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結果的に、二人の美少女は竹中家で養育することが決まった。
勝因は、枝梨を味方に付ければイケるという戦略が見事に的中したことだ。
とりあえず詳しいことは後で聞くとして、まずは二人の身嗜みなんかを整えさせることから始めることになった。
「お兄ちゃんて、ものすごく外からトラブル持ってくるんだね」
亜里沙の一言が痛烈だった気がするが、受け流すことにする。
父さんは渋い表情だったが、枝梨に説得されて結局反対はしなかった。
そして最後に、博愛精神の塊みたいな枝梨は始めから大賛成だった。
そして今も……
「唯ちゃんはぁ……ゆっちゃんね♪ で、玲ちゃんはぁ……れーちゃん♪ 私のことは、えりりんでもお母さんでもえりりんでも良いからね♪ よろしくね♪」
早速愛称を付けて頭をなでなでしまくっていた。
まぁ二人とも嫌がってないからいいか。
それにしても、なんでえりりんを二回も強調したのだろうか。
「ちょっとお母さん、まずは二人をお風呂に入れてあげてから頭撫でてよ。ほら、おいで」
俺に毒づいてた亜里沙も結局二人の世話を焼くことにしたみたいだ。
そういうことで、四人が風呂場へ行ったので必然的に居間には仕事帰りの父さんと俺しかいない。
どちらも一言も発しないまま、しばらく時間が経って、俺から口を開いた。
「……また、来年参加してみるよ」
何が、とは言わないが、父さんは十分に意を理解してくれたようだ。
「安藤の次男坊と、知り合ったみたいだな」
「あ、うん」
返事を聞くなり、何やら考え込む父。
何かまずかったのだろうか……。
いかに同じ国の中でも、家同士での裏の抗争なんかもあるというぐらいだ。
子供同士の付き合いでも大丈夫とは言い切れない。
「明日、これの中身を見ろ」
すると父は一通の便箋を取り出し、俺に手渡した。
「これは?」
「明日の朝見ろ」
……教える気はなさそうだ。
仕方ない、寝よう。
今頃になって疲れが出てきたし。
自室に戻ってベッドに身を委ねると、風呂場にいる女性陣の楽しそうな声が聞こえてきた。
「きゃーえりりんおっぱいおっきー!」
「不埒……しかもふわふわで柔らかい、だと……!」
「いやん、もぅえっちぃ♪」
「ちょっと三人共目的を見失ってるわよっ!」
「あらぁ、あーちゃんたらまた成長したのねぇ……。 右侍は巨乳ちゃんが好みみたいだし、大丈夫ね♪」
ちょっ、なんで俺の名前がっ。
「ほんとだー! お姉ちゃんのおっぱいもおっきぃ!」
「くっ……これが持つ者と持たざる者の差か……!」
多分、後者の玲ちゃんは……厨二……いや、何でもない。
「ちょ、三人とも手の動きがやらしいってば! てかお母さん、一体何が大丈夫なのよ! って、迫ってこないで! いやぁぁぁ……」
…………寝よう。
うん、強制終了だ。
その後もいろいろまずい言葉が聞こえてきた気がするが、無理矢理意識を闇の中に押し込んだ。
うん、朝だね。
でも昨日程は寝過ごしていない。
よし、まずは昨夜のイベントについては忘れよう。
うん、滅却滅却。
でもその前に、父さんからもらった 便箋の中身を確認してみることにした。
どれどれ……。
「……竹中 右侍殿、千人頭の任を命ずる故に外府へ出頭すべし、ってこれ……」
所謂、合格通知ってやつ?
でも合格通知は外府前の掲示板で午後から発表のはず……。
でも父さんがこんな悪戯とかする訳がないし……つまり、本物?
だとしたら、俺千人頭?
白兵戦参加者中、二百〜三百人中一人しか選抜されないあのエリート役職の千人頭?
白兵戦参加資格の最年少年齢である十四歳では史上十二人目の千人頭?
