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君が邪魔するからやりたいことはやれないってのも言い訳  作者: 瀧野憂
魔導師は酒場で生まれた
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魔導師は酒場で生まれた ①酒場のウェイターから魔道士へ

オレは寂れた小さな村の酒場で働いている。


「ビール二杯とデビルサーモンのマリネちょうだい~」

「はい!ただいま…あ」


ついつい足を突っ掛けてしまい。

手から落ちた食器は粉々に割れた。


「キャー皿を割った姿も素敵!」

「ビール滴るいい男!!」

この店はなぜか女性客が多いのでほとんどの事は許してもらえる。


「ははっまたやっちゃったよ」

「おい…マルファ!!」

大男が背後から嫌なオーラを放出している。


「オメーはなんで普通の事ができねぇ!!」

オレはこの店で働き初めてから今日まで皿を割ったりジョッキを割ったり失敗だらけだった。


オレを一言で表すと“なぜクビにならないのか不思議なくらいダメな奴”だ。


以前マスターにクビにしない理由を聞いたら“女性客がいなくなると困るから”と言われた。


素でやった事がなぜかウケてしまっただけだが、どうもそれに救われていたらしい。


「スイマセン」

「あはは!!!この仕事向いてねぇんじゃね?」

ジェットは大笑しながらオレに言った。


「向いてないから他の仕事って言われてもな…」

「お前なんでこんな廃れた村の酒場で働いてんだよ町に行けばもっと垢抜けた女が…」

オレは三年前以前の記憶がない。

三年前、酷い怪我でこの村の入り口に倒れていた。

記憶をなくして右も左もわからないオレを偶然拾ってくれたのが酒場のマスターで、その恩返しに店で働いているのだ。


「キャー!どじっ子マルファ君よ!」

「顔はいいけど皿を割る系マルファくんよ!!」

小さな村ではちょっとした有名人だ。


「マルファ、山ぶどうがなくなっちまった」

「じゃあ森に行ってとってくるよ」

材料調達くらいはできるし。


「こんな夜中にか?明日でいいだろ」

「オレは朝弱いんだよ」

この酒場は昼から開いている。

明日の開店に間に合わせるには早朝にいく必要がある。


「化物が出たらすぐ逃げろよ」

「平気だよ今まで大丈夫だったんだからさ」


しかたなく森へ向かった。



「うおわあああああ!?」


森に入り、暫く歩くと落とし穴に落ちてしまった。


「だれかー!!」

「ん?」


通りがかり、青年が気がつき出られた。


「ありがとう。オレはマルファ、貴方はなぜここに?」

「俺はヴルフだ。ついさいきんまで家事手伝いをやっていて、都会で働こうと思って村から出てきた」


オレより年上なのに今さら出稼ぎにきたんだなあ。もしかして流行りのニィトってやつかな。


「あれ、都会って言ってもここも相当な田舎だけどなあ」

「マジかよ?」


「まあ仕事を探してるならオレの働いてる酒場に言ってみたらどうかな」


オレはブドゥを狩らないといけない。


「いや、案内してくれねーと」

「ああ、ごめんごめん」


■■


『あー働きたくねーけど仕事がねーよ』


そろそろ就職しなくちゃいけない年だが、俺はくすぶっていた。


家族は昔から何もできない俺を呆れたように見て、落胆すらしなくなった。


俺は何もできない。


人と話す気はあっても、何もしなくても他人に嫌われるし、履歴書を書くためにペンを持てば異常に汚い字、家事をしようにも皿を持てば手が震える。

歌を歌えばひどい音痴でガラスが割れて大惨事を招く。


『もう死ぬしかねえ』


そうだ、魔導師になろう。



「ってわけできた」

「ああ、やっぱり」


■■


「俺は……」


同僚ジェットは身の上話をする。


『出掛けてくるね』


買い物に出掛けた姉ちゃんが居なくなってもう三日もたった。

幼い頃に両親を亡くしたオレの、たった一人の大切な家族がいなくなってしまった。

村人は姉は死んだとか祟、神隠しだと噂をしている。

でもオレには姉が生きている気がしてならない。


『姉ちゃんオレ、強い男になって必ず見付けるからな』


骨のない姉の墓前の前で誓う。


『よし、一流の魔導師になって姉ちゃんを見つけるぞ!』



「みたいな」

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