元神の贖罪 一話
――私は元は神だったのだが人間の女を愛し、大神主の怒りをかった。
神力を封じられてからは、贖罪に明け暮れながらとある帝国で騎士団長をしていた。
しかし皇帝は弱きを強いたげる残虐で嫌気がさして転職。
「やっと出来たわ」
少女は作りたての薬品を箱につめる。それを台車にのせていく。
「ではいってくるよ」
――今はエリア:チャイカの滅多に人が通らぬ山道で仙人ごっこをやっている。
「薬はいらんかねー」
まあ実際は贖罪といいながらただ無駄に人間界を満喫しているに過ぎない。
ある意味ではいつも戦いを挑みにくるうざい神のいるあの世界にいるよりここが平和。
あとは愛した女の生まれ変わりでも見つかれば最高だろう。
「兄ちゃんも大変だなあ。今時は手製の薬なんて誰もかわんよ」
最近は田舎の村人もハイカラな近代がどうのいって古きを排除する動きがみられる。
■■
――ジャラリ、鎖が揺れる。兵士は女を繋いで城内を歩く。
「ふほほ……待っていたぞ妃よ!」
肥えた男が玉座の上で飛びはね、腹を揺らしながら近づいた。
「誰があんたの妃になんてなるもんですか!!」
「皇帝陛下にむかってなんてことを!」
女は怒りに震えながら皇帝を睨んだ。
「フォっフォっ祝言が楽しみだのう~白光巫女よ」
浮かれから怒りなども消し飛ぶ。
「お前は愚かだな」
「なによアタシが馬鹿だろうと天才だろうと関係ないでしょ騎士団長さん」
女は後先考えずに挑発した。
「あの皇帝に何を言おうと無駄だろう」
騎士の男はそれに乗らず話を続けた。
「それは神の加護と1000年の繁栄を助けた宰相ヴェルヴォードがいるから?」
「ああ」
ヴェルヴォード、ジュグ帝国を1000年難攻不落にしている男。
彼は1000年をも青年のまま、すなわち不死者だ。
「つまり皇帝より宰相が怖いってわけね」
「そうだ」
ヴェルヴォードはなぜあんな皇帝の国に執着しているのか、誰もが疑問をいだいている。
「行け」
「なんのつもりよ」
牢の扉を明け、男は顔をそらした。女はそのまま城を脱出する。
「おおっと!」
「く……」
黒髪の男が銃で左肩を撃つが、女は構わずに逃げた。
■■
「思わぬ邪魔がはいったが……さあ、とっとと騎士団長の居場所を言えよ。かわいい妹ちゃんがさっきの女みたいに撃たれてもいいのかァ?」
黒衣の男は銃を少女の頭につきつける。
「……騎士団長なら城にいる」
「ならさっさとそう言えばいいだろ。俺様に余計な手間かけさせやがってなにがしたいんだよ人間ってやつは」
■■
「黒闇の巫女よ!」
「逃げないと死人がでるぞ!!」
黒き巫女は死者の弔いで鎮魂の歌を紡ぐ。人を冥界へ誘う死の女神と忌み嫌われる存在だ。
「黒闇の巫女が城になんのようだ」
「そんないいかたはないでしょう。私が陛下に白光の巫女を差し出したのよ」
兵士の声に騎士団長は皇帝の元へ行かせてやれと進める。
本来ならば死を司る巫女など門前で止める筈なのだ。
「なにかたくらみでもあるのかしら」
騎士団長は馬に乗り、城を出ていった。
■■
「白光の巫女がいません!!」
「なんだと!?騎士団長はなにをしていた!!」
「団長殿もいません!!」
「やつめ……女と逃げたな!!追ええええ!!」
「あら取り込み中?」
「黒闇の巫女か」
「いそがしいなら私はかえります」
「白光巫女が消えた」
「え……」
「服の色は違えどお前も巫女だ。白光巫女が見つからなければお前が妃になれ」
「……は私が?」
「陛下、このような者が城にいては指揮が下がります」
近衛兵は死の女神などを妃にとれば城が傾くと危惧した。
「本気でいっているのか貴様、巫女など所詮飾りだろうて、白光巫女がおかしいだけで女は金と妃の地位をほっするものぞ」
「ですが……陛下のことではありませんが女は金より顔、イケメンをとるのでは?」
「女は顔より金が好きな生き物だ。宝石やら花やらを定期的に与えればおとなしいものよ」
「……妃など私にはもったいないですわ。必ずや白光巫女を陛下の元へ!!」
「そうかそなたは義理固いのう。では側女にどうだ」
「い……」
「おい騎士団長クルストはいるか!?」
「なんだ貴様」
「クルスト団長ならば10数年前に引退なさった。今は別の人物がやっている」
「ならいい。じゃあな人間の帝王」
「待て無礼者!!」
「人間風情が俺様に指図か?舐めてかかると丸焼きにするぞ!!」
「ひいい……!ヴェルヴォード……!!」
「これはこれは力の神ではございませんか」
「あ?お前はミカンループの神遣か、ここでなにしてる」
「実は……」
「なるほど、1000年いるということはここに奴もいたな?」
「奴とは?」
「決まってるだろ。追放された守護の神パスティルだ」