ちなみにその最年少千人頭は全員後にはデミア王国武官の最高位、征魔聖軍帥にまで上りつめている。
官位の意味は魔物を滅ぼす聖なる軍勢を率いる者、だそうだ。
「マジで冗談抜きで俺が千人頭……」
こん棒で殴られて気絶してた俺が、か……。
殴った奴は失格になった上に俺と安藤にふるぼっこにされた挙げ句、役所の厄介になっている訳なんだが。
「行くしかないな」
あくまでも期待はしない方向で。
寝巻から適当な服を着て居間へと向かった。
そういえば、服って前世とあんまり大差ないな。
と言ってもジャージを好む俺にはあまり縁のない話だけど。
前世で読んだ転生ものの小説の主人公よりもよっぽどこの世界に馴染んでいる気がする。
今の生活のままならチートもそれほど必要ない気がする。
魔法を使う具体的な機会も全然ないし。
ただ、もうすぐ初めての戦いに出るだろうから、新しい発見とかもあるかもな。
さて、外府に行きますか。
朝ということもあって大通りは通勤者以外はそんなに人通りも多くない。
旅人や行商人達で市が賑わう前に外府にたどり着きたいな。
と、家の玄関を出ようとしたところで一組の男女が立っていた。
「安藤と、妹さん?」
「おはよう右侍」
「おはようございます……」
言葉の通り、立っていたのは昨日に引き続きちょいオシャレな私服の安藤と、薄い青色のワンピースを着た安藤妹だった。
こんな朝っぱらからどうしたんだ?と聞く前に安藤が口を開いた。
「まずは、妹が右侍にお礼を言いたいってことだから」
その言葉に反応して安藤妹が一歩前に出た。
兄に似て美少女だなぁ。
なんか、書道とか茶道とか似合いそう。
あれだね、大和撫子ってやつだ。
特に黒髪のロングでストレートってとこがいいよね。
しかし体の発達はまだまだって感じかな。
「あの、兄と共に窮地を救って頂き、あ、ありがとうございましゅっ」
……噛んだね。
兄は苦笑いし、妹はせっかくの白い肌が真っ赤に茹で上がってしまった。
「……いえ、為すべきことを為したまでです」
どう返礼すべきか悩んだが、スルーして普通に返すことにした。
うん、可愛いから許す。
というよりも萌えたよ。
「も、申し遅れましたがっ、私は兄と双子の妹の安藤 舞とっ、申しましゅ」
……次は噛むまいと努力したのか、アクセントの位置がおかしくなってしまったご様子。
しかも最後に結局噛んでしまった。
うん、俺は突っ込まないぜ?
ここで突っ込むのは空気が読めてない証拠だよ。
ほら、安藤も無言で頭に手を当てているし。
「おっけ。 俺は竹中 右侍だ。 右侍でいいよ」
口調を変えたのは、ほら、なんか仲良くなれそうじゃん?
「あの、私のことも舞と呼んで下さい」
ようやく噛まずに言えたのは、やはり緊張感から解放されたからだろうか。
初対面の挨拶って緊張するものだしね。
「よろしくね」
「は、はいっ」
差し出した手に慌てて柔らかいく小さい手で握ってくれる。
「さて、妹のお礼と紹介が終わったところで、いいかな?」
安藤兄が改めてこちらを見つめる。
「おぅ、なんだ?」
ポケットから小さな見覚えのある大きさの紙を取り出した。
えーっと、確かそれは……。
「今朝一番にこれを右侍の父上殿から受け取ったんだけど、右侍も持ってるよね?」
「これか?」
そう、あの合格通知表だ。
「僕は千人頭に抜擢された。 右侍も、抜擢されたんじゃないか?」
「そうっぽいな」
なるほど、安藤も合格してたのか。
「君は……この任、受けるかい?」
「は?」
思わず素っ頓狂な声を上げてしまったが、安藤の問いの意味を理解していないことも事実だ。
はて、どういう意味なんだろうか。
すると、俺達の間を湿った風が吹き抜け、太陽は突如湧いた様に現れた黒い雲に覆われた。