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今日は二話掲載ですので、明日は投稿しないかもしれません。


追加です。

キャラ名で間違いを発見しましたので、また編集し直します。

×唯→○ゆう

です。

申し訳ございません。

 俺はあれから臥したまま動けず、梨絵さんは初対面の安藤兄妹にあんな姿を見られたせいで店の隅っこで小さくなっていた。

 そして安藤兄妹は目を点とさせていた。

 ちなみに、この光景は、梨絵の旦那で飯屋の主人である早一さんが店の奥から出てくるまで続いた。

 そんな事故ともいえる出来事から一転。

 今は席に着いて注文を終えて一息。

 ただし、俺はまだ泡を吹いて動けないので椅子を複数使って寝かされている……らしい。

 梨絵さん、容赦ねーっす。

 以上、現場リポーターの右侍でした……。



◇ ◆ ◇亜里沙◆ ◇ ◆



――同時刻、竹中家。

 私、竹中 亜里沙は珍しく昼過ぎに目を覚ました。

 こんな時間まで寝てたのはいつぶりかなぁ。

 そんなことよりも、お母さん起こさないとご飯がない。

 女の子だけど、武家に生まれ落ちて武術を磨いていれば、それ以外のこと(主に家事)に目を向ける暇はない。

 唯一気にしているのは髪の毛の手入れぐらい……。

 その甲斐もあってか、お母さんに褒められるぐらいには髪の毛には自信がある。

「お母さん、お……は、よ」

 えっと、目の前の光景をありのままに説明するわよ?

 お母さんはいつも通りベッドで寝てるの。

 しかし、あの豊か過ぎる胸の谷間部分に由ちゃんが突っ込んでて、山を縦断するように玲ちゃんが乗っかって寝てるの。

 …………さて、これはどうしたものか。

 とりあえずお母さん起こすか。

「お母さん、お母さん、お母さん」

「んにゅ〜……。 姉さん、揉みしだいちゃらめぇぇ…………にゅ……」

 揺さぶってみるが、返ってきたのはこの寝言。

 私はつい膝から崩れ落ちるように臥せてしまった。

 どんな夢見てるの……。

 しかも姉さんて確か、あの顔はそっくりなのに体つきの方向性が真逆の人よね?

「もうお母さんたら、早く起きて」

「……ほぇ?」

 やっと目を覚ましてくれた。

 あぁお腹が空いた。

「ほら、お腹すいたから昼ご飯作って」

「うー……。 昼、ごはん…………あー、ふわふわのパイだぁ……いただきまーす」

 え?

 ちょっ、お母さん、なんで私の胸を掴んで……て、寝ぼけてるのね!?

 ていうか何て力なの!

