ベリコvsミカエル
次の瞬間、ベリコが凄まじい砂埃を巻き上げて地面を蹴り出し、物凄い勢いでミカエルに向かっ
て直進していく。対するミカエルも光を纏い、高速で向かい打つ。
そして、互いの拳がぶつかり合う。
「ふううん!」
「アウェイキング・ライト!」
どちらも一歩も退かず、競り合っている。
その光景にフェローリアは驚きを隠せなかった。
「ベリコの力を受け止めてやがるだと!?」
ベリコの底知れない怪力。力で負ける姿など全く想像もできなかったその拳を、あの天使は正面
から、しかも片手の拳で受け止めている。この光景は現実のものとは思えなかった。
傍から見れば互角に打ち合っているように見える二人だったが、当のミカエルは違った。
互角であるのは、ミカエル自身の能力によるものだったためだ。ミカエルは自身の「目覚め」の
力を用い、己の身体能力を覚醒させる事で互角まで高めていたのだ。言い換えれば、覚醒させても
漸く互角。ミカエル自身、本気でないにしろ、それは相手も同じ。単純な殴り合いは避けるべきだ。
しかし、この戦いの目的は勝利することではなく、血の気の多いベリコを満足させることにある。
手っ取り早くそうさせるためには、相手の得意な分野で戦い、力をある程度引き出させる必要があ
るだろう。
「・・・少々気張りましょうか」
突如、ミカエルが加速する。目で追えない程の速さで縦横無尽に動き回りながらベリコの身体に
打撃を打ち込んでいく。ベリコは一切防御はせず、感覚で腕を振るい、迎撃を試みるが、全く掠り
もしない。
「ふふふ!面白いくらい当たらないものですね!」
こんな状況でもベリコの笑顔が絶える事はない。攻撃が効いていない訳ではない。ただただ、楽
しいのだ。自身に対し、打撃攻撃でダメージを与える事ができる相手と戦えて、一筋縄でも二筋縄
でも行かない相手と戦える事が楽しくて仕方がないのだ。
「それでは、私も!」
ベリコの身体を再び黒が覆う。
「インフルエンス!」
黒がベリコを中心に放射状に放たれ、大地を駆け抜けていく。
「ん・・・!」
それだけでミカエルには何の影響もない。しかし、ミカエルは気が付いていた。その変化に。
ミカエルは攻撃の手を止め、一旦距離を置いて様子を伺う。
「行きますよ。ミカエル・・・さん!」
ベリコは自分の胸に手を当て、握り締める。
「デビル・アーム・・・フェンリル!」
次の瞬間、ベリコの身体が獣皮に覆われ、口先は尖り、獣人のような姿に変化した。
「あの姿は!?」
「悪魔王としての力、ですか」
「ウウウウウ・・・」
獣化したベリコは鋭い目付きで睨みながら唸り声を上げている。
と、突然ミカエルに飛び掛った。その動きは極めて速い。瞬時に反応し、回避した先にもすでに
追いついてきていた。ミカエルがどれだけ複雑に動き回ろうともぴったりと張り付き、獣化したこ
とによって得た鋭い爪を振るってくる。
「ベリコの奴があんな動きをするなんてな・・・!」
「ベリコちゃんが速さを得たら・・・」
「恐ろしい事この上ないわね・・・」
力はとてつもなく強いが動きは遅いというのがベリコだ。それが速さをも得て、しかもあんなに
縦横無尽に動き回れるとなったら血の気が引く想いである。
そんなベリコに対してもミカエルは冷静だった。
相手の動きを見極め、距離は離せずとも確実にその攻撃をかわし続ける。
するとベリコが足を止め、その場で腕を振り上げる。
「デビル・アーツ・ヘカトン!・・・スコール・ハンズ!」
ベリコが腕を振り下ろすと、空間のあちこちから腕が現れ、ミカエルに襲い掛かった。
前後から上下左右、至る所からの規則性の無い攻撃に対し、ミカエルは自身の「信念の剣」たる
盾を取り出し、それを二つに分かって両手に装備し、回避と受け流しを織り交ぜてその猛攻に対処
する。
怒涛の攻撃にミカエルの意識がベリコから離れた瞬間、ベリコが激しく地面を蹴りだし、凄まじ
い勢いで突っ込んだ。
その一撃に対し、ミカエルの反応が遅れる。
「!」
それでも左の盾で一瞬受け止め、その間に右手人差し指で小さく十字を斬り、握り締め、その拳
で向かい撃つ。
「クロスド・ライト!」
拳同士が衝突すると同時に激しい十文字の光が辺りを包み込んだ。
光が治まると、二人は距離を置いて向かい合っていた。
「ウウウウ・・・ふう・・・」
ベリコの身体が獣から元に戻る。そして、
「はぁ~!いいですね!素晴らしいです!」
ベリコが満面の笑みを浮かべる。
「ふう。満足して頂けましたか?」
「ええ。それなりに」
二人は互いに歩み寄る。
「では、対話に応じて頂けますね?」
「いいですよ。ベリアルさん」
「あ・・・は、はい!」
ベリコに呼ばれ、二人の激しい戦いに呆然としていたベリアルが慌てて駆け寄る。
「こちらの方は?」
「元悪魔王の方です」
「成程。ベリアルさん、でしたか。同席、宜しいですか?」
「はい!了解です!」
そしてそのままその場で三人による対話が始まった。




