4
ギャグセンスが欲しいです、はい。
指摘など、感想を頂けると大変ありがたいです。
書き溜めはしてないのでいつ途切れるかは分かりません。
目が覚めた。
俺は頭に軽く痛みを覚えつつ身体を起こした。
窓から外を見ると、太陽はいつも朝見るより高い位置にある。
前世時間で行けば大体十時〜十一時ぐらいか。
こんな時間まで寝ていたのはいつぶりだろうか。
いつもと違う朝を迎えて不思議な気分を味わいつつ廊下を渡り、居間に入ると、枝梨が縁側でひなたぼっこをしていた。
「おはよう」
「あら、お寝坊さんね。 おはよ」
枝梨はそう言うと、バターを塗ったパンと昨日のスープをテーブルの俺の席に支度してくれた。
美味しく朝餉を頂いた後、俺は枝梨からお使いを頼まれたので市に繰り出した。
ちなみに亜里沙は既に稽古中。
さて、このデミア王国はハッキリ言ってでかい。
城壁の端から端まで歩くだけで半日弱かかる。
なので四つのブロック(北西、北東、南東、南西)に分けて商店や市が立つ。
そして俺は一番近所の南東の市にやってきた。
「やっぱスゲー人出だな」
行列があったりするわけではないが、冷やかしの客だったり旅人なんかがいるもんだから通行はかなりしにくい。
「あ」
「ん?」
見覚えのある顔……しかし友人なんて数える程しかいないので思い出せない方が不思議だが、はて。
まだ本調子じゃないのかもしれんな。
「君、右侍君だよね? 昨日は負けたけど、戦場では負けないよ」
……あぁ、安藤か。
昨日と全く雰囲気が違うので別人みたいだ。
「今暇かい?」
「いや、お使い中なんだ。 すまんな」
「なら手伝うよ」
好意的な申し出を断る謂れもないので同行することにした。
本音を言えば、可愛い女の子が良かったと思わないでもなかったが、こういうライバル関係も悪くないと思い直す。
お使いで頼まれていた物を全て買い終わったところで、話は昨日の戦いについてに移っていた。
「右侍は、どうやって僕のカウンターを返したんだい?」
やはり、というか当然と言うべきか気になっていたみたいだ。
なんせ俺も気になってるし。
多分、チートだろうという結論は出てるが。
「……反射的にだよ。 防衛本能的な」
「なるほど」
言葉では納得しているが、まだ完全には納得していない様子。
俺も確証がないから隠していることにはならない……よな?
そうして市から出て一本人通りの少ない道に出た瞬間、明らかにゴロツキなゴツい低脳そうな男の群れに囲まれてしまった。
「兄貴、コイツか?」
「あぁ、この凶悪な目つきに高くない鼻……間違いねぇ」
……十中八九俺のことだな。
ちなみに安藤はどちらかと言えば美少年。
コンプレックスになりそうなパーツがなさそうで羨ましいこってす。
ていうか鼻は俺もコンプレックスだが、目つきは新しいコンプレックスになりそうだぜちきしょうめが。
「ちょっと、ツラ貸してくれよ」
「……嫌だと言ったら?」
その言葉に呼応して、男の輪が少し縮まる。
「有無は言わせねぇ。 てめぇの親父のせいで俺は失格にされちまったから、その礼だ」
「お前が例え合格だったとして、お前に率いられる兵士が可哀相だ」
俺がそう言い放つと、リーダー格(俺を気絶させた男)の顔に青筋がくっきりと浮き出た。
やっぱ乗せられやすいんだな。
俺も安藤も冷ややかな表情を隠さない。
「と、とにかく、来てもらうぞ……」
ここで騒ぎを起こすのも面倒事になりそうなので、大人しくついて行く。
これ以上挑発すると本気で男がここでブチ切れそうだ。
連れてこられたのは、どこかの屋敷の廃屋だった。
道中は目隠しをされていたので、詳しい所在までは分からない。
まぁ《分析》を使えば分かるんだろうけど♪
と言う訳で、二対十という圧倒的不利……人数的には。
「さて、どうとっちめてやろうか」
リーダー格の男が舌なめずりをした。
すると、部下の一人が面倒そうに欠伸をした。
「兄貴ぃ、俺はこいつらみたいなむさい野郎なんかさっさと片付けて女と楽しみたいぜぇ」
