絶対のワーズライト 一話
「コーヒー豆をくれ」
「あいよ、100グラムで250ゲルポだ」
店主は客の少年にコーヒー豆を提供すると、少年が代金を払う前に匂いを嗅ぐ。
「おい!このコーヒー豆、傷んでるぞ!」
「なんクセつけんなガキ!コーヒーなんてこんなもんだろ」
「あ?」
店主の怠慢に少年は睨みをきかせる。
「ひっ……!?」
少年の魔力が尋常ならざるそれで、店主は本能的に恐怖する。
「こんな雑な商品を提供するくらいだ。アンタの店は大した事ねえな」
「な、なんだってんだ……」
少年が店からを出ると、店主は腰を抜かして床にへたりこむ。
「おいおい、またやったのか」
「なんだよ……」
――知り合いの青年に声をかけられた少年はうんざりしたようにため息をつく。
「私用で気に入らない店をしょっぴくのは止めてくれないかワーズライト君」
後からやってきた眼鏡の男は帳簿をめくりながら疲弊している。
「コーヒーを馬鹿にする奴は宵越しの緑茶を飲んで逝けばいいんだ」
「たしかに水出し緑茶は2日経つと不味いな」
「なに丸めこまれてるんですか」
ワーズライトは魔導一族の属家カルヴァロスの嫡男。
「まあ、腐った豆を売りぼったくりをした店主なので仕事といったら仕事ですが」
ギァング組織、悪徳星府高官を裏から砕く狂犬と呼ばれている。