を積めと言われている。故の警護だ」

「善行だろ?他にできることがありそうだがな・・・・・・」

 不器用なのか?それとも罪滅ぼしのためだったりでもするのか?何にせよ、

「何だろうと、そんな風に付け回してたら、不審者に見られるぞ?」

「そんな事は無い。我は誇り高き鬼である!」

 自信満々に胸を張る。

「関係ねえって・・・・・・」

「クリークさん、ハイラント邸に来ますか?」

「はあ!?何言ってやがんだラキエル!?」

「そんなコソコソしていては通報されてしまうのも時間の問題です。警護をしたいのならば、ハイラ

ント邸にいるヒイカさんにそのようにお話すれば許可を頂けるかもしれませんよ?」

「許可をもらえれば、堂々とできるってことだね」

「ハイラント邸・・・よかろう。話をしよう」

「まじか・・・・・・」

 クリークを連れ、ハイラント邸まで帰ってきてしまった。広間にはヒイカも、魔王グリムもいた。

「魔王グリム!?」

「あら、クリーク。何か用でも?」

 クリークは明らかにどうようしていた。そのクリークに代わり、ラキエルが事情を説明する。

「クリーク・・・私は善行を積めと言ったわよね?世の中には沢山困り事を抱えている人が居るっていう

のに、何故真っ先に護衛を・・・大社で依頼でも受けたらいいじゃない。知らない訳でもなし」

「そ、それは・・・・・・」

「理由があるならはっきり言いなさい。納得の行く理由であれば、護衛でも構わないわ」

 クリークは少し俯き、考え、答える。

「す・・・・・・好かんのだ・・・人の多い所は・・・・・・」

 クリークは人見知りだった。自分の配下の者ならまだしも、そうでない、不特定多数の人々のいる

場所には普段から足を運んだことなど無かったのだ。それ故に勇気が出ず、見知った者相手に善行を

積もうと考えたのだった。

「はあ~・・・・・・」

 グリムからでかい溜め息が漏れる。

「アウト、よ」

「何だと!?」

「いや、何だとって・・・普通に考えてだめだろ」

「仕方ないわねえ。・・・フリーミと、後二人紹介するから、その四人でチーム組んで大社で依頼をこな

しなさい。誇り高き鬼が、この程度の事から逃げたりは・・・しないでしょう?」

「む!・・・・・・と、当然だ!」

「なら決まり。明日の朝、大社で待ってなさい。私が後の三人を連れて行くから」

「・・・承知した」

 どうやら話は纏まったようだ。クリークは俯きがちに屋敷を出て行った。

「また迷惑掛けたわね、フェローリア」

「全くだよ・・・あいつ、案外不器用なのな」

「世間知らずなのよ。周りのことは配下にやらせて、自分は住処から出ないタイプだから」

「引きこもりなんだね」

「ああ見えてね」

 クリークもこれでいい方に変わってくれればと頭の片隅で思いつつ、これで漸く平和な日常が戻っ

てくると、胸を撫で下ろすフェローリアだった。

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