「そうですぜ、久しぶりに拾ったの女なんですからもっと楽しみたいってのがみんなの本音なんすよ」
「そもそも女の分も含めて食料買いに行っただけなのに、兄貴が因縁つけに行っちゃうから」
……部下の統率も出来てないのによく白兵戦に出てこれたものだ。
そして、女って……。
「おい、お前達。 女ってまさか……」
「あぁ!? 女は奴隷商に買われる前に俺達が拾ってやったんだよ!」
こいつら……。
「お前ら――」
「――貴様ら絶対に許さんっ! 安藤家次男、安藤 慎也参るっ!」
俺が言い切る前に安藤がそう言い切ると、素手で男達に挑みかかる。
こいつも大概だったか。
「てめぇらかかれぇ!」
「不本意だげど、いぐべぇ!」
「イケメン滅ぶべしっ!」
「そんなことより女抱きてぇ!」
しっかりした意思の疎通はとれてないみたいだが、一斉に男の群れが安藤に向かって行くので俺も参戦する。
「ぐえっ」
「ひぎぃ」
安藤は先頭から迫って来る二人を掌底と上段回し蹴りで沈黙させる。
この出来事は俺が安藤に追いつくまでの間、約二秒半。
「竹中 右侍、参るっ!」
「ぷおっ」
「べからっ」
「ぺおっ」
……普通の奴はいないのか……。
おっと、それよりも戦闘に集中、集中。
それにしても、もう半分片付いたのか。
「てめぇら、武器を使え!」
「へいっ!」
「らっしゃい!」
「ご注文は!?」
……もう突っ込まない。
突っ込んだら負け。
「気絶ゴロツキの盛り合わせでっ!」
って安藤ぉぉぉ!
そんなことしたら……。
「畏まりましたっ!」
「しばらくお待ち下さいっ!」
「ってなんでやねんっ!」
ほら、めんどくさい絡みになる……。
もういい。
「しっ」
剣を持ったモブの顔面に裏拳、手斧を持ったモブに正拳突き、最後に両手剣のモブにアッパーを喰らわせてこれ以上のめんどくさい絡みを排除。
こら、安藤、心なしか悲しそうな顔をするな。
そんな安藤も二人を始末したので、残りは大将格のあの男だけだ。
「……後はお前だけだ」
「一気に片付ける……」
「く、くそー!」
自棄になったのか、がむしゃらに得物のこん棒を振り回しながら飛び込んできた。
「「せやっ」」
俺と安藤の同時正拳突きで男は廃屋の壁に叩きつけられた。
はい、処理完了。
安藤とハイタッチなんかして奥に進むと、薄い布を纏った女の子が三人……。
「「ひっ……」」
二人は怯え、もう一人は違う反応を見せた。
「お兄ちゃん……」
え。
お兄ちゃん、ですか。
「お兄ちゃぁぁぁん!」
突然過ぎる感動の再会に俺と女の子二人は固まる他なかった。
「……なるほど、家出した妹を探しに市に出てきてたのか」
役人達に後処理を任せて、俺と安藤と安藤妹、そして女の子二人(由と玲と言うらしい)と外府の詰め所にいた。
「しかしまたなんで家出なんか……」
「それは……」
「癖みたいなもんなんだよ」
安藤妹が言い淀むと、安藤が助け舟を出した。
「癖?」
「あぁ、いろいろと事情があってね……」
それ以上安藤は言葉を続けなかった。
これ以上の詮索はすべきじゃないと判断し、黙ることにした。
「で、この二人はどうすんだ?」
俺は由と玲の方を見た。
二人とも今年で十三歳らしい。
なら、一人で生きていける訳でもなし、奴隷商にさらわれ、売られるのがオチだろう。
実際、二人ともなかなかに美少女だった。
唯は小動物的な可愛いらしさ、玲はクールだが魅力を感じる、てな感じで。
「右侍、預かってやれないかな? 家はちょっと厳しいから……」
「……おう」
安請け合いな気もしないでもないが、まぁ枝梨さえ懐柔できればなんとかなりそうだ。
「よろしくぅ」
「お願いします」
……もしかしてあのゴロツキはこの娘らの口調に感化されたのかもしれんな。
ちなみに、みんなゴロツキの晩酌をさせられてただけで、それ以上のことは何も無かったみたいだ。
「おぅ」
美少女二人に返事をし、帰り支度を始めた。
さて、頑張るか。