君が邪魔するからやりたいことはやれないってのも言い訳 2
夜の公園で眠りこけていた青年が帰宅しようとしていると、前触れもなく音色が響く。
それを奏でるのは季節にそぐわない薄着の少女。
ただの人間に判別できないはずの暗がりで、容姿がわかるのは彼が只の人でないような、特異な目を持つからだ。
彼女はこちらに気づいていないのか、目もくれずに自分の世界で弾き続ける。
「これ無料でいいんですか?」
普通なら近所迷惑になる音も、高クオリティだと気にならないものなのだろう。
誰も文句を言いにこないし、通りがかる人も聞き惚れている。
「音楽家は誰だ?」
「暗くて顔が見えないけど、そこのベンチにいる男の人じゃない?」
しかし……その演者をベンチの青年と勘違いしている様子のまま人々が帰宅した。
「お嬢さん……君は人? それとも霊魂?」
「私が見えるの?」
「ああ、とてもよく見えているよ」
「一応人間だけど、私は透明人間なの」
◆
「どうしたよ」
あれから、路地で見かけた人影を思い出していた。
「なんでもない」
その正体が知りたくてたまらない。思い立ったまま、放課後は路地へ直行した。
不良たちに遭遇する危惧より、人影に会いたい気持ちの強さが勝る。
「……」
本を片手に、白いワンピースミニスカートの女の子がいた。
見たこともないくらいの綺麗な顔立ち、儚げなまなざしに一目で我が心は奪われていた。




