捜査官の章・序章
やれやれまたかと思いながら、近頃起きた連続失踪事件について書かれたホワイトボードを見た。もうすでにたくさんの文字で錯乱している。昨日また新しい事件が届け出された。被害者はいたって家族のために真面目に働く普通のサラリーマンだ。昨日の新しい事件もそう。こういう通り魔的な事件は最近よくマスコミにとりあげられるが、今回はマスコミもいつもより騒いでいる。
「新井先輩!」
やれやれ、新人の若者らはこういう事件で妙なやる気を出すらしい。
「先輩、こいつの目的がわかりましたよ!こいつは異常犯罪者で幸せだった家族のよく末を楽しみにしているんですよ」
異常犯罪者か・・・俺と同じことを考えてたようだな。
「でも池谷、証拠ないから何も言えないぞ。」
彼が席にもどってから缶コーヒーを飲みながら考えてみた。警官長くやってこういう事件はなかった。異常犯罪心理学は大学で勉強したことあるが、日本じゃほとんどないから使えない。アメリカFBIにそういう資料が山ほどありそうだが。彼に聞くか・・・と思った。彼しか聞けない。そういうことは。
帰りに東帝大学を訪ねた。彼がちょうど生徒たちのレポートを採点してるところだった。
「なつかしいね。山禅くん」
「めずらしい来客だなー。」
かれは喜んでる様子だった。
「でどうした?」
「実は協力してほしい事件があって・・・」