 胸は痛くないけど、私の手で払い除けられないなんて……。

「えりりん……ずるいー……はむっ」

「私も、食べる……かぷ」

「い、いつの間に二人とも起きて……ないっ! 目覚めてっ……って、いやぁぁぁぁぁ!」

 亜里沙は思った。

 ――私、もうお嫁に行けない……。

 と。

 その後、亜里沙はしばらく部屋から出てこなかったとか。



◇ ◆ ◇右侍◆ ◇ ◆



 さて、義妹がいろいろと大変な目に遭っているとも知らずに呑気に飯を食っている。

「うんっ、やっぱ美味い!」

 枝梨の料理も好きだが、ここの飯も美味いな。

 メニューは白飯と野菜スープと野菜グラタン。

 俺のいつものお気に入りメニュー。

 安藤兄妹も同じものを食している。

「ふむ、何というか、心があったまる」

「舞もこのグラタンすきー♪」

「そうでしょー? どんどん食べてね」

 料理が好評で梨絵さんも早一さんも嬉しそうだ。

 ちなみに早一さんは優男風の人で、見た目に違わずに優しい人だ。

 夫婦仲は、こちらが胸やけするぐらいラブラブ。

 子供は一人おり、文官として内府に務めているそうだ。

「――ふぃー、ごちそうさん」

 腹いっぱいだ。

 結局、俺はご飯を五杯も食ってしまった。

「はい毎度。 えっと、銅貨十七枚になります」

 俺が出そうとすると、安藤兄が先に銅貨を出した。

「え」

「右侍、むりやり付き合ってもらった礼だ」

 あぁ、あの試合のことか。

 ならお言葉に甘えておこうかな。

「ごっそさん」

「ご馳走様でした」

「ありがとー」

「はーい。 また来てね〜」

 俺、安藤兄、舞ちゃん、梨絵さんの順に喋り、店を出た。

 さて、もう夕方か。

 今日も稽古は出来なかったな。

 試合はしたけど。

「それじゃ、右侍、一緒に千人頭頑張ろうな」

「おう。 舞ちゃんもな」

「はいっ」

 それを別れの言葉にしてそれぞれ家路に就いた。




 帰宅、と同時に良い匂いが鼻に。

 さっき食べたばかりという事実を忘れさせてくれそうなぐらいだ。

「ただいまー」

「おかえりー♪」

「おかえり」

「お兄ちゃん」

 枝梨は声だけだが、由ちゃん玲ちゃんが出迎えてくれる。

「ただいま。 あれ、亜里沙は?」

 二人の頭を撫でながら問うと、二人とも困ったような顔をした。

「亜里沙お姉ちゃん、お部屋から出て来ないの」

「ご飯も食べてないから心配……」

 何だろうか。

 まさか引きこもりに目覚めたのか?

「俺も見に行ってみるよ」

 二人を枝梨の手伝いに行かせ、亜里沙の部屋の前に来た。

「亜里沙、どうしたんだ?」

「っ!」

 中で驚いたような気配がした。

「腹でも痛いのか?」

「ち、違うわよっ。 馬鹿にしないでよね」

 違うのか。

 む、まさか……俺の乏しい女性知識をフルで稼動すれば、これは…………。

「……あれだ、父さんや母さんには黙っとくからさ。 うん、気分良くなったらしっかり食えよ?」

 俺は最大限の気遣いをして部屋から速攻で台所へ。

 うん、よくやったよ俺。




 父さんが帰宅した後の夕餉の席で、適当に亜里沙の引きこもりについては理由付けしてごまかした。

 亜里沙の分は枝梨が持って行ったみたいだ。

 夕餉が終わってからは順番に風呂に入っていく。

 俺は二番目。

 もう出てきて冷たい水を飲んでいる。

 在るはずのない炭酸なんかも欲しいが、水も悪くない。

 と、一心地ついたところで、玄関の方で慌ただしい馬の足音が聞こえた。

「竹中様ー! おられますか!」

「はーい、どうされました?」

 玄関には一番風呂を由ちゃんと玲ちゃんと一緒に入った枝梨が向かったようだ。

「はっ、将軍様と、千人頭殿に内府への緊急出頭命令にございます! どうぞお伝えください!」

 するとまた馬の足音が聞こえ、遠退いて行った。

「母さん、俺、父さん呼んでくるよ」

 玄関から戻った枝梨にそう告げると、俺は風呂場へ向かった。




 急いで風呂から上がった父さんと一緒に仕服(所謂、着物ってやつだ)を着て内府へと向かった。

 通されたのは、ホールのような場所。

 いくつかテーブルなんかを置けばダンスパーティーや立食パーティーなんかが開けそうなぐらい広い。

 しかし今は、蝋燭で照らしただけで薄暗い。

 そこへ入ると、父さんは周りにいた何人かの男と親しげに声を掛け合っていた。

 多分、集まっているのは将軍クラスを中心として二十人ぐらい、か。

 そうして適当な場所に立つと、中央からあの宰相、平岩が現れた。




「諸君、このような時間に呼び出してしまって済まない。 だが、これは王国の一大事だ」

 一同に緊張が走る。

「先刻、南方の魔物領より軍勢が出立したという報告がもたらされた。 既に緩衝地帯の草原を抜け、最前線の砦が攻撃を受けているかもしれん」

 誰からともなくざわつき始めた。

 俺はぶっちゃけことの重大さが分からない。

「そこで、討伐部隊の急先鋒を決め、明日の明朝に出陣してもらいたい。 敢えてこちらからは推薦はしない。 誰かおらぬか?」

 ……誰も挙手しない。

 こういうのって、誰かが手を挙げればみんな挙げる的なパターンじゃないのか?

「……無理もないか。 皆も承知の通り、これは危険極まりない戦。 しかも急なことで、明日朝までに用意出来そうな兵力は千」

 多いのか少ないのかは、場の雰囲気で分かる。

 でも、俺はチート持ってるし、何とかなるような気がする。

「宰相さん、俺やります」

 その時、ホールは驚愕と戸惑いが支配した。


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